LOGINイ・ムヒュルはヒョンシンのことばかり考えると、申し訳なさと自分の無力さで、自分自身に苛立ちを感じるばかりだった。
「あいつ、もう行くあてもないはずなのに……。」
自分はソ・シオンの面倒を見なければならず、最も危険な活動はヒョンシン一人に任せていたため、自責の念に駆られるしかなかった。
「家が狭すぎて、来るのが嫌なのか? それとも、まさか尾行でもされているのか?」
「任務が終われば、元々徹底的に姿を消す奴だからな……。」二人は食卓に向かい合って座っていたものの、ヒョンシンへの心配で箸を手に取ることもできなかった。
「私が怪我のせいで……ヒョンシンに辛い任務を全部押し付けている気がして。」
ソ・シオンの自責の言葉に、イ・ムヒュルは袖をまくり上げ、チゲの鍋を彼女の方へ押しやった。
「有能なエージェント『エス』を誰だと思ってる? あいつなら一人でも軍隊一つぐらい簡単に相手にするさ。」
いつもそれを信じているイ・ムヒュルだった。ヒョンシンは最高の格闘技術を持つエージェントであり、頭も切れて実力も凄まじく、先見の明もある彼女だった。
「それでも、一番苦労しているもの。いつも私たちと正確に分け合ってくれるじゃない? 申し訳なくてね……。」
「情報は俺たちが全部提供しているんだから、そんなこと気にするな。シオン、早く食べて。そうしないと薬が飲めないだろ。」イ・ムヒュルはソ・シオンの顔に差した暗い影を無理やり無視し、ご飯を大きく一口食べた。どこかで奮闘しているはずのヒョンシンを思い浮かべる二人の間に静寂が流れ、食事のペースは限りなくゆっくりになっていった。
= = = ヒョンシンは今、気が狂いそうなほど追い詰められていた。今日この場所に足を踏み入れた自分が死ぬほど恨めしい。この華やかな男たちは一体何者で、個人の借金内訳まで徹底的に調べて回っているのか。
「キム・ガム、本当にお前、調べ方がえげつないな。あの女、借金まであったのか?」
「親が10億の担保融資をつけて保育園を建てて、その後も数億もの借金を重ねて運営してきたみたいだ。この期に及んでどこかへ姿を消しておきながら、借金は律儀に返済しているんだよ。」キム・ガムの言葉があまりにも正確で、ヒョンシンの口は自然と開いてしまった。
「あの女、借金まみれだったのか? 全く、やれやれ。」
カ・ゲヨンの唇から漏れた冷ややかな嘲笑と息遣いが、ヒョンシンの頬を冷たくかすめた。
「ゲヨン、言うなよ。でも、かなり返済してたんだぜ。俺たちから正当な補償金をもらって土地を譲れば、亡霊のようなこの建物の責任感から一気に解放されるだろうに。本当に理解に苦しむ女だよ。」
亡霊のような家だと? 本人を目の前にして遠慮なく吐き出される言葉に、ヒョンシンの心は切り刻まれるようだった。だが、間違ってはいない。その過酷な責任感が彼女を死線へと押しやり、一日一日を生き抜く唯一の動力だったからだ。
「そのうち、もっと窮地に追い込まれたら俺たちに連絡してくるだろう。」
「とにかく興味深いな。あの女、手段を選ばず、実にしぶとく生きているみたいだ。」キム・ガムとハン・ギュリョンの会話を聞きながら、ヒョンシンはゆっくりと顔を上げて彼らを凝視した。胸の内で熱いものが込み上げてきたが、彼女は超人的な忍耐力で感情を抑え込んだ。あの傲慢な三人は、当事者を目の前にしていることも知らずに遊戯のように会話を楽しんでおり、ヒョンシンは決して動揺を見せるわけにはいかなかった。
「カ・ゲヨン、絶対にあいつに同情なんてするな。ああいう女が一番危険なんだ。貧困に喘ぎ、金のために人生が歪んだ女は、性根が邪悪に変わって何をするかわからないからな。」
キム・ガムは口元を残酷に歪め、毒を吐き捨てた。
「わあ、キム・ガム、今日に限ってすごく怖いね。わかってるよ、でもゲヨンが冷徹でも、俺にはそれができないんだ。あちこちに騙されて歩くのが俺の特技だろ?」
「ハン・ギュリョン、だからお前は一生俺のそばにいればいい。」 「ハハ、やっぱりうちのダーリンは最高だよ。」カ・ゲヨンは重い沈黙を貫いており、ハン・ギュリョンとキム・ガムは気の合う恋人のようにふざけ合っていた。しかしヒョンシンは、心臓をえぐられるような痛みに、これ以上彼らの声を聞いているのが辛かった。
