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この命はここで終わる、来世も二度と会わない
この命はここで終わる、来世も二度と会わない
作者: 南杏

第1話

作者: 南杏
死んだことにして3年、ようやく平穏な日々を手に入れたと思った矢先、朝川知尚(あさかわ ともひさ)と朝川春一(あさかわ しゅんいち)が私、滝山由依(たきやま ゆい)の前に現れた。

なんとかしてあの親子から逃れようと、死に物狂いで暴れ、泣き喚き、しまいには死んでやると口走ったこともある。

けれど、7歳の息子春一が私の母の人工呼吸器に手をかけたその瞬間、私の必死の抵抗は音を立てて崩れ落ちた。

かたわらに立つ知尚が、声を震わせながら私に迫る。

「由依。お前の母親を窒息させるか、俺の妻に戻るか。選べ」

怒りで全身が震えた。それでも私は、言われるがまま彼と籍を入れ直し、復縁するほかなかった。

見慣れたはずの邸宅に、再び足を踏み入れる。こうして私は、朝川家で誰よりも「完璧な良妻賢母」を演じる女になったのだ。

義妹・滝山鈴美(たきやま すずみ)の機嫌が悪く、知尚がそばについていなければならない日は、私が胃に穴が空いて手術を受けるほど苦しんでいても、彼に電話をかけることさえ許されなかった。

息子が偏食でわがままを言って、鈴美の手料理が食べたいとねだれば、私は文句ひとつ言わずに鈴美を迎えに行き、家に住まわせた。

私の誕生日でさえ、鈴美はふいに涙をこぼしてこう言ったものだ。

「お姉ちゃん……羨ましい。こんなに素敵な旦那様とお子さんに恵まれて。私なんて、まともな誕生日プレゼントをもらったことすら一度もないのに」

私はためらうことなく、手首から赤い勾玉を連ねた腕輪を外し、彼女の手に握らせた。

艶やかな赤い勾玉が連なる腕輪は、鈴美の白い手の中でひときわ鮮やかに映えた。

その瞬間、知尚の目の色が変わった。彼は私の手首をつかむと、怒りを押し殺した声で言った。

「由依、それは俺がわざわざ遠い山奥まで足を運んで、お前の無事を祈りながら神社で授かってきたお守りだぞ」

空気が一瞬にして凍りついた。

鈴美は慌てて、握っていた腕輪を返そうとした。

「ごめんなさい、知尚さん。これがふたりの大切な証だなんて知らなくて……すぐお姉ちゃんに返すわ」

そばに立っていた春一が、幼い顔をこわばらせて声を張り上げた。

「ママ、大事なものだって知ってて、わざと鈴美さんに押しつけたんでしょ!恥をかかせたかったんだ!ひどいよ!」

知尚は疲れきった目で、じっと私を見つめた。

「由依。いったいいつまで、こんなことを続けるつもりだ。

せっかく連れ戻したんだ。お前とちゃんとやり直したいと思ってる」

馬鹿げている。心底そう思った。

これまで鈴美が何かを欲しがるたび、渡すのが少しでも遅れれば、必ず仕返しされてきた。

今度は素直に従ったというのに、それでも彼は満足しないというのか。

私は振り返り、指から、知尚に贈られたばかりのピンクダイヤの指輪を外すと、鈴美の前に差し出した。

「腕輪だけじゃ足りない?だったら、これもあげる」

知尚は瞬時に青ざめた。彼は乱暴に私の手を振り払い、テーブルの上の誕生日ケーキをひっくり返した。

生クリームが私のスカートに飛び散り、陶器の皿が砕け散って床に散乱した。

「由依。そうやって当てつけのように俺の心をえぐるのが、そんなに楽しいか?」

「そんなつもりはないわ」

知尚はぎゅっと目を閉じ、こみ上げる怒りを無理やり抑え込んだ。

「お前がまだ、あの時のことを恨んでいるのは分かってる。鈴美を先に救急車に乗せたことを。

けどあの時、あいつは大量出血で、危うく助からないところだったんだ。

この数年、俺はずっと、お前に適合するドナーを探し続けてきた。あの悲劇を二度と繰り返したくなかったからだ。

由依、もう意地を張るのはやめて、俺とちゃんとやり直してくれないか」

私は投げやりにうなずいた。

春一が勢いよく立ち上がり、怒りをぶつけるように言い放った。

「パパはちゃんと謝ったのに、なんでまだそんな冷たい顔してるの?

おばあちゃん以外、家族の誰にも好かれないのも当然だよ」

その一言が、不意に、針のように胸に突き刺さった。

私は冷たく笑った。

「ちょうどいいわ。おばあちゃんを除いて、あなたたち全員、こっちも誰ひとり好きじゃないから」

知尚の体がびくりと強張り、眼差しが底冷えするほど冷たくなった。

「そうか、よく分かった……お前が、何もかもどうでもいい、誰のことも好きじゃないと言うなら、今日から俺と鈴美が主寝室で寝る。お前は1階の使用人部屋に移れ」

私は言い返すこともせず、静かに背を向けて階段を上った。

背後で春一が両手を叩き、はしゃいだ声を上げるのが聞こえた。

「やった!これでやっとパパと鈴美さんと、毎日一緒に寝られるー!」

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