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第4話

Penulis: キュートキャット
ウェディングドレス専門店を出たあと、私は会社へ資料を取りに向かった。

廊下を歩いていると、周囲から嘲る声が聞こえてくる。

「聞いた?ある人が済木社長のお金を騙し取ろうとして、細木副社長にバレて、しょぼくれて退職しに来たんだって」

「昔は済木社長のお気に入りだったのにね。手のひら返しがすごいね、本命には勝てないってことか」

こんな陰口にはもう慣れきっている。

胸は少しも揺れなかった。

彩羽が上に立ってからというもの、あらゆる形で嫌がらせを受けた。

粗探しをされ、企画書は10回も突き返される。

夜中まで修正して提出すると、翌日には「やっぱり最初の案でいい」と平然と言われる。

空気を読む古参社員たちは流れを察し、仕事を次々と私に押し付けた。

最初の頃、楓人は私の状況を気にかけていた。

表立っては何も言わないが、しばらくすると難癖をつけて、私をいじめた相手を叱りつけていた。

その態度を見て、彩羽もさすがにやりすぎは控えていた。

けれど次第に、彼は彩羽を気にかけるようになり、私には冷たくなった。

私が誰かにいじめられているかどうかなど、もうどうでもよくなったのだ。

彩羽を持ち上げる者は出世し、私を踏みつける者は何の代償も払わない。

あの頃にはもう、彼の心が離れていたと気づくべきだった。

それでも私は、彼の計画が終わるその日、皆の前で真実が明らかになると信じていた。

今思えば――浅はかだった。

そのとき、楓人からメッセージが届く。

【ごめん。さっきはちょっと言い過ぎた。この2日、明燈の面倒見てやってくれ。あとで必ず埋め合わせするから】

私はそのままスマホの画面を消した。

もう、彼の取り繕いを見る気にもなれない。

資料室の扉を押し開けると、設計部の主任・丹下清吾(たんげ せいご)と鉢合わせた。

彼は無理やり笑みを作るが、泣き顔に近い。

「衛藤さん......来てたんですね」

彼の手にある資料に目をやり、思わず尋ねる。

「それは......?」

彼は肩を落とした。

「はあ、細木さんですよ。うちの部署に海外帰りのエリートをねじ込んできて、俺はお払い箱です」

彼は、もともと私が採用した人材だった。

「計画」が始まってから、多くの人が彩羽に取り入り、私を踏みつけるようになった中で、彼だけは以前と変わらぬ態度で接してくれていた。

その彼を追い出し、代わりを連れてくる――おそらく、私への当てつけだ。

結局、私が彼を巻き込んだのだ。

私は苦笑した。

「ごめんなさい......もっと距離を置くべきだったね」

彩羽の卑劣さと狭量さを、私は見誤っていた。

清吾は私の頬の傷に目をやり、同じく苦笑する。

「仕事を変えるだけですから。こんな空気の悪いところ、どのみち長くはいられません。

それより衛藤さんこそ、もっと自分を大事にしてください。あなたの経歴と能力なら、きっとどこでもやっていけますよ」

私は頷いたが、何も言わなかった。

明燈はもういない。

私は当然、ここを去る。

だが彼は、私の沈黙を別の意味に取った。

「まあ......衛藤さんは俺と違ってこの会社とは長い付き合いですし、簡単には離れられませんよね。それに妹さんも体が弱くて、入院や薬でお金もかかるでしょうし......

でも済木社長、妹さんには優しいと聞きましたよ......妹さんのためにも、少し肩の力を抜いてください」

慰めのつもりなのだろう。

けれど彼は知らない。

明燈はもう、手術費が足りずに亡くなったことを。

その名前を聞くだけで、胸が締めつけられる。

彼も、楓人も、今朝の秘書さえも、明燈の名前を持ち出して場を和らげようとした。

でも明燈はもういない。

私のこの数年の喜びも、期待も、すべて灰になってしまった。

資料の受け取りは、驚くほどあっさり終わった。

担当者は私と関わるのを恐れているのか、乱暴に資料を押しつけ、さっと一歩引く。

部屋を出ようとしたとき、かつて彩羽に媚びていた一人が道を塞いだ。

「待てよ、そんなに急ぐなって」

私のスーツケースを一瞥し、にやりと笑う。

「前に倉庫で資料整理してただろ?何か置き忘れてないか?今のうちに探したほうがいいぞ。出ていったら、もう戻れないぞ」

彩羽の取り巻きが、善意で言うはずがない。

私は体を引いた。

「結構です」

人がいなくなれば、物なんてどうでもいい。

だが周囲の数人が取り囲み、口々に言う。

「なんだその態度、親切で言ってやってるのに」

「そうそう、貧乏なんだから教えてやってるんだよ」

「会社出たあとで、何かなくなったとか言い出して、ゆすろうとしてるんじゃないのか?」

最後の日くらい、面倒は避けたかった。

私はぶっきらぼうに言い捨てる。

「必要ない。仮に何かなくしても、取りに戻ったりしない」

だが彼らはどかないどころか、位置を変えて道を塞ぎ、私を押し返してくる。

数で勝てる相手ではない。

私はスーツケースを抱きしめた。

「分かりました......中で確認する」

スーツケースを外に置けば、この連中なら本当に何か細工をするだろう。

他の物はどうでもいい。

だが中には、ガラス製のオルゴールが入っている。

明燈が自分のお年玉で買ってくれた、大切な形見だ。

私がスーツケースを抱えて中へ入ろうとすると、すぐに止められる。

「誰がそれ持って入っていいって言った?中の物を持ち出したら、あとで済木社長に責任問われるのは俺たちだ」

「そうだ、箱はここに置け。人だけ入って確認しろ」

――明らかだった。

私を一人で中に入れ、その間にスーツケースに細工するつもりだ。

私はさらに強く抱きしめる。

「やはり結構です。帰る。仮に何かなくなっても、会社に請求なんてしないので」

それでも彼らはじりじりと迫り、一人が隙を見てスーツケースを掴んだ。

「そんなに必死に守るってことは、会社の物でも盗んだのか?」

数人が私を押さえつけ、残りがスーツケースをこじ開ける。

中から、明燈がくれたオルゴールが取り出された。

心臓が跳ね上がる。

「やめて、触らないで!」

相手はそれを持ち上げ、にやりと笑う。

「これ、細木副社長のオフィスで見た気がするな。まさか、盗んできたんじゃないだろうな?」

「このガラクタは預かっておく。細木副社長に確認させてもらおう」

もし本当に彩羽の物なら、こんなふうに「ガラクタ」などとは言わないはずだ。

ただの嫌がらせだ。

怒りと焦りで胸が詰まる。

それでも私は声を落として懇願した。

「お願いします......それは妹の大事な遺品なんです。どうか返してください。これからは、もう二度と皆さんの前には現れないから......」

相手の目に、意地の悪い光が宿る。

「そうか?でもやっぱり盗品に見えるな」

「こういうのは、壊してしまうのが一番だろ?」

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