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126話

last update publish date: 2026-08-08 14:58:14

――ノエルがワクワクとコースターに座る中、東条は操作室にて、訳の分からないボタン達と睨めっこをしていた。

「まぁ、死ぬこたねぇだろ」

 幾ら考えても分からないと判断し、適当にボタンを押しまくる。

 すると、外でコースターが稼働する音が聞こえた。

「まさーーっ、動いたー!速くーー」

「へいへい、っとッ」

 すぐに飛び出し、足を武装、跳躍。

 上昇中のコースターに飛び乗り、ノエルの横に着席。洗濯機を後ろに座らせた

「わくわく」

「安全バーちゃんと下ろしとけよ」

「安全バー?」

「この上の奴を、こう……あれ?」

 なぜだろう。搭乗者の命を繋いでくれるはずのそれは、ピクリとも動こうとしない。

 上昇し続ける二人の目前には、既に頂上が迫っている。

「ちょ、マジで、下がっ」

 バキィッ

「……」

「……」

 東条の手元に残る、千切れた命綱。

 ……顔を見合わせ、

 瞬間

「うぉおおおおおおお!」

「ぁははははははは!」

 急降下と同時に全身が持ち上がり、腕二本で身体をたなびかせる。

「やっべ吐きそう」

「あはははははっ!」

 爆笑するノエルの隣で、青い顔をする東条。

 そもそも彼は絶叫系が得意で
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  • Real   69話

     「まささんtuberなんですか?あ、だからノエルさんカメラ持ってたんだ」「そうですそうです。皆さんも機会があったら是非見て下さいね?」「絶対見るっす‼」 飛びついてくる殴打娘の頭を撫でながら、引き続き皆で身体を寄せ合い筏の上で温まっていると、「にゃああああああ――」「お、ご帰還だ」 上空から急降下してくるノエルを確認する。「――ぁあああッブふっ」 彼女は盛大に着水する寸前、巨大な綿花を生み出しそこにダイブした。 綿毛を身に纏い、服の臭いを嗅ぎながら出てくるノエル。「……ん。臭いはついてない」「おかりー」「ん。ただまー」 盛大な合流を果たしたノエルを、皆で盛大に迎えた。 ――ノエルの操作により自律的に歩行する筏に乗り、駄弁りながらゆったりと大学を目指す。「あのおっきな壁と木も、ノエルさんが出したんですか?」「ん」「「「すごーい!」」」「まささんも魔法使えるんすか?」「ん?あ、うん。勿論ですよ!ほら!私凄い力持ちでしょ?」「確かに!それも魔法だったんすね‼」「そうだともそうだとも」「……魔法って凄いんですね。あんな奴等のとは比べ物になりません。そう言えばあいつ等どうなったんですか?」 ノエルが東条とチラリと目を合わせ、口を開く。「変な魔法使われてモンスターいっぱい集まって来た。自爆的なあれ」「あ!だから壁造ってくれたんすね‼」「ん」「ノエルさん凄いっす!尊敬するっす‼」「よきかなよきかな」「本当に何から何まで、有難うございます。本当に、尊敬します」「ハハハ、やめて下さいって。私達はそんなに殊勝な人間じゃないですよ。でも、有難うございます」 和気藹々と進む筏の上、東条の膝の上に丸まっていた殴打娘が遠方を見て跳び起きた。「あれっすか!」「そうそう。壁の上にいるのは……、あぁ、私に貴女方の助けを依頼した女性ですね。律儀に待ってたみたいです」「凄い視力ですね……。それは、ちゃんとお礼を言わないといけませんね」「そうですね。あ、その前に」 漆黒と洗濯機を回収し、山の様な日用品を筏に移す。漆黒が自分の中に帰ってきた安心感に、東条が身震いした。