貧困のせいで人生がこじれたのも事実だし、今エージェントとして偽りに満ちた人生を送っているのも事実であり、毎日誰かから逃げ回る可憐な人生であることも否定できない。
反論する気力さえ奪われたヒョンシンは、ゆっくりと身を翻した。行くあてはなかったが、彼らの傲慢な言葉から一秒でも早く逃れたかった。その時、ハン・ギュリョンが近づき、ヒョンシンの肩をポンポンと叩いた。
「どれどれ。坊や、お前、今はどこで寝泊まりしてるんだ?」
「お前、まさか居場所もないのか?」 「保育園が家だったけど燃えてなくなったんだから、当然行くあてがないんだろ?」 「ああ、これはひどいな。」何も言わずに自分を観察していたカ・ゲヨンの視線が、終始自分に向けられていた事実に、ヒョンシンは今さら気づいて身を震わせた。
「何というか……ネットカフェに行ったり……友人の家に泊まったりしています。」
「なるほど。定住する場所もないのか? じゃあ、そのバイクはどうやって維持してる?」 「あれこれ雑用を……片っ端からやって稼いでます。生きていかなきゃいけないので。」小部屋村から追い出されてホームレス同然の生活を送っていたヒョンシンは、同世代の子供たちがよく使いそうな言い訳を並べた。
「まあいいや、俺たちはほぼ終わった。ここさえ収容すれば、一帯を更地にして大通りまで派手に開発してやるつもりだ。」
「……。」ハン・ギュリョンの断言に、ヒョンシンの目の前が真っ暗になった。周辺の敷地をすべて買い取っているのなら、この保育園の土地をどれほど執拗に狙ってくるかは火を見るより明らかだった。
(お婆さんが、死んでも守り通せと言っていたけれど……もう本当に限界なのだろうか?)
ヒョンシンは重い絶望を抱え、無残に焼けた保育園の建物を虚ろな瞳で見つめた。すると突然ハン・ギュリョンが腕を持ち上げたため、スーツの袖口から銀色のカフスが冷たく光った。
彼の指がヒョンシンの肩を軽く掠めた時に感じた、冷たい金属の感触が、彼女の緊張感を極限まで引き上げた。
「ねえ、可愛い子ちゃん。」
「え?」ハン・ギュリョンはヒョンシンの耳元で、甘い誘惑のように囁いた。一体何を企んでいるのかわからず、ヒョンシンは全身に鳥肌が立った。その時、ハン・ギュリョンの口元が意地悪く上がった。まるで利口な猫がネズミを目の前で弄んでいるような態度だったが、彼は意外にも優しくヒョンシンに手を差し出した。
「兄貴についてくるか? お前、うちの会社でバイトしろよ。あれこれ聞くこともないし、清潔な宿舎だって提供してやるから。」
ヒョンシンはこの状況で何を言っているのかと思い、一言で断って立ち去ろうとした。ところがハン・ギュリョンは顔をさらに近づけ、ヒョンシンの肩をしっかりと掴んで引き止めた。
「お前をいじめたりしないから安心しろよ。うちの会社の社会還元事業の恩恵を受けると思えばいいさ。」
その時からハン・ギュリョンは、ヒョンシンの耳に心地よい破格の条件を次々と並べ立て始めた。
夜明け。ヒョンシンが眠っている顔をしみじみと見つめてから、ゲョンはやっと静かにリビングへ出てくることができた。ヒョンシンがチェ・ジュヒョンに会う前、最後のミッションのために苦悩しながら朝を迎えたあの日が、ゲョンの頭の中にくっきりとよみがえった。彼女がひとりで血の滲むような決断を下したまさにその場所へと歩いていき、ゲョンも同じように床に座った。「お前が見つめていた風景はこれだったんだな」窓の外のソウルの街並みは、青灰色の混じる妙な静寂と明るさをたたえていた。人生を賭け、命を投げ出す覚悟で思い悩んでいたヒョンシンが、まさにこの場所で一世一代の選択をしたのだろうと思うと、胸が重くなった。ゲョンは小さく深呼吸をしてLFに電話をかけた。「ケンズ代表。相変わらず連絡が早いな」 「用件だけ言え。次の行き先はどこだ?」 「話が早くて助かる。イギリスのロンドンだ」ヨーロッパをより確実に掌握しようとするLFの巨大な計画が垣間見えるようだった。「ヒョンシンを手放したくない」 「さあな。約束をしっかり守るエスだからな」ゲョンは再び考えに耽った。しばらく両目をソウルの上空へと向けた。「……ヒョンシンに広い世界を見せてやりたいんだ。