剣に槍、弓、銃。武器が産まれたことで争いは増え、多くの命が失われた。時代が移るにつれ神術や呪術を扱う者も現れたが、そんな力を開花させるのはほんのひと握り。自分もそうだがせいぜい一国に五、六人いればいいものだ。火を出現させる程度のものから地形を変える神術まで、力の幅もまるで違う。大きな力を持つ者が革命を起こそうとしないのは、まだ武器の存在が抑止力になっているからだ。どれほどの神術を持ち得ていたとしても、大国が協力し合って兵と武器を用意すれば、世界の均衡そのものが危うくなる。資源も人も失われた土地など手に入れても仕方がない。どこの国もなにかひとつ、他所にはない資源を獲得している。隣のサンセン王国は農作、北のヨキート国は羽毛や木綿、絹などの織物。そしてこのランスタッド王国は武器生産。百年以上前に世界がひとつになったことで領土争いなどは無縁となったが、未だに武器の需要は高い。争いがなくなったのに武器がなくならないってのは本当に可笑しい。ランスタッドは元々鍛治屋が多い小さな町だったが、戦火の中生き残る為、他国から武器生産の依頼を受け続けた。その見返りとして大国から庇護され、町のものは誰も兵として招集されることなく、やがて世界の三分の一に近い領土を占める大国に成長した。誰も使わないはずの武器を造り続け、他国に輸出する日々。どの国も平和を謳い、しかし地下に巨大な研究施設を拵えている。人間という生き物の恐怖、醜さ……武器の存在は負の感情を象徴している。武器を生み出したことも、また失くすことができないのも、所詮は弱さ故だ。皆心のどこかでは分かっているが、決して口に出さない。けど自分は違う。自分の信念の為に王を敵に回す覚悟がある。ランスタッドの中央には巨大な城がある。王族だけでなく一部の貴族も住まうその城の最上階で、明るい銀髪を靡かせる青年がいた。白く大きなローブを脱ぎ、見晴らしの良いテラスへ出た。まだ夜明け前で、薄紫の空が果てしなく続いている。実質的には武器商人の最高権力者の青年、ノーデンスだ。 古くからこの地に住んでいた武器商人の一族であり、両親が病で亡くなった今では一族の長でもある。まだ二十六歳だが、鍛冶師達を取り纏めているのは理由があった。ノーデンスは高い神力をその身に宿しており、自身の気を込めることで精度の高い武器を造ることが可能なのだ。今では自分は
Terakhir Diperbarui : 2025-06-29 Baca selengkapnya