兄上、僕たちが最初に出会った日のことを覚えていますか。
僕が生まれて73日目の朝9時23分です。僕は乳母であるスカーレット伯爵夫人に抱っこされ、ゆらされながら西の庭園を散歩していました。庭園には早朝少し降った雨の雫に濡らされた赤いバラが所狭しと咲き誇っていました。そよそよと優しい風が花の甘い香りを僕の鼻元につれてきてくれて、僕は何か新しい出会いの予感を感じていました。ぽかぽかした初夏の陽気に少しうとうとと瞼が重くなっていた時のことです。
美しいバラのアーチをくぐって、燃えるような赤い髪に太陽のような暖かい眼差しをした男の子が現れました。その暖かく優しい眼差しが父上にそっくりで、僕はその男の子が自分の兄上に違いないと思いました。「その子、俺の弟だよですよね。抱っこさせてください。」優しい兄上の声が、僕のまだ少ししか生えていない髪をくすぐりました。「僕の思った通り、彼が僕の兄上だ。」
僕は自分の予想が当たったことに嬉しくなり、これから兄上と過ごす日々に胸を膨らませました。スカーレット伯爵夫人に、兄上に僕の抱っこを許可するようにと視線を送りました。「申し訳ございません。第一皇子殿下、まだアラン皇子殿下は生まれたばかりで小さくか弱いのです。何かあったら困りますので、抱っこはお控え頂ければありがたいです。」
彼女の無慈悲な言葉に、僕は落胆の色を隠せませんでした。皇族に生まれながら、感情に流され表情管理を忘れてしまったことを恥じました。「兄上お待ちください、是非抱っこしてください。」
兄上が寂しそうに、背中を向けて去っていくのを見て僕はいたたまれない気持ちになりました。次にお会いできるのがいつになるか分からず、今しかないと我を忘れ力の限り叫びました。しかしながら、言葉にならない声が響くだけで、とても歯がゆかったのを覚えております。俺の名前は乙部雷、今のはアラン君からの手紙21通目でライオットとの出会いが書かれたシーンだ。
レオハード帝国のあるこの世界のライオット・レオハードに憑依するのは2度目だ。ライオッ兄上、僕たちが最初に出会った日のことを覚えていますか。僕が生まれて73日目の朝9時23分です。僕は乳母であるスカーレット伯爵夫人に抱っこされ、ゆらされながら西の庭園を散歩していました。庭園には早朝少し降った雨の雫に濡らされた赤いバラが所狭しと咲き誇っていました。そよそよと優しい風が花の甘い香りを僕の鼻元につれてきてくれて、僕は何か新しい出会いの予感を感じていました。ぽかぽかした初夏の陽気に少しうとうとと瞼が重くなっていた時のことです。美しいバラのアーチをくぐって、燃えるような赤い髪に太陽のような暖かい眼差しをした男の子が現れました。その暖かく優しい眼差しが父上にそっくりで、僕はその男の子が自分の兄上に違いないと思いました。「その子、俺の弟だよですよね。抱っこさせてください。」優しい兄上の声が、僕のまだ少ししか生えていない髪をくすぐりました。「僕の思った通り、彼が僕の兄上だ。」僕は自分の予想が当たったことに嬉しくなり、これから兄上と過ごす日々に胸を膨らませました。スカーレット伯爵夫人に、兄上に僕の抱っこを許可するようにと視線を送りました。「申し訳ございません。第一皇子殿下、まだアラン皇子殿下は生まれたばかりで小さくか弱いのです。何かあったら困りますので、抱っこはお控え頂ければありがたいです。」彼女の無慈悲な言葉に、僕は落胆の色を隠せませんでした。皇族に生まれながら、感情に流され表情管理を忘れてしまったことを恥じました。「兄上お待ちください、是非抱っこしてください。」兄上が寂しそうに、背中を向けて去っていくのを見て僕はいたたまれない気持ちになりました。次にお会いできるのがいつになるか分からず、今しかないと我を忘れ力の限り叫びました。しかしながら、言葉にならない声が響くだけで、とても歯がゆかったのを覚えております。俺の名前は乙部雷、今のはアラン君からの手紙21通目でライオットとの出会いが書かれたシーンだ。レオハード帝国のあるこの世界のライオット・レオハードに憑依するのは2度目だ。ライオッ