俺はもちろんヒョンシンのそばに立つ」 「ほう、まるでヒルのように貼り付くつもりか?」 「ああ、それに俺は彼女をオックスフォードに連れていきたい。どうだ、共通の目的地になっただろう?」ゲョンは思いつきで言っているわけではなかった。国内であれ海外であれ、ヒョンシンには大学生になりたいという夢があった。LFとの課題も裏から支え、彼女を幸せにするルートも提供してやりたかったのだ。その時、LFはゲョンの心を読み取るかのように、ゆっくりと笑いながら言葉を続けた。「それを知っているか? 私の愛おしいエスは頭が良いから、かつてその大学に合格した履歴もある。私自身、だからこそロンドンに狙いを定めたのさ」ゲョンはあまりの驚きに、思わず胸が高鳴った。すでにLFは自分と同じ気持ちだったというのか。「面白い。じゃあ、俺も彼女のそばで継続教育学部(Department for Continuing Education)のコースでも通うとするか」 「ケンズ代表。お前も相当しつこい男だな」 「早ければ今年の10月学期(Michaelm
ついに3月中旬。ヒョンシンとゲョンは玄関の扉を入るやいなや、約束でもしたかのように互いの唇を重ね合わせ、くすくす笑い声を交わした。「また何ヶ月も経ったみたいです。ゲョンさんの家は来るたびに新鮮ですね」 「これでやっと俺も安心して足を伸ばして眠れるな」その低く呟くような告白に、ヒョンシンは胸の奥がツンと痛んだ。自分のせいでこの男の胸がどれほど冷やりとしたか推し量ることもできず、ただ申し訳ないばかりだった。「ごめんなさい、ゲョンさん」ヒョンシンがそっと謝ると、ゲョンはふたたび彼女の唇を軽くキスで奪い、優しい眼差しを合わせた。「ヒョンシン。それでも今回は違った。お前が必ず戻ってくると信じていたから」ゲョンはスーツの胸の内ポケットから真っ黄色の黄金のハンカチーフを取り出して見せた。そして優しい手つきでまたポケットにスッとしまい込み、自分の胸をトントンと叩いた。感謝と申し訳なさが入り混じり、ヒョンシンはゆっくりと手を上げて自分の首元を探った。「私ももう習慣のように……このネックレスが私の体の一部になったみたいです。ゲョンさんの心が私を何度も救ってくれました」ヒョンシンはゲョンの大きな手を引き寄せ、ネックレスが触れている自分の鎖骨の上にそっと乗せた。「いつも身につけさせてくれてありがとう」 「僕たちはこうしていつも心が繋がっていたんだね」これ以上の言葉は必要なかった。言わなくても互いの深い息づかいに込められた本心がそのまま伝わってきた。そして堪えていたゲョンの欲望が爆発するかのように、ヒョンシンの唇を飲み込んだ。寝室まで歩いていく余裕すらなかった。二人は焦れったい手つきで互いの服を脱ぎ捨て、リビングのソファの上に転がり落ちた。荒い吐息と熱い息遣いがリビングいっぱいに響き渡った。地獄のような苦難を乗り越えて訪れた関係は一段と激しく、空間全体を燃え上がらせるように熱く火照らせた。ただ原始的な本能に身を任せ、無言で求め合う二人の男女の体温が絡み合った。時には荒々しい獣のように激しく、時には世の中で最も純粋な子供のように優しく。まさにその瞬間。Rrrr— Rrrr—ソファの下に落ちたゲョンの携帯電話が激しく振動した。遠のいていた意識がはっきりと戻った。「ゲョンさん。私たちの夜はとても長いです。早く携帯から確認してください」 「……ああ。私
ヒョンシンを先に送り出した後、チュ・ヒョジンはLFとのティータイムを続けた。ヘルマンも今夜はチュ・ヒョジンに任せ、ナンバーたちを連れて仕事を片付けに出かけていたため、二人だけの時間はとても甘美なものだった。「あら、あなたひどくない? 神様って本当に不公平よね」ヒョンジンは紅茶とマカロン、タルト、フルーツ、みたらし団子、サンドイッチまで、トレイがしなるほどのおやつを並べていた。「病人がこんなにセクシーでいいの? 顔を見るだけで今にも私を抱き上げてホテルへ直行しそうなほどエネルギーに満ち溢れているのに。さあ、早く食べてぱっと起き上がってよ」 「繰り返しになるが、このデザートを全部食べたら、ない病気までできそうだな」LFが日差しのように明るく笑いながら見つめた。「あら、あなた怒ったの? ああ、お酒がないからか!」 