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last update Huling Na-update: 2025-07-18 11:39:42

「誘うの上手になったね」

強引に組み敷きながら舌なめずりする。

ノーデンスに覆い被さりながら、ルネは長い睫毛を揺らした。

毎晩発情期の名は伊達じゃない……ノーデンスが顔を引き攣らせていると、ルネは耳朶に顔を近付け、甘噛みした。

「やっ!」

「君の言う通り、今日は“そういうこと”はしないよ。だからちょっと頂くだけ」

「頂くって……」

酷い表現だ。日に日に変態じみていく夫にため息が出る。

ルネの甘噛みは首筋から胸にまで及び、それなりに長く続いた。小さな痛みも長々やられると辛いものがあり、眉を寄せて訴えた。

「も、もういいだろ!」

「うん。ありがとう、もう満足」

オウム返しするルネの胸を推し、上体を起こす。その際、鏡に映った自身の姿に絶句した。

「お前ぇ……! ふっさげんなよ、キスマークだらけじゃねえか!!」

「ごめんごめん」

わずかな灯りを頼りに見ると、首元に赤い跡がいくつかついていた。久しぶりに何とも言えない怒りが脳天まで込み上げる。

「たまにはこういう束縛激しいプレイも良いね~」

「楽しんでんのはお前だけだっつーの!」

明日は襟元をしっかり隠さないと、レノアに突っ込まれてしまう。

ぶつぶつ文句を言っていると、不意にルネが身を乗り出してきた。

「ところで、彼……レノア君って、なにか訳あり?」

「へっ」

何だこいつ……読心術でも会得したのか?

レノアのことを想起してる時に彼の名を出され、露骨に動揺した。それをルネは訳ありと勘違いしたらしく、深刻そうに隣に座る。

「小国とはいえあんな若さでひとり航海してくるなんてちょっと不可解だし、やっぱり何か事情があるんだね? 私達が力を貸してあげられることはないかな?」

「いや、俺も詳しくは知らないよ。ただ数日はここで仕事するって言ってたから、泊まらせるだけでも良いんじゃないか? あと輩に狙われるのと、国の外交官になってるのはお前と同じで特別な力があるからだよ」

「えっ……私と同じ?」

ルネは驚いた顔で叫んだ。

「言ってなかったっけ? レノアも生まれながらに治癒能力があるんだよ。だから国で大事にされてないなら、むしろ厄介払いされてる可能性があるな。出先で人買いに狙われたり、事件に巻き込まれても構わない。なんて思われ痛ああっ!!」

まだ喋ってる途中だと言うのに、容赦ない手刀をくらい床に伏した。

「何すんだ! 家庭内暴力で訴えるぞ!」

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  • ある野望を話したら夫が子どもを連れて出ていった話   少年の善行

    ────今日ばかりは仕方ない。単独行動だ。眩い朝陽を浴びたノーデンスはいつものスーツに着替え、意気揚々と家を出た。日の出と同時に家を出る。そう、ルネはまだ夢の中だ。すぐに起きるだろうが、とりあえず無事に家を脱出できれば大成功である。 外出先のメモもテーブルに置いてきたし大丈夫だろう。もしかしたら一緒に行きたいと不満をもらしたかもしれないが、自由に動きたいのでできればひとりできたかった。今日は他国のコンテナ船が港に停る為、大勢の商人や運搬業が向かう予定だ。荷物の輸送については一切関わりがないものの、目的はちゃんとある。船にはフリーの商人も乗ってきている為、港湾の一角が大きな市場のようになる。そこでは民族や企業が最先端の技術を用いた品々が売られる為、非常に魅惑的だ。何ならまだ市場に出回っていないものや、数に限りのある一点物も安価で買うことができる。情報交換の場としてももってこいだし、商いをする者なら必ず顔を出すべき行事だった。宝飾品や織物、食料品に工芸品、新しい乗り物まで並んでいる。朝早くから大勢の人が集まり、港は賑々しさがピークに達していた。外交戦略として武器を出品している者を片っ端から回り、気になる製法の品を購入した。荷物は近くの店に預け、今度は息抜きとして市場に戻る。その国で何が流行っているのかは前に置かれた品でよく分かる。しかし本当に価値のある物は店主の奥に眠ってあるものだ。「そのペンは漆で塗られててね。職人が一本ずつ丁寧に作ってるんだよ。中には完成に半年近くかかったものもある」ちょうど書き物をする時のペンが欲しいと思い、文具が並ぶコーナーに立ち寄った。老齢の男性が穏やかな笑顔でひとつずつ説明していってくれる。試し書きをしていると、さりげなく持ち方を直された。「力強い筆致で、整った字を書くね。でもこのペンはもう少し先を立てて持つんだ。慣れるまで大変だと思うけど、慣れたら他のペンは使えなくなるよ」「へぇ……。触り心地も良いですね。これにしようかな」即断であと数本手にとると、男性は驚きながらも嬉しそうにお礼を言った。「ありがとう。もし機会があれば、またウチに来てくれ。君の筆圧に合わせたペンを作ってもらうよ」意匠を凝らした装飾はやはり気に入るものが多い。買い物の醍醐味は、その品をよく知る人間と話すことだ。その後もいくつか店を回り、西で一

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