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◇花の気持ちと相原の気持ち

Author: 設樂理沙
last update Huling Na-update: 2025-05-26 05:50:37

157

*花の気持ち*

 クリスマスのお泊りの日、定期的に会えるような関係になりたいと

相原から告白された。

 結婚を前提にお付き合いして下さいとは言われず、最低でも週に一度

くらいは会いたいのだと懇願された。

 彼が話した話の中には将来結婚したいという意志表示はなかった。

 なので、おそらくこの関係に名前を付けるとすれば、

ガールフレンド《友だち》の立ち位置ということなのだろう。

 ひとまず、花は相原のお気に入りの友人という立場を受け入れることに

した。

*相原の気持ち*

前《さき》の派遣社員が2人共相馬に好意を寄せたものの、恋に破れ

辞めていったという曰く付きのポストに来た掛居花のことについて、

相原は他の同僚たちと同じくらいには気にして注目していた。

そのような中で以前は芦田にみてもらっていた娘、凛の夜間保育の担当

が掛居に代わったことで、以前よりも身近で接することができるように

なり、徐々に徐々に掛居のことが更に気になる存在になっていき……。

 娘が切っ掛けで知り合えるチャンスに恵まれた相原は、どんどん掛居を

好きになっていくのだった。

そして、とうとうクリスマスの夜……しかもなんと掛居の家で彼女と

同じベッドの中で自分の気持ちを伝えたのだが、流石に子持ちで身体的に

問題を抱えている身では、条件の悪い自分を鑑みてみると、どうしても

この時結婚を考えていることなど言い出せなかったのである。

姉の重荷を半減するため凛を自分の子供にすると決めた時から、一度は

結婚を諦めた相原だったが、掛居とならしばらくの間自分や凛と交流して

いく内に自分の境遇を万に一つ理解してもらえるかもしれないと思えるよう

になった。

 だがまだいうほど付き合いと言えるほどの付き合いを重ねていない

現在《いま》、クリスマスの時点では結婚の二文字は言い出せなかった。
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