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16.任侠者

last update Last Updated: 2025-06-22 11:00:00

    ルキは浮かない顔を一掃し、普段使わない回線で山岡組にコールした。

「わたしです。ルキです。湊市周辺の警察署の根回しありがとうございました。……ええ ! 快適ですよ。

 ですが、今日少し問題が……」

 電話越しでガチャガチャ音がすると、一際野太い男の声が帰ってきた。

『もしもし、ルキさんか。

    山王寺の嬢ちゃんが残した火種だな ? 』

 ルキがこの地で活動するには警察を抑え込む必要がある。しかし、どこの誰ともしれない外国人に警察官が首を縦に振るわけが無い

 そこで結々花が利用したのがヤクザの存在だ。

 勿論ただでは無いし、山岡組の悩みの種を潰すことも条件に取引は成立していた。

 ルキはボイスチェンジャーを停止すると、生の音声で頭と話した。

「そうなんですよね」

『……山王寺とうちの組は、それやぁ激しいドンパチした仲でな。それが今や相手は女子高生のボスだの……輪をかけるように暴対法の嵐だの。しょーもない生活してる訳だ。

 しかし……女子高生の嬢ちゃんが消えたそうだな ? 』

「ええ。今は側近にいた男が梅乃さんの後釜についたようです」

『なるほど。そんでお前さんの仕事に影響出てるわけか』

「困っちゃいますよ〜。その新ボスってのが湊市警察署の刑事と血縁で、なんと同じく高校生  ! 」

『警察の身内ぃ ? はははは !! そりゃろくでもねぇな。

 外国人のあんたには分からんかもしれないが、まず親が幼稚園児だろうが女子高生だろうが、親は親だ。

 それを何食わぬ顔で取って代わって椅子に座るとは阿呆丸出し。物事にはシキタリっつーもんがな、任侠もんの常識だ』

「イキがったヒヨコはすっこんでろ……と ? ふふ。親分さん、厳しそうですね ! 」

『そらぁ、舐められたら商売にならん。

 
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  • PSYCHO-w   16.任侠者

    ルキは浮かない顔を一掃し、普段使わない回線で山岡組にコールした。「わたしです。ルキです。湊市周辺の警察署の根回しありがとうございました。……ええ ! 快適ですよ。 ですが、今日少し問題が……」 電話越しでガチャガチャ音がすると、一際野太い男の声が帰ってきた。『もしもし、ルキさんか。 山王寺の嬢ちゃんが残した火種だな ? 』 ルキがこの地で活動するには警察を抑え込む必要がある。しかし、どこの誰ともしれない外国人に警察官が首を縦に振るわけが無い そこで結々花が利用したのがヤクザの存在だ。 勿論ただでは無いし、山岡組の悩みの種を潰すことも条件に取引は成立していた。 ルキはボイスチェンジャーを停止すると、生の音声で頭と話した。「そうなんですよね」『……山王寺とうちの組は、それやぁ激しいドンパチした仲でな。それが今や相手は女子高生のボスだの……輪をかけるように暴対法の嵐だの。しょーもない生活してる訳だ。 しかし……女子高生の嬢ちゃんが消えたそうだな ? 』「ええ。今は側近にいた男が梅乃さんの後釜についたようです」『なるほど。そんでお前さんの仕事に影響出てるわけか』「困っちゃいますよ〜。その新ボスってのが湊市警察署の刑事と血縁で、なんと同じく高校生 ! 」『警察の身内ぃ ? はははは !! そりゃろくでもねぇな。 外国人のあんたには分からんかもしれないが、まず親が幼稚園児だろうが女子高生だろうが、親は親だ。 それを何食わぬ顔で取って代わって椅子に座るとは阿呆丸出し。物事にはシキタリっつーもんがな、任侠もんの常識だ』「イキがったヒヨコはすっこんでろ……と ? ふふ。親分さん、厳しそうですね ! 」『そらぁ、舐められたら商売にならん。 