「やっと俺のことが少し分かってきたな」ヒョンシンはイチゴをフォークで刺してLFに差し出しながら満面の笑みを浮かべた。「あなた、結構危険な男だったのね。本当に驚いたわ」LFは無造作にイチゴを受け取って食べると、フォークを下ろした。「俺もヘルマンも、金儲けのために投資したんだ」 「だから君は魅力的なんだ」LFが腕を組んだままじっと見つめた。「これからは、君の公演で『ブラボー』をもっと長く叫べるようになったわけだな」 「今年も、来年も、再来年も私の公演を見に来てよ。あぁ、我慢できない。私とキスして」ヒョンシンがそっと病室のベッドの上に這い上がってきた。「おや、趣味が変わっちまいそうだな」 「あなたに秋と冬ができたなんて嬉しいわ。来年の春も、その次の春も私たちのベッドでもっと熱く過ごしましょう」 「君、すっぴんもなかなかだな。もちろん服まで脱げばもっと綺麗だろうが」ヒョジンは微笑みながらLFの襟を引っ張り、熱く唇を重ねた。= = =その日の夕方、開浦洞(ケポドン)にあるムヒョンの家。「家が小さくても綺麗に可愛くまとめてるね、シオン」今日退院したヨレンとリソンを家に招いたシオンが、フルーツを綺麗に剥きながら迎えた。「俺が倒れてる間、リソンの面倒を見てくれてありがとう。一緒に食べようと思ってさ」 「ヨレン先輩、意識が戻ってからも見事に僕たち全員を騙すなんてひどすぎますよ」2組のカップルは食卓を囲み、これまで胸に秘めて
やっぱりこれも長生きしてみるものだった。流れる涙をLFが拭いてくれた。笑わなければならないのに、なぜか涙ばかりが出た。カ・ゲョンがLFを信じて二方だけの時間を過ごせと「プレゼント」という表現まで使うなんて。「……LF先輩、ご機嫌ななめのようですね」 「ああ。機嫌がいいわけないだろ? レディを泣かせるのは趣味じゃないからな」こんなにも美しく笑いながら言う言葉だなんて。「こっちに来い」LFは笑みを引っ込め、淡々とした表情でヒョンシンを見つめた。ヒョンシンがベッドに腰掛けて彼との距離を縮めた。彼が手を伸ばし、ヒョンシンの頭をゆっくりと撫でてくれた。まるで複雑な心をすべて分かっているかのような優しい手つきだった。「それでも、先輩を助けたかったのに……自分の手でやり遂げました」LFの濃い紫色の瞳に温かい笑みが広がった。相変わらず美しく、神秘的に人を惑わす瞳だった。「なぜ毎回助けるんだ?」ヒョンシンは泣かないようにと涙ぐみながらも唇を尖らせた。「先輩、私のせいで銃まで撃たれて私を助けてくれたじゃないですか。私も……その日は本当に生きるのが嫌だったのに」 「その日はお前が望んだんだ。韓国に来たいと言っただろ」間違いではなかった。キーマンを探そうとしたのはまさにヒョンシンの意志だった。ヒョンシンは胸が熱くなって喉がツンと痛んだが、深く息を吸い込んで感情を鎮めた。「はい。あの地獄は私が選びました」 「それに、悪人の肝臓がなんで俺の体についてるんだ?」 「悪人に罰を与えようと」そのとき、LFの耳に心地よい笑い声がヒョンシンの耳をかすめた。「気に入らないな。今度からしっかり体を酷使しないとな」ヒョンシンは言い返す代わりに、ふふっと笑ってしまった。この状況でもLFは相変わらずでのんびりと他人事のように話していた。「俺の病気、いつ気づいた?」そろそろ深刻な話をしなければならないのだろうか。ゲョンが置いていったジュースを一口飲んだヒョンシンは、ゆっくりと言葉を切り出した。「盆唐でバンジージャンプをしたとき、何か変でした。その後もずっと時間がないという話をしたり……1年後にこの世にいない人のように振る舞っていたじゃないですか。後でヘルマン先輩と話しているのをちらっと聞いたんです」 「無駄に鋭いな」LFは本当に面倒くさそうに、あまりにも美し
