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第20話

Author: パクっ
二人はすぐに出発した。

夜空には、色とりどりの光が天の川のようにたゆたい、様々な姿に変わる。

防寒着に身を包んだ琴音は、凍った湖の上で白い息を、夜空に吐き出していた。

「寒い?」

晴臣は背後から琴音にふんわりとマフラーを巻きつけ、その指先には心地よい温かさを帯びていた。

琴音は首を横に振ると、空で舞い踊るオーロラに感嘆の声を漏らす。

「こんなに美しかったのね」

「君の描く絵より綺麗?」と晴臣は冗談めかして言ったが、風の音に少しだけかき消された。

「絵とはまた違う美しさかな」と、琴音が笑いながら振り返ると、晴臣の優しい視線とぶつかった。

「絵は想像の世界、今目の前にあるのは本物の世界。ありがとう、晴臣……」

晴臣は微笑み、そっと琴音の手を取って少し離れた場所にある小屋へと歩き出す。

薪がきれいに積まれた小屋の前に、吊るされた風鈴が風に吹かれて、心地よい音色を響かせていた。

「目をつぶってて」晴臣が内緒話のようにそっと囁いた。

琴音は言われた通りに従い、ひんやりとした空気の中で長い瞼をそっと閉じる。

再び目を開けた琴音は、目の前の光景に息を呑んだ。

小屋前の雪
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    式場として広い庭を貸し切った。きらびやかなアーチなどはなく、友人たちが手作りしてくれた絨毯だけが敷かれていた。ありきたりな曲は流さず、ギタリストに軽快な曲を奏でてもらう。招待したのは、海外で出会った大切な友人20人ほど。琴音は自作のドレスを纏っていた。サテンのシンプルなドレスには蝶の羽を刺繍し、歩くたびに光の粒が流れるように反射する。彼女は祝福のなかを通り抜け、新郎を待った。仕立ての良いライトグレーのスーツを着た晴臣が近づいてくる。琴音はふと、ギャラリーで初めて会った時のことを思い出した。あの時の晴臣も、今と同じ優しい笑みを浮かべていた。晴臣が自分の心にそっと入り込んだのは、あの時だったのかもしれない。「緊張してる?」晴臣はそう言って立ち止まると、琴音の髪を優しく撫でた。首を横に振った琴音だったが、晴臣に指輪をはめてもらう時は、少し指先が震えた。オーロラの下でプロポーズの際に贈られた指輪よりずっとシンプルなものだったが、晴臣の手ではめてもらうことによって、かけがえのない意味を持つ気がする。二人の指輪が重なり、琴音はふと笑みをこぼした。「はい、誓います」はっきりとした自分の声が、琴音の耳に届く。その瞳には、どんな光よりも眩しい輝きが宿っていた。晴臣が身を屈めて琴音を抱き寄せる。そっと寄り添うその口づけは、温かく誠実なものだった。会場から拍手と笑い声が聞こえてくる。出席した友人が目元を拭いながらつぶやいた。「本当によかった。この日をずっと待ってたんだから」琴音は晴臣の腕の中で、彼の香りに包まれながら、ふと思った。かつて胸が張り裂けるほど苦しんだ日々も、その痛みのすべてが、この瞬間の幸せへとつながっていたのだと。暗闇を抜けたあとの日差しは、こんなにも暖かい。会うべき人と出会えたことが、こんなにも幸せだなんて。友人たちが式の様子をSNSへ投稿すると、思わぬ形で国内のメディアまでそのニュースが届いた。見出しには【ファッションデザイナー二宮琴音、海外で挙式。相手も有名なキュレーター】とあった。写真のなかで満開の笑みを浮かべる琴音。指先には、小さな指輪がキラキラと光っている。朔弥はその写真を新聞記事の中で見つけた。だれもいない静かな部屋で、片手にはタバコを挟み、やつれ果てた

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