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10: 昔の友人に会いに行きます……

Author: ซากุ
last update publish date: 2026-10-22 16:49:10

 011

「よ……バルちゃん」

 [あれ……誰かと思えば、お前か]

 水曜日の朝、お客さんのところへ行く前に……学生時代の別の親友に電話をかけた。彼は少し変わったところがある……でも、性格が変わっているわけじゃない。

「お前はまた番号変えてるし……やっと繋がったと思ったら、西尾に頭下げて番号聞き出さないといけないんだから……」

 [しょうがないだろ……俺の社会的立場上、同じ番号をずっと使うわけにはいかないんだよ]

 そう……この友人、久志昴は、関東一帯に影響力を持つ久志組のトップだ。これほどの勢力を誇るのは、他の組がすべて消えてしまったからでもある。先ほど名前の出た西尾は、今は恋人のキヨミちゃんと二人で私立探偵をやっている後輩だ。なかなかかっこいいコンビだと思う。

「更屋敷のお嬢さんもそうだよ……まあいい……ところで車いっぱい持ってるだろ?……一台貸してくれないか……子どもたちをコミケに連れていこうと思って……」

 [まあ、いいけど……お前、免許持ってるよな?……もし警察に止められて車の出所を調べられたら、生かしておけないからな……]

 静かに人を脅すこの喋り方……まったく変わってないな。

「とっくに取ってるよ……心配しなくていい……それで、貸してくれるよな?……」

 [ファミリーカーならあるけど……夕方に取りに来ればいいよ……]

「ああ……あと、忘れてた……十七日に、星野の結婚のお祝いを兼ねた集まりを家でやろうと思ってるんだ。できれば来てくれないか……」

 [そうか……もう結婚式も近いな……旧友にもずいぶん会ってないし……あ、この!……リタ!……パパ、電話してるんだぞ!]

「え……」

 [あ!アキトおじさん!!……うちに来るの!?]

「おお!リタちゃん……久しぶりだな……声を聞く限り、ずいぶん大きくなったみたいだな……ママは元気にしてるか?」

 [うん!ママ、最近ずっとよくなってるよ……最近はみんなでピクニックにも行ったんだよ!!]

「いいなあ……おじさんも行きたかったなあ……」

 少し電話を奪い合うような音がして……

 [ごめんな……最近、毎日おじさんに会いたいって言ってるんだよ……]

「ああ……わかるよ、子どもってそういうもんだから……じゃあ夕方に行くよ……いろいろお願いすることもあるし……」

 [うん……夕方にな……こら!……リタ……]

 [またねー!!!!]

「ああ……また夕方に……」

 電話を切った……真夏の空が今にも顔を焦がしそうなくらい照りつけている。当然、今日は母校の夏服に着替えていた。半袖シャツに左胸の小さなポケット、少し薄手の黒いスラックス。

「みんな、それぞれ幸せに暮らしてるんだな……」

 菅原に会う前の自分なら、ため息をついてこう思っただろう。幸せを手にできないのは俺だけだ、と。

 でも今は菅原がいる……俺が一番大切に思っている人が。消えていた幸せが、またゆっくりと戻ってきているような気がする。

「これからも……この幸せを守っていかないとな……」

 夕方。和風の大邸宅。久志家。

「おじさん!!!」

 玄関を開けるなり、リタちゃんが全力で飛びついてきた。

「ちょっと!ずいぶん背が伸びたな……前は膝くらいまでしかなかったのに……」

「リタ!!そんなふうにおじさんに飛びかかっちゃダメよ……」

 リタちゃんは父親の言葉を一切無視した。肩によじ登って、そのままちょこんと座ってしまった。

「やったー!!背が高くなった!」

「ちょっと待て!……」

「なんの騒ぎよ……あら……どうしたのアキトくん」

 淡い青色の髪をした、体の弱そうな女性がリビングから出てきた。

「よ、スミちゃん……具合はよくなった?」

「うん……」

 彼女はバルちゃんの奥さん、久志澄だ。体があまり丈夫ではない……高校時代にバルちゃんの子を妊娠して退学することになったから。まだ若かったせいか、リタちゃんを産んでから体調が優れず、それからずっと入院生活が続いていた。

