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355話

Penulis: 籘裏美馬
last update Tanggal publikasi: 2026-04-14 20:05:50

──待って、今苓さんはなんて言ったの。

私の手を引き、前方を走る苓さんを唖然と見つめながら、私は足を動かし続ける。

道路を駆け、病院に戻ってきた苓さんは、驚いたままでいる私に振り向き、事情を話した。

「警備会社から、俺の所に連絡が来たんです。藤堂さんに連絡が繋がらなくって、俺の所に……!」

「え、え……」

「藤堂さんがお母様の病室を出て暫くして、お母様の指が動いた、そうです。病室内の様子を確認するために時間を決めて、毎回窓から中を確認しているようで……その時、警備員が確認した時にちょうど──」

「お母様の指が動いた、と……?」

私の言葉に、苓さんは強く頷いた。

苓さんが、焦って私を探しに来てくれた理由はこれで分かった。

だから私は、腕を掴んでいる苓さんの手に自分の手を重ね、離してもらうようにぐっと力を入れた。

「ありがとうございます、小鳥遊さん。……すぐに教えていただき、助かりました。谷島さんとお話をしていたから、電話に気づかなくて。……ご迷惑をかけてしまいましたね」

困ったように眉を下げ、私がそう口にすると。

苓さんは何とも言えない、何かを言いたそうな表情
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    「苓さん、お待たせしました。家に帰りましょう」 「──え?」 私が戻るなり伝えた言葉に、苓さんはきょとんと目を丸くした。 苓さんもこの後、警察署に行くものとばかり思っていたのだろう。 だから私は今さっき電話で話した事を苓さんに説明する事にした。 「何だか、今日は来なくても大丈夫ですって。詳しい事は後日聞きますって言ってました。苓さんは藤堂で寝泊まりしますって伝えたら、警察の方が後日家に来るそうです」 「──茉莉花の家で過ごしていいんですか?本当に?」 私の言葉に、苓さんの表情がぱっと明るく変わる。 「ええ、もちろん。……もし苓さんが良ければ、これからもずっと暮らしませんか?」 苓さんから聞いた、小鳥遊のご両親の話──。 きっと、幼少期からずっと辛い思いをしていたのだろう。 長男も、次男も成功して──スペア扱いだった苓さんへ、苓さんの両親は愛情をたっぷり注いでくれたのだろうか。 いえ、きっとそれは無い。 苓さんの話や、態度から両親に愛されていたような雰囲気は感じなかった。 むしろ、その逆で。 ずっと寂しい思いをしていたのかもしれない。 それなら──。 藤堂の家は。 私のお父様やお母様は、少し過干渉だとは思うけど。 両親は娘の私の欲目を抜かしても、しっかり個人を見てくれる人だし、愛情深い人達だと思う。 それに、苓さんの事が大好きな私もいるから。 苓さんとは、何れ近い内に一緒になるのだ。 それなら、少し同居が早くなってもいいんじゃないだろうか。 一緒にいれば、怪我をした苓さんの生活のお手伝いだって出来る。 私の考えを苓さんに伝えると、苓さんは嬉しそうに頷いてくれた。 「ありがとうございます。藤堂の家に、お世話になります」 「分かりました。では、お父様に伝えておきますね」 私はお父様に一報を入れ、苓さんと一緒に病院を後にした。 車に乗り込み、走り出してから少し。 スマホを確認していた苓さんが私に声をかけてくれた。 「──茉莉花、谷島から連絡が……!」 「えっ、谷島さんから?……捜査に進展があったんですか?」 私の言葉に、苓さんは持っていたスマホを私に見えるように見せてくれた。 「今回の事件、どうやら速水 涼子が関わっていたみたいです」 「──えっ!?」 「あの女性スタッフ、速水 涼子からの依頼を受けて

