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お粥をくれた夫にさようなら
お粥をくれた夫にさようなら
Author: アカリ

第1話

Author: アカリ
会社で20億のプロジェクトをまとめた後、ボーナス600万を手にして、新車に乗り換えようとしていたところだった。

社長である夫の宗像研人(むなかた あきと)が、みすぼらしい粥の入ったどんぶりと、【ボーナス0円】と書いている給与明細を持って、私、須藤安奈(すどう あんな)の前に現れた。

「すまない、安奈。会社の赤字が本当に深刻でね。僕の手作りのお粥を君がプロジェクトをまとめたご褒美にしよう。資金繰りが戻り次第、必ず新車を贈るから、ね」

ところがすぐに、研人の後輩である女性、紀野愛雲(きの あいも)のSNSを見て、いつもはケチな研人が彼女に6000万のボーナスを特別に承認し、さらに4000万のBMWの新車を贈ったことを知った。

【業績が良くなくても、先輩が私を思いっきり甘やかしてくれるもん】

お金がないのは、ただ研人が私のために金を使いたくないだけの嘘だった。

私は騒がず、黙って彼女の投稿にいいねとコメントを残した。

【末永くお幸せに】

間もなく、研人から電話がかかり、焦った様子で言った。

「変に思わないでくれ。愛雲の母親が癌でね、同窓のよしみで特別にボーナスを承認したんだ。

車を買ったのも、病院への往復の時間を短縮して、仕事に専念できるようにするためだ。すべて会社の利益を考えてのことだ。

君が余計なことをするから、みんなに愛雲が僕たちの結婚に割り込む悪者だと思われてしまう。すぐにコメントを消して誤解を解いてくれ。前に君が行きたいと言っていた新婚旅行、一緒に行ってやるから」

私は【ボーナス0円】と書いている給与明細を破いた。

「もう行かない。市役所に離婚届を出しに行きましょう」

私の言葉が終わると、研人は一瞬固まり、すぐに不満のこもった問い詰める声が電話の向こうから聞こえてきた。

「そんなつまらないことで、僕と離婚するというのか?君にボーナスはやれなかったが、ご褒美はやっただろう。

それは社長である僕が、自ら君のために作ってやった粥だった。他の者がいくら求めても得られないものだぞ。ありがたく思え」

彼がどんなに素晴らしく言おうと、それはただの普通の粥にすぎない。

彼は以前、会社の業績が悪いから支給が遅れると泣きついた。

私は彼が自ら作ってくれたこの粥が、ボーナス支給遅延の埋め合わせなのだと思っていた。

なのに彼は、この粥で私が徹夜で働き、必死に稼いだ600万のボーナスを相殺しようだなんて。

「あなたの一碗のお粥が600万の価値があるの?そんなに高いなら、紀野さんに何碗か作って、病院に持たせて、彼女の母の医療費の代わりにすればいいのに」

研人はこの言葉を聞いても、少しも恥じる様子はなく、むしろ鼻で笑った。

「やはり愛雲のことで、そんなに駄々をこねているのか。

何度も説明しただろう、愛雲の母親が病気で、彼女は急にお金が必要なんだ。雇い主として、当然できる限りの手助けをする。

それに、社員を思いやるというのは、君が教えてくれたことだ。その通りにしただけなのに、なぜ怒る?