 でも、こうして歩いて話しかけてくれる姿を見ると、素直に嬉しかった。

「車を借りに来たついでに……姪っ子と遊んでいこうかと思って……」

「やったー!」

 リタちゃんの部屋へ向かおうとしたとき、組の構成員が片づけをしているのが見えた。

「前田さん……」

 筋骨隆々の知人の若者に声をかけた。

「子どもの世話って楽しいですか?」

 彼は何も言わず、中指を立てた……俺は笑いながら、リタちゃんの部屋へ上がった。

 ---

「ね、おじさん!……一緒に踊ろうよ!」

「踊り?……おじさんはちょっと体がついていかないかも……」

「じゃあ踊ろ!」

 バルちゃんが心配するのもわかる……若いパパは大変だな。リタちゃんがYouTubeでVTuberの動画を開いた。よくフィードに上がってくるミュージックビデオで……かなり有名な曲だろう。

「これ……ゲンキちゃんじゃないか……」

「おじさん、知ってるの!?」

「これだけ有名なVTuberを知らない人はいないよ……」

「さあさあ……構えて!……曲が始まるよ!」

 俺は動画のリズムに合わせてぴったり踊ってみせた。リタちゃんは目を丸くして……負けじと踊り始めた。

「サビが来た……ここでおじさんに勝つよ!!」

「できるもんならやってみな……」

「~キュート キュート キュート!~みんな一緒に腰を振って!~キュート キュート キュート!~揺れて揺れてシェイク!~キュート キュート キュート!~わたしはダンスのプリンセス~いち……に……エレガント ドライブ!!!!!」

 曲が終わった。

「はあ……はあ……信じられない……おじさんがあんなに上手いなんて……」

「当然だろ……でもリタちゃんも上手いよ……あんな早いサビを歌いながら踊れるなんて……」

「そうかな……」

 二人で並んで話していたが……なんていうか……体のあちこちが痛い……俺まだ二十五なんだけどな。

「歌手になりたいの?」

「うん……ミュージックビデオを見るたびに、歌や踊りにすごく感動するの……かっこよく踊ってる人もたくさんいるし……だからずっと練習してるんだ」

 歌いながら踊るというのはコンサート向きで、ミュージックビデオを撮るには踊りの練習が欠かせないわけだが……

「ね、リタちゃんさ……これだけ頑張ってるんだから……おじさん的には、リタちゃんはすごいと思うよ」

「本当に!?」

「本当だよ……おじさんは、できてもいないのに褒めるタイプじゃないからな……知ってるだろ?」

「ありがとう!……もっと頑張るね……」

 彼女は俺に笑いかけてくれた……踊り疲れていたのが嘘みたいに、さっぱり消えてしまったようだった。

 遊び疲れた後、家の人たちと一緒に夕食を食べた。前の組長だったおじさんにも会えた。相変わらず優しかった。

 それから車を取りに行ったのだが……

「これが、お前んちのファミリーカーか……」

「そうだよ」

 邸宅の玄関前に停まっていたのは、メルセデス・ベンツGLS……しかもMAYBACH 600、このシリーズで最も高い仕様だった。

「お前がヤクザだってこと、すっかり忘れてたよ……」

 生きてきた中で高級車は何台も見てきたが……一度も運転したことはない。

「まあいい……どこかにぶつけなければそれでいい」

「ドアを開けるのも怖いんだけど……」

 せっかく貸してくれたんだから乗るしかない。SUVだからファミリーカーとしては正しいが、内装はどう見てもファミリーカーではなかった。

「勘弁してくれ……エアコンをつけるくらいは許してくれよ……」

 エンジンをかけるだけで体が固まった。

「またねー!!おじさん!!」

「おう!!時間ができたら遊びに来るよ!!」

 そうして走り出した……

「……ママ……」

「何?」

「ねえ、大きくなったら……アキトおじさんと結婚したいな……」

「はあ!?!?」

「ちょっと……パパをそうやっていじめないの……」

「だってパパをからかうの、楽しいんだもん……」

「ちょっと待て!!パパをそんなに驚かせるんじゃない!!!」

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  • ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うこ   9:コミケで収益を上げる際の課題

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