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    女性スタッフは写真から顔を逸らし、小さな声で答えた。 「──っ、知り、ません……」 青い顔でしらを切ろうとする女性スタッフ。 谷島はため息を吐き出した。 「君は、この女性がどんな恐ろしい事をしたか、知っているか?」 「──え」 「坂口 美波さん。あなたの供述は一貫性が無く、信用に値しない。……それに、防犯カメラにもしっかり映っている。あなたは小鳥遊 苓に襲われたんじゃく、自ら彼に迫り、そして押し倒した。その結果、小鳥遊さんは怪我を負った。……捜査に協力的ではない今の態度だと……結果は悪い事になりますよ」 「──っ」 そう。 今回の事件は、全て防犯カメラに映っていたのだ。 茉莉花が警察への通報を指示した時、女性スタッフ──坂口はそこまでやるつもりは無かった。 寧ろ、自分が犯罪行為を働いたのだ。 警察に通報され、しっかり調べられたら自分が嘘をついて苓を陥れようとした事が簡単にバレてしまう。 だからこそ、その動揺や恐怖から、警察が来て事情を聞かれている時も坂口は動揺し、供述が一転二転した。 襲われて、動揺しているのではない。 何か嘘をついているから、それが発覚するのを恐れている。 その動揺だ。 そう判断した警察は、見方を変えた。 もしかしたら、これは単なるトラブルじゃないかもしれない。 警察は坂口だけではなく、坂口に対して何か不思議に思う事や、普段の彼女の様子を店のスタッフに聞いた。 そうしていると、他のスタッフから坂口が仕事仲間ではない女性と店の裏で会い、話しているのを見た事があると複数人から話されたのだ。 それを聞いた警察が、周辺の道路の防犯カメラを探し、映像を確認した所、他のスタッフの言葉通り、確かに坂口と別の女性が映っているのが確認出来た。 そして、そのもう1人の女性──。 その女性が、速水 涼子だと分かり、警察は警視庁刑事課の担当刑事、谷島にすぐに報告をしたのだ。 未だだんまりを続ける坂口に、谷島は懐から手錠を取り出した。 「──指名手配犯、速水 涼子の協力者と判断し、坂口 美波さん。あなたを緊急逮捕します」 「──えっ!?」 谷島が口頭で弁護士の事、拘束についてなどを説明していると、坂口がぎょっとして顔を上げた。 「まっ、待ってください!私、知らなかったんです……!あの女性が指名手配犯なんて……っ!ぜ

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    ◇ 「縫合の必要はなさそうですね。傷口の洗浄も終わりました。化膿する恐れもなさそうなので、帰宅いただいて大丈夫ですよ」 あれから。 病院に搬送された苓さんを、お医者さんが診てくれた。 幸いな事に、手術するような大きな切り傷じゃなくて。 傷口を診て、処置をしてくれたお医者さんがそう言ってくれて私と苓さんはほっと安堵の息を吐き出した。 「良かった、帰宅出来るんですね……!」 「ええ、ですが今夜熱が出る可能性があります。解熱剤と抗生物質を処方しておきますので、熱が出たら必ず飲んでくださいね」 「分かりました」 「あの、先生……!お風呂とかは、入らない方がいいですか?」 私は、先生に質問をする。 すると先生は私に体の向きを変えて、答えてくれた。 「お風呂も入って大丈夫ですよ。ですが、傷口を濡らさないよう、奥様が入浴のお手伝いをしてあげてください」 「──分かりました」 「日常生活を送る分には支障はありません。ただ、工事現場で動く、とか走る、などの体を激しく動かすような行動は暫く避けてくださいね」 「はい、分かりました」 「では、処方箋を出しておきます」 「ありがとうございました」 先生の話を聞き終えた私達は、病室を出るために椅子から立ち上がる。 すると、苓さんが僅かに体を強ばらせ、顔を顰めた。 縫合するほどの傷ではないとは言え、切っているのだ。痛くないはずが無い。 「苓さん、手を……。私に掴まってください」 「俺が体重をかけたら、茉莉花が潰れてしまいます」 「それくらい大丈夫です!しっかり支えますから」 そんな事を話しながら私と苓さんは診察室を出た。 苓さんを待合室の椅子まで支え、座ってもらうと私は思い出す。 そうだった、警察に連絡をしないと……! 「苓さん、私ちょっとだけ離れて電話をしてきますね。警察の方に連絡をしないと……!」 「だけど、1人じゃあ──」 「大丈夫です、──ああ、ほら!護衛の方も少し離れた場所で控えてくれていますから!」 私が視線を向けた先に、苓さんが手配してくれていた護衛の姿を見つける。 救急車で搬送された時、護衛もしっかり後を追ってくれていたのだろう。 護衛の姿を確認した苓さんは安心したのだろう。 渋々ではあるけど、頷いてくれた。 「──分かりました。だけど、俺の目の届く所にいて

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    御影ホールディングス。 以前、兄の会社に協力依頼があった。 俺の兄──一番上の、長男が代表取締役の小鳥遊建設で、部長として働いている俺は、以前も御影ホールディングスに見積もりのために訪れていた。 御影ホールディングスの求める額ではうちの小鳥遊建設は、到底仕事を請け負う事が出来ない。 だから仕事を断ったのだが、再度見積もり提出を頼まれ、見積もりを修正して再び来社した。 御影ホールディングスは、大きな企業で、御影家は昔から続く古い家

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