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2nd stage:13

Auteur: 仲原
last update Date de publication: 2026-11-04 22:10:03

「佐藤くんってさぁ、結構心配性なんだね」

 開きっぱなしになっている玄関から建物の中へと入ると、瓦礫を器用に避けながら山田が先を歩いて行く。

「別に神経質ってわけじゃねぇけど、こういうときって、普通、警戒するもんじゃねーの?」

 彼女に何かあったときに直ぐに対応出来るよう気を付けながら後に続いて歩き出す。建物内に篭もった埃と黴臭さ。慌てて口元を手で覆うが間に合わず、気が付いたら盛大に咳き込んでしまっていた。

「大丈夫?」

「ん。平気」

 差し出されたハンカチを手に取り礼を言い、溢れ出た涙を軽く拭いながら思ったのは割とどうでも良いことだ。

「何?」

 急に足が止まったことを不思議に思ったのだろう。振り返った山田が不満げにこちらを見ながら首を傾げた。

「ゴミが目に入ったみたいで直ぐに動けなかっただけだよ」

 そう言って誤魔化しはしたが、本当はハンカチから香る匂いが思ったより心地よく、山田という女性を意識してしまったことに罪悪感を感じただけだったりするから気持ちは複雑である。

「足下、気を付けた方が良いよ」

 咄嗟の言い訳に納得したのだろうか。彼女はそれ以上の追求をする事はせず、中断してい
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  • PLAYER   2nd stage:13

    「佐藤くんってさぁ、結構心配性なんだね」 開きっぱなしになっている玄関から建物の中へと入ると、瓦礫を器用に避けながら山田が先を歩いて行く。「別に神経質ってわけじゃねぇけど、こういうときって、普通、警戒するもんじゃねーの?」 彼女に何かあったときに直ぐに対応出来るよう気を付けながら後に続いて歩き出す。建物内に篭もった埃と黴臭さ。慌てて口元を手で覆うが間に合わず、気が付いたら盛大に咳き込んでしまっていた。「大丈夫?」「ん。平気」 差し出されたハンカチを手に取り礼を言い、溢れ出た涙を軽く拭いながら思ったのは割とどうでも良いことだ。「何?」 急に足が止まったことを不思議に思ったのだろう。振り返った山田が不満げにこちらを見ながら首を傾げた。「ゴミが目に入ったみたいで直ぐに動けなかっただけだよ」 そう言って誤魔化しはしたが、本当はハンカチから香る匂いが思ったより心地よく、山田という女性を意識してしまったことに罪悪感を感じただけだったりするから気持ちは複雑である。「足下、気を付けた方が良いよ」 咄嗟の言い訳に納得したのだろうか。彼女はそれ以上の追求をする事はせず、中断していた探索を再開するべく足を動かし始める。「ゴミ、結構多いね」 山田の言葉通り、建物内は剥がれ落ちたコンクリートに混ざって、様々な種類のゴミが散乱していた。そもそも、壁に残された落書きを見ても、ここが好奇心を満たすためのスポットとして使われ居ることは直ぐに分かる。「肝試しとかに使うには丁度良いだろうから、まぁ、そんな感じなんじゃないか?」 未だ外が明るいため、気持ちに余裕があるのだろう。スマートフォンのライトで前を照らしながら進んで行く山田の声は明るく、この状況を楽しんでいることは明らかで。元々好奇心も強いのかもしれない。目に付く気になるものを片っ端良から調べては、得意げに感想を言う姿が可愛いと思ってしまう。「ねぇ、ねぇ、佐藤くーん!」 今度は何を見つけたのだろうか。こっちこっちと手招く彼女の元へと近寄り「何だ」と問いかければ、ここを見て欲しいと指をさされる。「これ、何だろう?」「うーん……」 そこにあったのは黒いスプレーで描かれた落書きだった。「ただの落書きだろ?」 同じような落書きは、そこかしこに見受けられる。だからその落書きだけが特別なものだとは思えない。そう伝