焦りを覚えたキム・ミンチョルは、突然何冊もの帳簿を取り出して説明を始めた。「さあ、俺が望むのは世の中が正しく正されることだ。」キム・ミンチョルがハンビダンのコードタワーとしての役割を果たしたという証拠物には、悪事ばかりが記されているわけではなかった。過去にハンビダンで成し遂げた実績や大がかりな事件、そしてそれなりに正しく築き上げられた正義の結果物も並べられていた。「俺は自分の父親からこれを受け継いだとき、要員たちのあの血の滲むような努力に感謝した。」最近の帳簿を見ると、ヒョンシンが成し遂げた任務も記載されていた。ゲョンを初めて医療不正の現場で出会ったこと、ソウルで証拠を確保した警察の不正、ハン・ギュリョンの会社への侵入事件まで。すべて実際に起きた事実だった。そのとき、帳簿を一緒に覗き込んでいたハン・ギュリョンが目を丸くし、ゲョン、カンムと視線を合わせた。「うちの会社の創立記念日の侵入事件は、結局黒幕がペク会長だったわけ? じゃあ、LFはなんなのよ。助けに来てくれたってこと? 私を守るように依頼したじゃない!」 「バイトくんを香港に連れて行ったのも、結局LFが助けようとしたってわけか。」帳簿には、ヒョンシンが国の機密を流出させようとした裏切り者の要員だという濡れ衣を着せられたうえ、さらにH建設の技術を持ち出そうとした産業スパイのリストにも名前が載っていた。キム・ミンチョルは指でヒョンシン除去の依頼項目を指し示しながら、周囲を見回した。「エス, 俺はただチェ・ジュヒョンを信じ続けていただけなんだ。お前が、まさかLFをそそのかしてヴィクトリアを崩壊させ、カ・ゲョンまで巻き込んでハンビダンを世間に暴き出し瓦解させようとする人物だとは思わなかった。お前を殺そうとしたことは謝る。」ヒョンシンはあきれて言葉Fが出なかった。続いて広げられた資料はハンビダンの会計帳簿だった。負傷した要員を無料で治療したり、生活費を継続的に支給するなど、むしろキム・ミンチョルの財産の一部がハンビダンへ寄付されていた情勢も確認された。「俺はハンビダンのタワーだ。ハンビダンの機能に感謝を感じる人間のひとりさ。もちろん、明日は検察に出頭する。これまで犯した罪があるなら、それは受ける。だが、チェ・ジュヒョンが犯した罪まで濡れ衣を着せられるのはごめんだ。俺はこの国の腐った部分をずっと
ヒョンシンは、悪びれる様子もなく現れたキム・ミンチョルを見るだけで歯ぎしりが出る思いだったが、何とか平静を保とうと努めた。カ・ゲョンはすぐにマ室長を呼び、準備してきた数々の証拠をテーブルの上に冷ややかに並べた。「まったく、気が早い奴らだな!」 「私に忍耐力があまりないもので、かなり増えたほうみたいです。一週間も時間を与えたのに答えを出せなかったとは、残念ですね。」ゲョンは話し合いに先立ち、チェ・ジュヒョンとキム・ミンチョルの罪を立証する書類と証拠を見せ、決定的な録音ファイルまで聞かせた。「こんな……! 不法な証拠なんて効力はない! 法はそこまで甘くないぞ!」 「院長! どうしてカンムに手を汚させようとなさったのですか? 違法だろうとなんだろうと、SNSや放送局にバラして恥をかかせることはできるってご存知ですよね?」怒りを抑えきれなくなったハン・ギュリョンが怒鳴りつけると、キム・ミンチョルはすぐに尻尾を巻き始めた。「ハン社長! わかったから、話そうじゃないか。」「俺は今日、親父の味方じゃない。」 「この親不孝者が! すべてお前のせいだ!」カンムの乾いた言葉に、キム・ミンチョルは八つ当たりするように再びヒョンシンを睨みつけた。ヒョンシンはハンビ단に対してすっかり愛想が尽きていたうえ、こんなふうに骨の髄まで腐りきった組織にこれ以上自分の命を賭けたくなかったため、気持ちを立て直してきっぱりと口を開いた。「院長、私は正義を立てて自分の大切な人たちを守るためにこれまで要員でいたのであって、誰かの欲を満ために命を張ったわけではありません。」「そうか? また要員が一人引退する瞬間だな。」キム・ミンチョルはとりあえず惜しそうな表情を作ると、理解したという意味でうなずいた。「エス。もう出ていっていい。これからはチェ・ジュヒョンが残した裏金の話もあるし、ハンビ단의機密について話さなければならないから、席を外してもらうぞ。」ヒョンシンは突然気まずくなって体を縮こまらせた。そのとき、傍らにいたギュリョンとカンムがソファから背中を離し、一言ずつ浴びせた。「院長、一番大事なこと! うちのバイトくんを殺そうとなさったではありませんか?」 「そうです、親父。この事態に至った原因なんですから、コードネーム・エスに謝罪からするべきでしょ。」キム・ミンチョルは一体