それなのに余計なことをして、愛雲はネットで叩かれ、今はトイレに隠れて泣いている。

すぐに彼女にちゃんと謝りなさい。他の社員に、君が権力を私物化して新入社員をいじめていると思われてはいけない……」

彼が言い終わらないうちに、私はいら立って電話を切った。

社員を思いやるだなんて、私を誤魔化すための嘘にすぎない。

彼は今日、重病の父親を介護しなければならない社員をクビにしたばかりだ。

今、その社員は目を赤くしてみんなに別れを告げている。

同じ境遇なのに、全く異なる扱いを受けている。

唯一の違いは、この一般社員が、研人の愛人ではないということだ。

この点で、私も同じだった。

愛雲以外の人間は、彼にとっては少しも心を砕く価値のない、価値がなくなればすぐに蹴り飛ばされる、ただの道具でしかない。

そういうことなら、私が未練を持つこともない。

手持ちのタバコに火をつけ、私はライターの火を消し、同時に研人への最後の愛も消し去った。そして振り返らずに自分の席へと向かった。

「どんなに頑張ったって無駄なんだよね。残業して徹夜してヘトヘトになっても、私が甘えて可哀想なふりをして手に入れるものの方がずっと多いのよ」

中に入ると、愛雲の挑発する声が聞こえてきた。

彼女はだらりとリクライニングチェアに横たわり、BMWのキーを指の関節で回している。

彼女は同僚たちに囲まれていた。

肩を揉んでもらう者もいれば、お茶を差し出す者もいる。

愛雲は満足そうな表情を浮かべ、私と目を合わせて挑発的に言った。

「須藤課長、羨ましい?それならひざまずいてお辞儀をして、私を師と仰ぎなさい。そうすれば、男を手なずける術を教えてあげるわ。あなたが汗水垂らして働くより、ずっと稼げるからね」

私はスマホを握りしめ、この醜い顔を研人に撮って見せてやりたいと思った。彼が思い描く可憐でいじらしい女が、どれほど醜い顔を晒しているかを。

しかし考え直して、やめた。

研人は馬鹿ではない。愛雲の計算高さに気づいていないはずはない。ただ深く愛しているから、許しているのだ。

私が動かないのを見て、彼女たちは私が怖気づいたと思ったらしく、さらに好き放題に嘲笑った。

「あの人が愛雲さんに比べられるわけないでしょ?会社中、誰もが知ってるのよ。彼女はただの玉の輿に乗っただけの金目当ての女で、今の立場は全部社長のおかげだって。

彼女のような役立たずをすぐにでも捨てないのが、社長がまだ情けをかけている証拠よ」

「そうそう、愛雲さんこそが社長の本当に愛してる人なの。居候のくせに、分をわきまえてさっさと席を譲るべきよ」

私はトップセールスなのに。

彼女たちは愛雲に取り入るために、よくもそんなでたらめを言えるものだ。

しかし、彼女たちの言うことが一つだけ正しい。

愛雲こそが研人の本当に愛してる人なのだ。

以前、私が40度の熱を出して彼に電話をすると、彼は愛雲と一緒に、下痢をした彼女の猫を動物病院に連れて行っていた。

「安奈、あれは愛雲の父親が残した遺品なんだ。それに彼女はまだこの土地に慣れていないし、まずは彼女に付き添うよ。用事が済んだらすぐに帰って君のそばにいるから」

その後、彼は私の手柄を愛雲に与え、こう言った。

「彼女は来たばかりで、自信とやる気が必要なんだ。君がこの業界に入ったばかりの時も、もしこんな先輩がいてくれたら、あんなに遠回りしなくて済んだはずだ。

今は君が一人前になったんだから、若い者に助け舟を出してやることを覚えなさい。安心しろ、ボーナスや歩合はきちんと君に出すから」

かつて私は彼の言葉を信じていた。

本当にただの普通の気遣いだと思っていた。

このボーナスの件で、初めて気づいた。

彼は以前、今回のボーナスは会社に納めなくていい、稼いだ分は自由に使っていいと約束していたのに。

私が10年乗って壊れかけていた車がちょうど故障し、新車に乗り換えるために一生懸命働いた。

1か月必死に働き、毎日車を受け取る日を楽しみにしていた。

なのに――最後に手に入れたのは、冷めた白米の粥だけだった。

一方、彼女、愛雲は毎日遅刻しては早退し、プリンターさえ使えない役立たずなのに、6000万のボーナスと高級車をただで手に入れた。

なんて皮肉で、なんて滑稽なことか!

目の前の同僚たちはまだ騒ぎ立て、席を譲れと迫っている。

私は静かにうなずいた。

「いいよ、欲しいなら、あなたにやるわ」

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