  • PLAYER   2nd stage:12

     よく見ると、確かに彼女たちの手は不自然な形で置かれている事に気が付いてしまう。「スマホ自体はさ、利き手で持ってるから見ただけじゃ変な事に気付かないんだけど、空いた方の手、ずっと、シートに投げ出されてる状態で動いてないの。一人だけならまぁ、分かるんだけど、四人とも同じ状態だから、流石にこれはあり得ないと思う」 あり得ない。そう言われると本当にそんな気がしてくるから不思議だ。 バスに乗り合わせた乗客は一見すると普通に見える。荷物を抱えた老女に、単語帳を捲る男子生徒。携帯ゲーム機に夢中の小学生と、若いカップルが一組。最後尾には女性高校生のグループが一組。後はバスを運転している運転手といった感じだ。彼等はそれぞれ意思を持って行動をしているかのように見えるが、よく見てみると、短い時間に設定された同じ行動を繰り返しているようにも見える。 例えば、小学生。音楽を聴く限りだと、少し前に流行った謎解きゲームを楽しんでいるようだが、ゲーム機から漏れた音は短期間で同じ台詞だけを繰り返してた。このゲーム自体は自分でも楽しんだ経験があるため、音楽の繋がり方が不自然だという事は分かる。本来途切れる場所では無いところで不自然に切れた音声。何度も繰り返す同じフレーズは明らかに変である。 若いカップルも同様で、スマートフォンの画面を見て笑っては、何度もキスを繰り返している。ぱっと見はただいちゃついているだけのように見えるが、よく見てみると、唇が重なった後に巻き戻しのような行動を行った後、先程と全く同じ動きを繰り返しているのだ。 老女の場合は正直判断が付かない。彼女は荷物を抱えて座っているだけで、特に目立った違和感がないためである。 それは単語帳を捲る男子学生も同じだ。それ以外の行動が無いため、本当なのか嘘なのかの判断は非常に難しかった。「こういうの見てるとさ、自分が思ってるリアルって本当に存在してるのかなって不安になるよね」 いつの間にか山田は窓の外に目を向けている。「自分では自分は本物だって思ってるけど、もしかしたらこの人達みたいに、同じ事を延々と繰り返しているだけなのかも知れない。でも、その事って自分では気付けないでしょ? 何か、凄く怖くなっちゃうよね」「…………」 いつの間にかバス停留所までは十数メートル。緩やかに速度を落とし停車したバスから降りると、他の乗客を乗せた

  • PLAYER   2nd stage:11

     素早く纏められていく荷物。いつの間にか教室から出た山田が、廊下で佐藤が来るのを待っている。「早くしないと置いていくからね!」 どうやら此方の都合というものは考えてくれないらしい。随分と中途半端でスッキリはしないが、諦めカバンを掴むと彼女の後を追い掛けるようにして教室を出た。「何かさ、こう言うのってちょっとワクワクしない?」 先を歩く山田の足取りは妙に軽いもので。ついさっき知り合ったばかりだというのに妙に近い距離感にはどうもまだ慣れない。「そうだな」 だからだろうか。無意識に曖昧な物言いで答えながら建物を出ると、太陽の位置は未だ高い場所に居座ったままで眩しかった。 校舎を出る前に行き先は確認しておいた。どうやら目的地である廃病院は、バスで移動しないと行けない距離らしい。そんなわけで現在はバスを待っている状態だ。時刻表を確認するとバスが来るまでもう暫く時間がかりそうなため、山田が持っていたレモン飴を食べながら、互いにスマートフォンを操作し情報を集めていく。「この町に廃病院って一個しかないみたいだから、多分ここで当たってると思うんだけど」 纏めサイトと地図アプリを交互に見ながら向かう先を定めていく。地図上に刺さるピンを中心に、画面を拡大して周辺に何か目立つ物は無いかと探しながら。「初めて行く場所だからわかんねぇよな」「そうなんだよね」 ってか、普通に土地勘無いもんね、私たち。これこそが、彼女が漏らす本音なのだろう。ただ、少なくとも彼女はこの環境に馴染んできているらしく、そう言って楽しそうに笑ってみせられてしまう。「そう言えば、アンタも転校生ってことになってんだっけか?」 遠くの方から見えてくるバスのシルエット。バス停まで銃数メートルと言うところで一度、信号に引っかかり止まってしまった。「うん」 信号が変わり動き出したバスだが、すぐに速度を落とし目の前で停車する。ドアが開くタイミングで聞こえてくるのは、空気の抜ける大きな音だ。「私も最近こっちに来たばっかりだから、まだ友達が居なくてさぁ」 先に乗車した山田の後を追い掛けて適当な場所に立つと、最後の乗客を乗せたバスが緩やかに動き出した。「設定があるって分かっちゃってからは、何となく……周りの人たちに声かけにくくって」 窓の外で景色が流れていく。「見た事はあるのに、全然この場所を知ら