  • Real   68話

              §上から見ると分かるが、この壁は北側だけが開放されている。蹄鉄の様な形になったのも、勿論彼女の仕業。意図的なものである。庭のベンチで足をぶらつかせるノエルは、東条の魔力が最低限離れたのを確認し、中の人間を閉じ込める様に断崖絶壁を造り出した。慌てる下っ端達を横目に、家の中へと足を踏み入れる。一方依然簀巻きのままの彼等は、まずは脅威が去ったと一安心し、部下達が助けに来るのを今か今かと待っていた。そして猿轡を噛まされているせいで意思疎通も取れない中、ピエロは怒りと復讐心に突き動かされ、冷静に次の行動予定を立てていた。(殺す。殺す。殺す。あいつ等はクソみたいなお人好しだった。大学のゴミ共を人質にすりゃ隙は作れるはずだ。必ず殺してやる)そんな時、玄関のドアが開く音がした。(((助けが来た)))誰もが一斉に視線を向けた先には、期待外れもいいところ。悪魔の様に美しい少女が立っていた。「……きっとお前達は、その小さな脳味噌を頑張って回して、ノエルとまさに復讐しようと考える」静かな廊下に、彼女の靴音がよく響く。「ノエルとまさは、邪魔されるのが一番嫌い」彼女はピエロの前にしゃがみ、顔を覗き込む。「だからここからは、放送禁止♡」そしてその困惑と恐怖の瞳に、ニッコリと笑いかけた。「『贈魔《ぞうま》の苗木《なえぎ》』」ノエルが触れた地面から、ドス黒い緑と紫の斑模様の果実を実らせる、小さな苗木が顔を出した。毒々しい程の甘い香りと、本能的嫌悪を催すその見た目に、誰もが目を奪われ、吐き気に襲われる。「じゃ、楽しんで」「んー‼グんぅー‼」踵を返し走り去るノエルに、途轍もない嫌な予感を感じたピエロが叫ぶが、当然待ってくれるはずがない。彼女が背を向けると同時に、急成長し始めた果実。その重みに耐えきれず、苗木が弛み、……最後、べちゃっ瞬間、解放された異臭が全方位に爆散する。猛烈な勢いで広がる臭気は、三方の壁に阻まれ、残る北口から一気に飛び出した。――グレイウルフ、クァールが首を擡げ、疾駆する。――ムグラ、グランピードが狂った様に果実目掛けて突進する。――グアナが集まる虫型モンスターを追いかけ貪り食う。たった今、この一ヵ所に、周辺のモンスターがこぞって集結しようとしていた。一方、数瞬前のノエルはというと、「いそげいそげ!

  • Real   67話

      皆を連れ、来た道を戻る二人。 しかしというか、当然というべきか、途中、無様に転がっている仮面達を見て彼女達の足が止まった。「あ、あれは」「ここのグループの親玉?みたいなものです」「……知って、ますッ」 彼女達の中で燻っていた怒りが、捌け口を見つけ爆発した。 我先にと簀巻きに走り、これでもかと蹴りつける。中には馬乗りになって殴打している者もいる。 東条は満足気な笑みを浮かべながら。ノエルはカメラを構えながら。そんな光景を後ろから見ていた。「ははっ、これはなかなか、いい気分だな」「わかる」 好きなだけ暴力を振るわしてあげよう。と傍観していた二人であったが、次の瞬間、東条が地を蹴り、ノエルが指を振った。「――ッ(クソ女どもがァ)‼」「調子に乗ってんじゃねェッ‼」 ピエロから同方向に三本の水槍が射出され、スキンヘッドを中心に炎が暴れ狂う。 女性達は反応すらできない。 水槍を向けられた彼女が、自身に突き刺さるであろうそれを遅々として知覚した。 と同時に、グイッ、と身体を引かれ、何故か迫っていた水槍が破裂。 そしてコンマの内に、スキンヘッドが土釜によって密閉された。 土釜の中から聞こえる、炎の音。 女性達が尻餅をつく音。 一連の出来事を気にした風もなく続く、殴打の音。 その場にいた全員が今の一瞬で起きた事を理解できず、目をパチクリとさせる。 二人を除いて。「こいつら危ないんで、近づくのはあんまお勧めしません。石とか投げたらどうです?」「ぁ、は、はい。あの、有難うございます」「いえいえ、どういたしまして」 東条は濡れた片手を振って水をきり、腰を抱いていた彼女を離した。「あれどうする?」 ノエルが釜を指さす。中から微かに怒号が聞こえてくる。出すと面倒臭そうだ。「あのままでいいっしょ」「ん」 怒りが逸れてしまったのか、静かになった彼女達を見る。「もういいんですか?」「……正直、殺したい程憎い気持ちは無くなりません。でも、……おかげで少しスッキリしました。本当に、有難うございます」 ぎこちなさはまだ残るが、清々しい笑みだ。殴打していた彼女も、血濡れた拳でピースしている。 彼女達がそれでいいと言うのなら、自分はもう何も言うまい。「では、行きましょうか」「「「はい」」」 良い返事を聞いた後、釜を残し簀巻き軍

