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4話

last update 公開日: 2026-07-18 19:48:43

(H道の朝日川市って、あいつらが住んでるところじゃないか?)

「ねえ、ねえ、パパー!早く僕に買ってきてくれたお土産見せてー!」

そう、司の手を掴み、ブンブンと振ってせがむ息子に、彼は、

「うるさいなっ!ちょっと黙ってろ!」

と言って、その手を振り払うと、急いでテレビへと駆け寄った。

残された息子は、父のただならぬ様子と、生まれて初めて、父からぞんざいに扱われたことへの驚きから、泣き出してしまう。

そんな息子のただならぬ泣き声を聞きつけ、母である彩花は慌ててドレッシングルームから駆けつけると、

「流央、一体どうしたの?何で泣いてるの?」

流央は司を指差しながら、

「パパが僕に痛いことしたの!僕のこと怒った!僕何も悪いことしていないのに!」

実際にはそんなに痛くはなかったものの、母親には心配してほしくて、少し大げさに伝えた。

泣きながらそう訴える息子に、彩花はまさかと思いながら、司に目をやった。

彼が自身と同じく、息子のこともどれほど大切にしてくれているかは、誰よりも彩花が良く知っていた。

そんな彼が、息子に声を上げるなど信じられなかったのである。

だが、司は、そんな妻にも息子にも目をくれず、ただただ食い入るようにそのニュースを見つめていた。

そして、その頭の中では絶えず、

(頼む、どうか。どうか人違いであってくれ)

そう、切に願っていた。

しかし、そんな司の願いは無情にも届かず、

「ヒグマに襲われたと見られる遺体は、この家に住む清川真子さんと、その子供たちである双子の叶多くんと明希ちゃんのものであることが、その後の警察の調べにより判明しました。」

そう女性キャスターが読み上げると共に、テレビの画面には、規制線が貼られた見覚えのある家と、真子と双子の子供たちの写真が映し出された。

ヒグマに襲われたのが真子たちだっと知るや否や、

「うそだ。うそだ、うそだ、うそだー」

そう、取り憑かれたように司は呟く。

そんな司を他所に、さらにアナウンサーは、「また、この清川さん親子の住宅の敷地内で、遺体として発見された男性の身元も同時に判明しました。なお、この男性は清川さん親子を襲ったヒグマに襲われて亡くなったわけではなく、男性の胸元には刃物のようなもので刺された後と、この男性の遺体の近くに刃渡り三十センチメートルもの刃物が転がっていたことから死因は刃物にさされたことによる失血死とみられています。そしてこの男性の身元ですが、男性はT都の瑞鳳市に住むー」

と、アナウンサーが言い終わらない内に、司は、

「くそっ!!!」

と言って、目の前にあったテレビを力任せになぎ倒す。

未だかつて、こんな荒れ狂った様子の司を見たことのなかった彩花と流央は、恐怖から本能的にお互いに抱き合うと、司が落ち着くのを怯えながらも見守った。

そんな司は両手で顔を覆うと、

「こんなことなら手元に置いておくんだった。お前らがいないなら、俺は。俺の生きる意味なんて・・・」

そう震える声で言うと、

「真子、明希、叶多ー」

と、力なく三人の名前を力なく呟いた。

と、司が急に顔を上げる。

彼のその虚な目にはもはや何も映ってはいないかのようで、ただ暗い影を落とすばかりだった。

そんな状態のまま、彼はふらふらとリビングのドアへ向かって歩いて行く。

リビングから出ようと、ドアノブへ手を掛ける司の背中に向かって、彩花は心配そうに、

「司?」

と、声を掛けたのだが、彼は顔をこちらに少し向けただけで、それ以外は何かを言うそぶりもなく、ドアノブを捻るとリビングから出て行った。

それから、彼がそのまま玄関のドアも開けて外へと出て行った音が聞こえてくる。

取り残された母子は、自身らが置かれた状況が飲み込めず、呆然とした様子で立ち尽くしていた。

すると、不意に外から車のブレーキ音と何かがぶつかったような激しい衝撃音が聞こえてくる。

瞬間、何かに気づいた彩花はものすごい形相を浮かべると、息子を置いてその場から走り出した。

残された流央は、なすすべもなく、ぽかんと口を開けたままその場に立ち尽くしていた。

付けっぱなしだったニュース番組からは、

「さて、そんな今日は何の日だか、皆さん分かるでしょうか?そう!今日の夜はなんと、ペルセウス流星群が見られるんですよね〜!風もなく、雲もほとんどない今日は、ペルセウス流星群がよく見えると思いますので、皆さんもぜひぜひ見てみてくださいね〜!」

と、この状況とは似つかわしくない、明るい話題が流れてくるのであった。

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