  • PLAYER   2nd stage:10

    「それじゃあ、放課後に行ってみようぜ」 そう言って笑うと、山田が変な顔をしながら固まってしまった。「山田……さん?」「何言ってるの? 佐藤くん」 彼女は何に対して驚いているのだろう。理解ができないと彼女を見ると、スマートフォンに表示された数字を指さしながら彼女がこう言った。「もう、放課後だよ?」 言われて初めて気が付いた。今が既に下校時刻になってしまっていることを。「え?」 考えてみれば、一体いつ学校に来たのかが分からない。 一番最後に覚えている記憶はあの奇妙な動画を見たところで、そこから先はぶつ切りのように一切の記憶が飛んでしまっている。「な、なぁ、山田さん」 だからだろう。思わずこんなことを聞いてしまったのは。「俺、どれくらい寝てた?」「どれくらいって……ずっと……じゃない?」 そう言って、彼女も何かがおかしいと言う事に気が付いたようだ。「あれ? でも、佐藤くん。そう言えば、いつ学校に来たの?」 山田からしてみれば、気が付けば佐藤は自分の席で寝ていたという感覚しか無い。 始めは授業を聞いていない生徒がいるなという印象。そのうち、一人だけ制服が違うと言う事に気が付き、次第にいつ起きるんだろうという疑問へと繋がった。最終的には、もしかしてという疑惑が上がり声を掛けてしまった。 そう考えると、声を掛けるというところに至るまでどれだけの時間を費やしたことになるのだろうか。「少なくとも、何時間も寝っぱなしだった? もしかして」 更に不可解な事は、声を掛けるまでに【佐藤という人間が、一度も目を覚ましていない】という事だ。普通なら、これだけ堂々と寝ている場合、教師によってはその生徒を起こそうと動きを見せるだろう。優しく注意するかも知れないし、怒鳴りつけて教室から追い出すパターンもあるかも知れない。それなのに、こうやって放課後になるまで、佐藤は誰にも相手にされていなかった。ま