  • Real   66話

      案内された場所は、元は金持ちの家だったのか、庭付きの豪邸であった。 突っかかってきた見張り数人の膝を折り、玄関の扉を開く。「っ……」「くさ」 途端に漂ってくる、どこか甘ったるく生臭い臭気。東条は諦念を抱き、廊下に足を踏み入れた。 リビングまで進み、すりガラスのドアの向こう。身を寄せ合う何かが此方を見ている。 彼は引き摺ってきた者共を玄関に投げ捨て、ドアノブに手を掛けた。「……ノエル、カメラ下ろせ」「何で」「いいから、……下ろせ」「……ん」 有無を言わさぬその口調に、ノエルは素直に従った。 東条はドアを押し、室内に一歩を踏み入れる。「ひっ」 誰ともつかない、そんな怯えの声が、二人の耳を打った。 簡素な服を着せられただけの、心身ともに疲弊した二十人余りの女性。二人を映す彼女達の瞳は、今にも壊れてしまいそうな程恐怖に歪んでいた。「……はぁ」「「「(ビクッ)」」」 東条の溜息一つで、女性達の肩が震える。 ――血が飛び交い、肉が弾ける、秩序の無くなった世界。 生物が欲のままに自由を手に入れる反面、その犠牲となるモノが出てくるのは自明の理だ。 力ある者が喰い、力なき者が喰われる。 傲慢に、強欲に、憤怒に、嫉妬に、怠惰に、暴食に、そして色欲に。強者の些細な、されど圧倒的な罪一つで、弱者は蹂躙される。(……あぁそうだ) 改めて思い出す。 ここは血沸き肉躍る、最低最悪で、 最高な世界だった。 ノエルが黙ったまま動かない東条のコートを引っ張る。「……まさ、」「ん?どした」「怒ってる?」「怒ってる、のかな。……正直、この状況に納得してる自分が、恐ろしいよ」 世界が変わる前の自分なら、少しは取り乱したり、義憤に燃えたりしたのだろうか?「ノエルは?」「何が?」「何か感じるものは?」 透き通った紫の瞳が、もう一度彼女達を射抜く。「……何も。弱肉強食。子孫繁栄。普通の事」「ハハっ、普通の事、か。……人間ってのはそうやって割り切れる程、簡単な構造してないんだぜ?」「……心にもない事を」 自分を見透かす彼女の紫眼に、乾いた笑みが漏れる。「……だから俺は、それを確かめながら生きてかなきゃならんのさ」 東条は怯える女性達に近づき、膝を曲げ目線を合わせた。「大丈夫ですよ。私達は貴女方を助けに来たんです」 勤めて