  • PSYCHO-w   15.部下たち

     椎名はルキの指示で図書館の駐車場で結々花と顔を合わせた。「ルキ様、咲良 結々花と合流しました。指示を」『んー』 スマホからルキの間延びした声が聞こえる。『介入は取りやめ。ご遺体は戻ったんでしょ ? 』「はい。応援が来たようでしたが……特に問題なく」『ケイが現逮だったら考えたけど、今はその坂下 椿希の身内っていう刑事が……邪魔だね。 困るよねぇ……。ケイは俺の商品だ。勝手に好きにされちゃたまんない』「では、このまま……ですか」『問題無いよ。証拠も無いし、そんな状況で家にガサ入んないでしょ。 椎名。スミスがそろそろ着くはずなんだ』「え…… ? 」『引き継ぎしたら、俺の所へおいで』「は、はい……」『このまま結々花に代わって』 椎名が差し出したスマホを結々花が握る。「咲良です」『結々花ちゃん。今日はどうして椎名の方が連絡が早かったの ? 』「わたしにも分かりません。たまたま通りかかったら斎場に赤色灯が見えた、という事だそうです」『変だよね ? 』「え…… ? あ……まぁ。ルキ様の側近ともなると、わたしは行動まで把握していませんし、なんとも……」『そりゃそうか。 その警察署も買収内だよね ? ケイは今日帰ってくるだろうけど、その署は山王寺に寝返ったとして考えよう』「分かりました。仲介役の山岡組には報告しますか ? 」『ヤクザさんにクレーム付けるのに結々花ちゃんを使う訳にはいかないでしょ。自分でするよ。 古参のヤクザに警察やら根回しして既にあちこち買収してるのに、梅乃ちゃんの残党が引っ掻き回してくるとはね。 さながら、ケイや俺に宣戦布

  • PSYCHO-w   14.フライング

     「へぇ〜。それじゃあ、家事はお父さんと一緒にやってるんだ」「日によりますが……」「大変だね。でも高校生なのにしっかりしてるよ」「ありがとうございます」 時刻は21:00。  未成年は22:00までの取り調べと、法で定められている。あと一時間粘ればいい。とは言え、連れて来られたのは厳格な取り調べ室ではなく、ちょっとした聴取ブースである。  そして肝心なご遺体は遺族の元へ帰った。  蛍は内心警戒していたものの、内容は形ばかりの質問だった。  坂下 椿希と校内で知り合い話はしたが、口論になるような事は無かった。夕方、突然作業場へ押しかけて来た椿希が、言われの無いイタズラを通報したので驚いた。  これが事実だ。 『遺体にイタズラをしていた』。椿希のこの言葉の出どころだけが、腑に落ちなかった。ルキと美果以外は、誰も知らないはずなのだ。だとしたら、重明の相談したカウンセラーが梅乃にも情報を売っていた可能性が高い。それが椿希が知った経緯だろう。  しかし、遺体が既に返却された時点で今回は蛍の勝ちだ。「いつもお葬式の手伝いしてるの ? 」「可能な限りは。跡を継ぎたいので、学校にはアルバイトの報告をして、小さい作業や見学とかをさせて貰ったりもしてます」「偉いね。社員やパートさんとも仲がいい ? 」「皆さんいい方ばかりです」 この聴取をしている警察が最初に名を名乗った時、確かに『坂下』と名乗った。  坂下 椿希の血縁者である。  蛍はすぐに理解した。  とりとめのない話ばかりだが、自分の事を探ろうとしていることだけは嫌でも分かってしまう。  蛍は素直に応じていた。「じゃあ趣味とか、遊ぶ暇も無いね。大変でしょう ? 」 坂下 晃。  この警官は椿希の伯父である。高校生の甥が梅乃の座を奪ったことにより、この男は山王寺と強く結びついてしまった。「幼馴染が亡くなってから、話す相手もいないので……仕事してた方が気が紛れます」「

  • PSYCHO-w   13.椎名への疑惑

     丁度その頃。 部屋にこもりきりだったルキの様子を見に、スミスが来ていた。「ルキ様、ホテルに宿泊されてはいかがです ? 」 浴衣を着て部屋に転がったままのルキに、スミスが言った。「ホテルねぇ」「ここはガラス窓も大きいですし……警護はどうしても穴が出来ます」「はは。俺を殺しに来るスナイパーがいたとしても、ガラスが広い狭いなんて関係ないよ」「そうかもしれませんが……警戒は必要です」「ホテルはもう飽きたなぁ。ここは決して豪華な旅館じゃないけど……好きだよ。隙間風がある所なんか、懐かしい気分になるんだよね」「懐かしい……ですか……」 スミスは意味が理解できず聞き返した。ルキの素性や出自を知るものはMだけと言っても過言では無い。「……いや。なんでもないさ。建物は古くても食事がいいんだ」「そうですか。何よりです。 あの……この地域には明確に期限を設けて滞在されてるのですか ? 部下にも移動の準備を指示しなければいけませんので……そろそろスケジュールを組みたいのですが」「しばらくこの町にいるよ。会いたい人も居るしね。 それにしても、ケイも美果ちゃんもファンが増えたなぁ。 あ、そういえばMに呼ばれてるんだよね。あ〜あ。スミス、代わりに行ってきてよ」「俺にルキ様の代わりは務まりませんよ」「ん〜。面倒臭いなぁ。どうせ拠点を変えろって説教だよなぁ〜。日本でイベント開催するの、客には大好評なんだけど」 「そうですね。『煩わしい都会より、ゆっくり観光できた』との声をいただいております」「ほんとにね。静かでいい町だよ」 prrrrrr.prrrrrr ルキのスマホが鳴る。