  • PLAYER   2nd stage:09

    「なぁ……ちょっと聞きたいことがあるんだけどさぁ」 もしかしたら、あの気持ち悪い映像をみたのが自分一人じゃ無いと安心したかったのかも知れない。「アンタ、病院に行く配信者の動画って見たことある?」「廃病院の動画?」「ああ」 記憶はまだ新しい。できるだけ見た映像を詳細に伝えると、山田は暫く考えてからゆっくりと首を振って見せた。「悪いけど、私はその動画見てないと思う」「……そうか」 そこで一度、途切れてしまった会話。元々親しい仲でも無いし、先程自己紹介をしたばかりなのだから、これ以上何を話したら良いのかが分からない。適当な理由を付けて返って貰おうかと考え始めたところで、山田が再び口を開く。「……動画自体は見てないんだけど……」 言いながらスマートフォンを操作し、彼女は何かを探し始める。「もしかしたら、これが関係あるかも」 差し出されたスマートフォンのディスプレイには、黒色で統一された悪趣味なデザインのサイトが表示されている。タイトルに「白藤高校の七不思議」と書かれているところから、どうやらこのサイトはそれらの噂話を集めた纏めサイトのようだ。「これ、昨日の夜に見た事無いメールアドレスから届いたものなんだけど、この中に廃病院の噂っていう項目があった気がする」 その言葉を確かめるべく、指を動かし画面をスクロールしていく。七不思議とされているはずなのに、纏めサイトに書き込まれている内容は思った以上に多く、目的のログを探すだけでも苦労をしてしまう。それでも根気よく探し続けていると、漸く見つけた一行に指が止まる。「これか?」 一度スマートフォンを山田に戻し確認してもらい、彼女が頷いたことでリンクをクリック。読み込み中のアニメーションが暫く表示された後、漸く開いたページに目を通すと、どいういう噂なのかという内容を確認することが出来た。「ってか、この病院、思ったよりも噂がいっぱいあるな」 言葉の通り、その廃病院で囁かれている噂話は幾つかあるようで、その殆どはよく耳にするような内容が多い様に見える。例えば、夜中に死んだはずの入院患者が徘徊しているだの、霊安室から呻き声が聞こえてくるだの。使われていない手術室で手術が行われているだの、診察室から奇怪な叫び声が聞こえてくるだの。どれもありそうで陳腐なものばかりだ。 中には、精神が壊れた浮浪者が住み着いており

  • PLAYER   2nd stage:08

     そんな馬鹿なと自分の発言に笑いながらもそう尋ねると、意外にも山田はそうだと頷いて見せた。「君が思っている通り、私もこの世界に引きずり込まれた一人で、【山田という生徒の役を与えられた人間】で間違い無いよ」 自分と同じように今の自分に違和感を感じる人間が居るという事実。それを喜んで良いものかと悩んでいると、彼女は渋い表情を浮かべながらこんな風に言葉を続ける。「本当の私は山田なんて名前じゃないし」「え?」「なんて言う名字だったかは忘れちゃったけど、私、かなり珍しい名字なんだよね、本来なら。全国的に見ても二桁居るかどうかな感じの。それなのに、目が覚めたら突然山田って人間になってて、本当に訳わかんないし」 この話はどこまでが本当で、どこからが嘘なのか分からない。しかし、本当の自分は別にあるという感覚が彼女にもあることに、何だか少しだけ気持ちが軽くなった。「それに、何か変な画面見なかった?」「画面?」「うん」 妙な胸騒ぎを覚え彼女に詳細をねだると、顎に手を当てた状態で左上を見ながら話始める。「昨日、家のPCが突然起動して、どうしようかと思ったら変な画面が出てきたんだよね。確か……【Sランクダンジョン「白藤高校」へようこそ】って書いてあったかなぁ?」「Sランクダンジョン「白藤高校」へようこそ?」「うん」 ダンジョンと言われて真っ先に思い付いたのは、ファンタジーの世界などで出てくる如何にもな設定だった。もしかして、これからそういう展開が来るのだろうか。そう思うとつい楽しみになってしまうのはオタクの性だろう。「ダンジョンって言っても、今のところそんな変なモノは見てないし、本当にそんなものが現れるのかは分かんないけどね」 期待した傍から否定されたダンジョンの存在。折角楽しくなって来たと言うのに、突きつけられた現実が残酷で、分かりやすく落ち込んでしまう。「何よ。本当にファンタジーみたいな世界と繋がって欲しかったとでも言いたい訳?」 山田に呆れたようにそう言われると、少々ムッとしてしまう。「どうせ現実じゃないんだから、少しくらい夢見させてくれてもいいじゃねぇか」 そう言って口を尖らせると、山田は目を見開いて驚いた後、嫌そうに顔を歪めて大きな溜息を吐く。「もし本当にそんなものと繋がったりしたら、人間なんて一瞬にして殺されちゃうと思うけど? それで

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