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      ――閑散とした住宅街を歩きながら、四方八方から向けられる視線を鬱陶し気に振り払う。 半端者の巣窟は、大学から二十分程のそう遠くない場所に作られていた。 人数はざっと八十くらいだろうか。 描き殴られたペイントや、乱雑に荒らされた民家から、この住宅街の一部だけ別の世界の様に感じる。 東条とノエルが歩きながらその風景を眺めていると、突然スキンヘッドの男+モブが屋根から飛び降りてきた。「おいテメェ、誰の許可えガァッ⁉」「アぐっ⁉」「イギぃっ⁉」 そしてノエルの蔦鞭で膝を折られ早々に退場する。 グループの中でも相当腕の立つ三人が一瞬で無力化された事に、覗いていた下っ端も息を呑む。 そして引き摺られている中に自分達のボスがいることに気付き、驚愕が恐怖に変わった。「……あ、あいつら、ノエルとカオナシじゃねぇか?」 覗いていた一人の男が声を漏らす。「誰だそれ?」「この前動画見せたろ!特区内を歩き回ってる化物だよっ。クソッ、俺達の事潰しに来たのか⁉こんなことなら俺も大学側に付けばよかった‼」「何ボソボソ言ってんだ?さっさとボス助けねぇと」「――っ俺は抜ける!」 立ち上がった男の腕をもう一人が掴む。「は?何を、お前ボスに殺されんぞ⁉」「知るか‼」「あっ、おい!」 掴まれた腕を強引に振り解き、男は一目散で裏口から逃走を図った。 取り残された方は呆気にとられ、開け放たれたドアを只見つめる。 彼はまだ知らない。 男のその怯えが、如何に大切なものであったかを。 東条は呻くスキンヘッドの上に座り、澄み渡る空を見上げる。「……なぁ、お前等のグループ、男しかいねぇな?」「ぐぅう、どきやがれっ、クソがぁッ」 見える範囲の半端者の中には、女性が一人としていない。 想像などしたくもないが、脳裏にちらつくのは先の泣きじゃくる女学生だ。「攫った女性、どうしてんだ?」「テメェに関係ねぇだろッ‼」 スキンヘッドが空いた拳に渾身の炎を纏わせ、東条の脇腹に一撃をぶち込んだ。 ゼロ距離で爆発する炎の威力は、人一人殺すのには充分すぎる。 腹は焼け爛れ、風穴が開いているに違いない。 ニヤリと笑うスキンヘッドはしかし、「……まぁ、関係ないんだけどさ」「なっ、ガッ⁉」 焦げどころか、目新しい傷が一切ついていない素肌に驚愕。と同時に頭部を掴まれ、その

  • Real   64話

      ――「おまたー」「ん」 数分もかからず返ってきた東条を確認し、ノエルは立ち上がる。 二人が向かって来るのを確認し、縛られている者達も再び呻き始めた。 しかし、「ちょっと寒いからこいつらの上着借りたいんだけど」「……あげたの?」「いや、ちゃんと後で返してもらうよ」「……ならいい」 彼等のことなど当然の様に無視し、東条は寒い寒いと肌を摩る。 一度としてまともに取り合おうとしない二人に対して、仮面達も怒りよりも疲れが勝ってしまっていた。「なんだなんだ。せっかく一緒に選んだのに、って悲しくなったか?お前も可愛いとこあんじゃおいっ⁉」 ピエロのコートを引き千切って投げ渡すノエルに、苦言の眼差しを向ける。 彼女はふんすと鼻を鳴らし、ようやく簀巻き達に目を向けた。「アジトまで案内して」 唐突にカメラを向けられたピエロは一瞬唖然とするが、猿轡を外されたと同時に溜まりに溜まった怒りを爆発させた。「テメェ等只じゃ済まさねぇ‼殺すッ、ゼッテェ殺してやンゴっ⁉――」「うるさ」 騒々しさに耐え切れず、仮面をぶち抜いて木片を口に突っ込んだノエルは、次いで下っ端にカメラを向ける。「教えてくれたら、生きたままモンスターに食わせるのはやめたげる。早い者勝ち」 その言葉に、下っ端達は自分に待っている未来を察す。 怒りなど霧散し、恐怖と懇願に俺が俺がと身を捩る。「はい君」 一際激しくアピールした一人が猿轡を外され、歓喜の表情を浮かべた。選ばれなかった他は絶望している。「お、教えます!教えますからっ、命だけは助けて下さい!」「んー」「――ッ‼(こいつッ)」 部下の醜態に激怒するピエロだが、今の彼には威厳も何もない。部下が言うことを聞くはずもないのだ。「まさこれ持って」「結局俺が運ぶのかよ……」 簀巻きから伸ばした蔦を、一本に纏めた物を渡された。歩けば全員が引き摺られてついてくる。 運び方が雑にも程があるが、こいつらに同情することなど何もない。 下っ端の言う道を進もうと彼等に背を向けた、直後、(舐めてんじゃ、ねぇッ‼) バレないよう静かに形成され、打ち出されたた二本の水の槍が、東条の背中を捉えた。(ッ死にやが……は?) ピエロが幻視したのは、貫かれ、血を吹き出す東条の姿。 しかし実際に目に映ったのは、背中に衝突すると同時に弾け

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