  • PSYCHO-w   12.連行

     蛍はご遺体から警察官へ視線を移すと、相手のパーソナルスペースを全無視で踏み込む。「お巡りさん、ご遺体に触れないでください」 横にピタリと張り付き、不安そうな面持ちで見上げる。幼い顔つきも相まって、思わず巡査も毒気を抜かれてしまう。「うんうん。大丈夫。まずは話を聞かせてね」 取り乱すと思いきや、冷静に対応する蛍に椿希の腹ワタが煮える。 坂下 椿希には強い野心があった。 梅乃の椅子を継承した男なのだ。そしてこの地位を手にした事に迷いは無かった。 自分は梅乃を超える。 規模も、人望も。 その最初の踏み台として選んだのは、ボスである梅乃を殺した、蛍へのペナルティだった。「連絡したのは君 ? 名前は ? 」「はい、坂下 椿希です。こいつの家に遊びに来たらぁ、途中でいなくなってー。覗いたら変なことしてたんですよ〜」 椿希は梅乃がゲームに参加した理由も、蛍が死にかけた事も知っている。蛍が梅乃を殺す動機は十分だと読んでいた。 しかし蛍もシラを切り続ける。「俺は遊びになんて呼んでない。仕事中でした。父親から指示を受けて仕事の手伝いしてました」「じゃあ、一人づつ話聞こうか。 おい、そっちは ? 」 ペアの巡査はご遺体を確認していたが、目を丸くして答える。「いえ……。確認出来る場所に遺留物等はありませんね。その……ご遺体でしょ ? そんなまさか……」 そこへ重明が顔を出した。「ああ、お巡りさん。お待たせしてしまいすみませんでした。うちの斎場に、なにか問題がありましたか ? 」「あ〜……涼川 重明さんですね ? すみませんが……息子さんとは後からお話してください」 そういい、警察官は重明と蛍を離す。告別式をやっているホールから来たばかりの重明も、まだ仕事の気の張り方が抜けきっていない。何を言われても冷静で、動じ

  • PSYCHO-w   11.残党 - 坂下 椿希

    「おいっ ! 」「おー。死んでる死んでる ! 」「やめろよ ! もうご遺族に返さないといけないんだ」 椿希は作業場をキョロキョロと見回し、勝手に入ってきた。「ん〜。けいくん。なぁ〜んか、隠してないかなぁ〜って思って来たんだ」「はぁ ? 」 全く噛み合わない会話。  隠し事とは ? 蛍は最悪の事態を覚悟する。「ここは遺族の前で出来ない作業を職員がする部屋なんだ。皆さんのいる前で布団を捲ってあれこれしない一つの計らいなんだ」「知ってるよ。 けいくん一人で作業出来んの ? 」「流石にそれは無いよ。今日は立て込んでて……俺がやらされてるだけ。この後、ちゃんと社員さん呼んで二重にチェックするんだ」「そっか。俺らまだ高校生だしねぇ、そこまで任されないか」「当然だよ。  で、何 ? 忙しいんだけど。普通連絡してから来るじゃん」「だってアカウント知らないし」 襖を開けたり、物置スペースを覗いたり。椿希の様子は蛍の案じた事とは関係の無い行動をしていた。「何してるんだ ? 」「ん〜。探してるんだよぉ」「だから……何をだよ」 椿希は大きな目をにゅるりを歪ませ答えた。「梅乃様の死体〜」「はぁ ? 」 ──ああ。こいつ梅乃のところの奴なのか……。 女子高生マフィアのボスの部下。  国際的犯罪組織を追う結々花に比べたら、当然コンタクトも雑。この有様である。 梅乃の死体はルキの部下が始末した。ルキの命令と手慣れた部下たち。問題は無いはずだ。  梅乃の中身は既に、ほぼ蛍の胃の中に収まった。調理も自宅のキッチンや道具は使用していない。ルミノールや他の抗体検査をされても証拠は出ないという蛍の自信。「梅乃さんのこと ? なにか知ってるのか ? 始業式の日、俺……帰りに話したんだけど、その時は何も……」「はは

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