「お父様、お母様、彼は純粋で優しくて素晴らしい子です。でも、再教育させてください。」私は心の中で彼の両親に祈った。彼は良い子だが今のままではそれ止まりになってしまう。あと、思ってもない出来事が発生した時の耐性が弱すぎる。固まって何も言えなくなるのではなく、そんな時こそハッタリを使ってでも相手を説き伏せねばならない。「臨時収入が入ったから、旅費は私が払うね。あと予定も私が組むからガイドブックはいらないからね。」三池が私の強引さに呆気にとられているのが分かった。あとで、エレナ・アーデン事件の収支報告をして、その利益の使い道として彼に投資することを伝えよう。そうしないと、彼氏ヅラして自分が支払うとか言ってきそうだ。私はあのお金を彼に使いたいのだから、それは困る。観光に行くわけじゃないから、ガイドブックもいらない。そもそも、ガイドブックは来て欲しい店や観光地がお金を出して掲載していたりする。本当に売れている店はガイドブックに載せたりしない。あれは情弱の使うもので、私たちの修行にガイドブックは不要だ。三池は彼氏と彼女のラブラブ旅行でも妄想しているのだろう。旅行の話をしてから何だかモジモジしている。これは私と彼の修行の旅でそんな甘い旅行では全くない。なんだか彼は少女漫画のうぶなヒロインみたいな反応をする。それが、私の嗜好に合致しものすごく彼をいじるのが楽しい。「テーマパークは子供が生まれたら行こうね。」私は彼に第3の甘い彼女声で伝えた。もはや、彼に第3の声を使うことが常態化している。深層心理で余程私は彼を虜にしたいらしい。乙女な反応が面白くてついやってしまってしまうのもある。テーマパークは子供にとっては、いろいろな経験をさせる意味で有効だろう。感受性を育てる時期、情操教育は必要だ。彼は顔を赤くして恥ずかしそうにしている。年頃だから、よからぬ期待をしているのだろう。まあ、どうでもいい。実際、分刻みの視察が
「大阪に旅行に行きたい。」私が言った言葉に彼は驚いたような顔で返してきた。「夏休みに。いいねー。大阪スタジオパークいきたい。」本当にのんびり屋、よくこの大都会東京で暮らせてきたものだ。島時間はそろそろ終了にしろよ。私たちは、未熟な自分に向き合う修行の旅にすぐにでも出るべきだ。「そんなの待てないよ。今週末には行こう。」彼が真っ赤になって絶句した。私は、彼が私の声が好きと言ったことを思い出した。私は今、私の第3の声を使っている彼女っぽい可愛い甘い声だ。今、思い返すと私は三池に対して3種類の声を使っていた。私の第2の声、仲良くする気はない凛とした涼しい声で中高6年間で使用。第3の声、彼女のような可愛く甘い声で三池の前で現在使用。第4の声、甘さを抜いた友人声で現在の人間関係で使用頻度が高い。第5の声、突き放すようなブリザードボイスで邪魔者を排除する時に使用。彼は2の声と3の声と5の声の3種類を知っている唯一の存在だった。精々私が1人の人間に対して使うのは2種類の声だからだ。私は彼に対して第2の声を高校時代使っていた、あまりにしつこい時は第5の声を使った。でも、彼に惹かれはじめてからは第3の声を使っている。彼が私の声が好きだと言った時、私は自分の地声のことだと思ってしまった。今思えば、私の地声を聞いたことがあるのは私しかいない。妄想しながら一人言を言う時など一人の時発する私の地声は極めて普通だった。彼が好きだといったのは、私の第3の声だろう。私は有事の際にはこの声を使っていた。兄やクラスメートの男に何か理不尽な要求を頼みたい時だ。男は視覚優位と思っていたが、最近はアニメの影響で声フェチが増えているようだ。それは声を使いこなせる私にとっては非常に好環境だった。私はそんな有事にしか使わない第2の声を彼に惹かれはじめてから常時使っていた。深層では彼を振ってしまった自分を再び好きになって欲しくて仕方な
日本に帰ったら、俺は『異世界クラッシャーえれな』を書いて出版社に持ち込むつもりだ。主人公は現役東大生松井えれなだ。名前を少し変えようかと思ったが、主人公「えれな」という名前にすることで俺は愛情を持って執筆できていた。名字を変えて松井えれなの名前を変えて、松田えれなにしようか悩んだ。松田は俺の大好きな野球選手の苗字で、聖域なので使いたくなかった。松井も某有名野球選手の苗字だと気づいたが、松井えれなはどこにでもいそうな名前だと思いこのままにしようと思った。現役東大生に松井えれながいたら迷惑をかけるかもしれないが、そもそも東大は女が少ないから確率は低そうだ。「もしかして、お嬢様か?松井えれなは。」元々お嬢様であるなら素地があるなら、エレナ・アーデンの真似ができるかもしれない。演技は女優の線もあるが、酸いも甘いもしったような女優がライオットと脱獄を試みて正体を明かす愚かな行動はしなそうだ。「社長令嬢とか、大病院の娘とかにするか。社長令嬢はラノベに多いから、大病院の娘設定にしよう。」病院は過労やメンタルの病でお世話になっていて、身近な存在になり俺は松井えれなを大病院の娘で現役東大生の設定にした。自分より明らかに優秀な人間を書くのは難しい。23歳にもなれば分かる、世の中には生来の能力差がある。東大に入るような人間は、元々の能力が他者とは異なっている。思考回路や物事を分析する能力が全く違うのだ。「俺だって地元じゃ神童と言われて来たじゃないか。」俺はスペックの高すぎる松井えれなという主人公を書いてやることで失った自分の自信を取り戻せる気がしていた。東京に出てくるまで、地元では無双状態だった。ルックスもそこそこ、学年でもトップの成績しかとったことがなかった。それが、井の中の蛙、大海を知らずということを東京に出てきて知った。自分は特別でもなんでもなく量産型だと分かってしまったのだ。自信を失うと落ちていくしかなかった。就職してコケにされ、彼女に捨てられコケにされた。損
