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chapter44

Auteur: 水沼早紀
last update Dernière mise à jour: 2025-07-04 17:20:53

「……って、なにやってんのよ私」

 こんな時に泣きそうになるなんて……。本当にダメだな、私。

 今は泣いてる場合じゃないのにね……。もっと強くならないと。

 とりあえず、早く仕事を終わらせて帰りたい。一刻も早く、この寂しさから逃れたい。

「……やるしかないか」

 と、気合を入れ直した。

* * *

 それからどのくらい経ったのか、全然分からない。

 気づいたら見覚えのある部屋のベッドの中にいて、その隣には見覚えのある男性がいる。

「……あれっ?」

 ここはどこ……? 私はなんでここにいるの?

 これは……夢なのだろうか。 私は、幻覚を見てるのだろうか?

「み……ずき……」

「……ん?」

 えっ……? いやいや、なんか幻聴まで聞こえてきた?

 おかしいな。私、本当になんでここにいるのかな? 確か私、残業してたはずだったよね……。

「……っ!」

 違う!これは夢でも幻覚でも、幻聴でもないっ!

 ふと隣に視線を向けると、そこにはやはり見覚えのある男性がいた。……いや、完全に課長本人がいた。

 課長は私が起きてることには全く気づかず、瞬きもせずにぐっすりと眠っている。

「……え、なんで?」

 待って待って? なんで課長がここにいるの?

 ていうかここって……課長の部屋?

「なんで……?」

 私、なんで課長の部屋に来たんだっけ……?

 ダメだ。全然、思い出せない。  別にお酒を飲んでいた訳でもないから、特に酔ってるって訳でもないし……。

 あれ、本当にどうしたんだっけ……?

 なんとなく時間を確認したら、もう夜中の三時半をとっくに過ぎていて、いつもならぐっすりと眠ってる時間なはずだった。

 なんで……こんなことになってるんだろう?

 私、課長と会ったような記憶もないし、ちゃんと仕事をこなしてたはずだと思ったんだけど……。

「みず……き」

 でも課長の寝顔って、なんかカワイイな。 子供みたいな寝顔してる。

 それにしても、まつげが長いなぁ。 顔立ちだって整ってるし、目もパッチリしてるし、鼻筋もキレイに整ってる。

 それに声だって低めだけど、なんか透き通ってるし。 色は白いのに、顔にはニキビなんて一つもなくて。

 私は本当に、課長が羨ましいような気がする。

 課長は男なのに、女の私よりも肌がキレイとか、なんか嫉妬しちゃうな……。

 まあ……課長に
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