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57話

last update publish date: 2026-09-13 10:12:18

 こんな世界になる前の朧は、常にニコニコとし、他人の為に率先して動く、社会的模範生徒だった。

 親の期待に笑顔で答え、

 友の頼みは断らず、

 相談には親身になり、

 大して親しくない人間ともすぐに打ち解け合う。

 そんな誰もに好かれる完璧超人、それが朧 正宗だった。

 彼もそれを当然と思い、その生き方こそが正解であると信じていた。

 しかし同時に、心のどこかでは常に息苦しさを感じていた。

 自分を殺し、

 他人が作る雰囲気に溶け、

 空気に溶け、

 感情に溶ける。

 そこに自分は在るのか。

 生きていると言えるのか。

 人生とは何か。

 自分とは何か。

 そんな命題が、彼を日々蝕んでいった。

 そして来たる、十二月二十四日。彼は答えに出会う。

 突如溢れ出るモンスター。

 パニックになる渋谷駅周辺。

 食い殺される人間達。

 そんな中に、彼も数人の友達といた。

 必死に逃げ惑う中、彼は段差に躓き転倒してしまう。

「助けて」

 そう手を伸ばした先には、

 只々遠ざかる、··の背中があった。

 気付いていない?そんなはずがない。

 手を伸ばした時、確かに目が合ったのだから。
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      ――「おまたー」「ん」 数分もかからず返ってきた東条を確認し、ノエルは立ち上がる。 二人が向かって来るのを確認し、縛られている者達も再び呻き始めた。 しかし、「ちょっと寒いからこいつらの上着借りたいんだけど」「……あげたの?」「いや、ちゃんと後で返してもらうよ」「……ならいい」 彼等のことなど当然の様に無視し、東条は寒い寒いと肌を摩る。 一度としてまともに取り合おうとしない二人に対して、仮面達も怒りよりも疲れが勝ってしまっていた。「なんだなんだ。せっかく一緒に選んだのに、って悲しくなったか?お前も可愛いとこあんじゃおいっ⁉」 ピエロのコートを引き千切って投げ渡すノエルに、苦言の眼差しを向ける。 彼女はふんすと鼻を鳴らし、ようやく簀巻き達に目を向けた。「アジトまで案内して」 唐突にカメラを向けられたピエロは一瞬唖然とするが、猿轡を外されたと同時に溜まりに溜まった怒りを爆発させた。「テメェ等只じゃ済まさねぇ‼殺すッ、ゼッテェ殺してやンゴっ⁉――」「うるさ」 騒々しさに耐え切れず、仮面をぶち抜いて木片を口に突っ込んだノエルは、次いで下っ端にカメラを向ける。「教えてくれたら、生きたままモンスターに食わせるのはやめたげる。早い者勝ち」 その言葉に、下っ端達は自分に待っている未来を察す。 怒りなど霧散し、恐怖と懇願に俺が俺がと身を捩る。「はい君」 一際激しくアピールした一人が猿轡を外され、歓喜の表情を浮かべた。選ばれなかった他は絶望している。「お、教えます!教えますからっ、命だけは助けて下さい!」「んー」「――ッ‼(こいつッ)」 部下の醜態に激怒するピエロだが、今の彼には威厳も何もない。部下が言うことを聞くはずもないのだ。「まさこれ持って」「結局俺が運ぶのかよ……」 簀巻きから伸ばした蔦を、一本に纏めた物を渡された。歩けば全員が引き摺られてついてくる。 運び方が雑にも程があるが、こいつらに同情することなど何もない。 下っ端の言う道を進もうと彼等に背を向けた、直後、(舐めてんじゃ、ねぇッ‼) バレないよう静かに形成され、打ち出されたた二本の水の槍が、東条の背中を捉えた。(ッ死にやが……は?) ピエロが幻視したのは、貫かれ、血を吹き出す東条の姿。 しかし実際に目に映ったのは、背中に衝突すると同時に弾け

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