エレナ・アーデンは半日でファミリーカーが購入できるくらいの金額を使っていた。返品できるものは返品、エステもクーリングオフした。その他のものはネットオークションで売った。その結果、なんと12万円程の黒字を出した。私はリース子爵領での演劇の登場人物紹介を読んだ時エレナ・アーデンが12歳で実業家として成功しているとか絶対あり得ないと思った。アランがイケメン皇帝で人気があるから、彼女が嫉妬されないように彼女の演劇の紹介文を盛ったに違いない。半端な女じゃ、紫色の服を着たアランファンが許さない。存在し得ないような、とんでもないハイスペな女じゃなきゃカップル推しなどできない。そこまで計算できるなんてさすがアランとしか思っていなかった。エレナ・アーデンはおそらくかなりの商才がある。だから、12歳で実業家として成功しているのは本当なのだろう。彼女は初めて来た異世界で半日で黒字を出したのだ。いわゆる一流をしっているがゆえの目利きなのだろう。返品できなかったものを、ネットオークションで売ったらみるみる高額になった。あっという間に買い手がついて売れた。クレームが来たら嫌なので1回使用したことを明記して、少しの汚れもアップで写真に撮ってあげた。それでも、新品の購入時より高値がつくのはどういうことなのだろう。私の持っている常識では全く理解ができなかった。エレナ・アーデンの部屋には数えきれない宝飾品があった。私はそれを見て、彼女を浪費家で金がかかりそうな女だなと思っていた。今思うと、それらの宝飾品はお店みたいに綺麗に保管してあった。あれらの宝飾品もどんどん値があがったりするのではないだろうか。いわゆる高度なセレブのタンス預金みたいなものだ。よくセレブが子供には一流のものを買い与え、一流を知ることが大切だと言っているのをバカにしていた。そんな小さい子になにがわかるんだ無駄金使いやがって、寄付でもしてろと毒吐いていた。でも、一流のものに幼い頃から接していると、一流を見る目が本当に
小学生の頃、私は漫画が好きだった。読むのはもっぱら、毎回バトルする少年漫画。誰が一番強いのかを争うのを読むのが楽しくて仕方なかった。友達が、感動すると言って少女漫画を貸してくれた。全く面白くなかった。恋愛で頭いっぱいの登場人物がみんなバカに見えた。地球を守るため戦う少年漫画の主人公に比べ、スケールが小さく底辺校が舞台なのかとバカにしていた。今なら理解できる。私は幼かったのだ、なぜ毎回似たようなバトルを見て喜んでいたのだろう。今後の人生で自分が地球を救うバトルをする可能性があるとは、思っていなかったはずだ。少女漫画は面白い、恋愛は最大の娯楽だ。それに、小学生にして気がついていた私の友人は偉大だったのだ。ライオットに恋していた時は苦しいばかりで気がつかなかったが、三池との恋は娯楽でしかない。今なら、壁ドンをする俺様男の気持ちが分かる。ときめかせて、赤くなって動揺する相手の反応をみるため。30字以内で答えられた。もし、将来Fラン大の入試問題を作る機会があれば出題してみよう。私があの三池勝利に惚れているのだ、世の中何があるかわからない。なんか、壁ドンでも床ドンでもとにかくドンドコして彼を動揺させたくてたまらない。「俺、男だぜ。」みたいなセリフを吐く男の気持ちも分かった。小学生の頃少女漫画を読んだ時は、一見すれば分かる事をワザワザ言ってこの男はバカなのかと思っていた。今度、三池を密室に連れ込めるような場面があったら言ってみよう。反応が今から楽しみだ。私に怯えているようだけど、そんな態度をしていたらもっとセクハラしてやるんだから。私の彼氏になったようだから、何をされても訴えるんじゃないわよ。「いつか、私の終わってしまった初恋の話をさせてね。」一瞬にして、彼の顔が真っ青になった。変色生物か何かなのだろうか、あちらの世界で2ヶ月も王族だったのに表情管理が全くできていない。彼は動揺しているのが丸わかりな、震えた声