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chapter21

Auteur: 水沼早紀
last update Dernière mise à jour: 2025-06-18 18:58:13

「はい。ちょっと仕事のことで、相談が……」

 ……ほら、やっぱりね。

「そうだと思った。 なんなの?なんかトラブルでも起きた?」

「……あの、実はですね」

 英二困惑したような顔で口を開く。

「なによ? 早く言いなさいよ」

「……実は、僕が取引してる会社が、突然契約を取り下げたいって言ってきたんです」

「ええっ!? ちょっと、どういうことよそれっ!」

 なんで突然、そんなことに……!?

「実は、取引内容が、あまりにも条件が悪すぎると言われまして……」

「ええ?あれのどこが条件悪いって!? どこの会社よりも条件はいいじゃないの!……なのになんで、そうなった訳?」

 急に考えを変えてくるなんて、ありえない!

「僕にもそれは、分かりません。……ただ、もっとサービスがほしいという要求が、ありました」

「なにふざけたこと言ってるの!?うちの会社は、一応トップの業績なのよ? それなりのサービスはしてるつもりだけど?」

 ちょっと、ありえない。あれで条件が悪いですって……?

「でもサービスが足りないって言われた以上、これ以上は僕にも、どうすることも出来ません」

「なに言ってんの。アンタが弱気になってどうするの!これはアンタの取引が初めて上手く行くチャンスなのよ!? 名誉がかかってるの」

 一体、どうしたらいいのかしら……。

「でも僕、もう自信がありません。……どうしたらいいのか、分からなくて」

「寝ぼけたこと言わない!なにがなんでも、成功させるのよ!」

「……先輩?」

 困惑した英二に向かって、私は「いい?せっかくアンタに、チャンスが回ってきたのよ? このチャンスを逃してもいいの?」と問いかける。

「……それは」

「アンタ、私に憧れてあの会社に入ってきたんでしょ? なのにもう、弱音を吐く気?」

「……でも、自信がなくて」

 弱気な英二に、私「いい?英二、よく聞いて」と英二を見る。

「私だって会社に入った頃は、まともに仕事させてもらってなかったのよ。 毎日ずーっと雑用ばっかり、押し付けられてただけだったんだ」

 こんな会社、くそくらえと何度思ったことか。

「でも自分が入りたいと思ったから、雑用でも頑張ったの。 そしたら、私も仕事がもらえるようになって、任せてもらえるようになったの」

「……そうなんですか?」

「そうよ。だから仕事するってことのありがたみが、分かるの。……それが
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