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兄貴のほほ笑み5

Author: 相沢蒼依
last update publish date: 2026-06-16 07:01:46

***

兄貴が部活を終えるまでの時間を使って、この間女子トイレに仕掛けた盗聴器の中身を確認すべく、目立たないであろう図書室の隅の席で聞いていた。

(前々回と前回は空振りに終わったけど、今回はどうだろう……)

期待を胸にイヤホンから流れる女子の会話を耳にしつつ、机の上に広げたノートにその内容を端的に書き記した。僕の姿を傍から見る分には、熱心に勉強しているように見えるだろうな。

いろんな女子からもたらされる噂話や愚痴を聞いている最中に、衝撃的とも言える話は突如はじまった。

早口でまくしたてる甲高い声に反応し、相槌する者は僅かだったが、信じられない内容にめまいがしてきた。どうにもメモする気にもなれず、眉間をつまみながら聞き入る。

『黒瀬先輩をモノにできるまで、間違いなくあと少し。だって私に夢中なんだから』

『イケメンばかり狙って、ホントずるいよね。梨々花が羨ましい』

『梨々花ってば、中学生の彼氏もいるんでしょ?えげつないよねぇ』

『あのコは弟というか、キープくんなんだけどー。でも私を求めてがっついてくるのが、めっちゃ可愛くてさぁ』

『それって、ただヤリたいだけじゃん』

『普通はそうやって求めてくるのに、黒瀬先輩は慎重というか奥手というか。私を大事にしてくれるみたいな?』

『奥手すぎるのもねぇ。こっちからガツガツいけないわけだし』

『それはそれでいいんだって。その駆け引きを楽しみつつ、別のところで発散できるわけだしぃ』

『梨々花、また新しいコスメ増えてる。パパ活順調なんだ』

『まぁね。今日は黒瀬先輩と別行動日だから、みんなに奢ってあげるよ』

馬鹿女の言葉に歓喜の声をあげた女子がいる時点で、めまいが頭痛に変化した。なにも知らない兄貴が不憫でならない。

(箱崎から聞いた、情報の裏がとれた。ほかの女子が馬鹿女の噂をしないのは、こうして餌をまかれているせいだったとは。だけど人の口を完全に塞げないことまで想定していないのは、まんま馬鹿女というべきか)

スマホで時間を確認すると、あと10分ほどで部活が終わる時間になっていた。無表情で机の上のものを片付け、鞄を肩にかける。周囲に視線を飛ばしても、図書委員以外誰もいなかった。

静寂に包まれた場所から、しんみりした気持ちを引きずりながらあとにしたのだった。

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    ***「ただいま! 宿題終わってからご飯食べるね」 キッチンにいる義母に挨拶してから急いで自室に篭もり、カギをしっかりかけた。肩にかけてる鞄を足元に落として、ブレザーを力なく脱ぎ捨てる。「兄貴のヤツ、あんな馬鹿女に欲情するなんて……」 扉に背を預けたまま急いでベルトを外し、下着と一緒にスラックスをおろした。外気に晒される下半身は否応なしに熱を帯びているため、ぬくもりがほしくてならない。 目を閉じると思い出せる。まぶたの裏に浮かぶ兄貴の恍惚とした表情。 馬鹿女のくちびるを塞いでいた兄貴のくちびるの隙間から、いやらしい動きをしていた舌が、チラリと見え隠れしていた。「僕にもあんなふうに、キスしてほしい……」 下半身を扱きながら、反対の手で自分の舌に触れてみる。兄貴の舌はどんな感じで絡んでくれるのだろうか。「宏斗兄さん、もっと…もっとシテ」 口内を弄っていた手を胸元に移動させて、シャツの上から乳首に触れた。瞬く間に硬くなるそれを、引っ掻くように弄り倒す。前までは痛みしか感じなかった行為なのに、今ではこうしないと物足りなさを感じて、せずにはいられない。「んんっ……ぁっ…っぁあ」 我慢汁で下半身がしとどに濡れていく。そのせいで室内に、ぐちゅぐちゅという水音が響き渡った。いやらしく腰を前後させるだけで、尻穴にまで勝手に滴る。 スカートの裾から忍んでいた兄貴の大きな手で、僕の大事なトコロをめちゃくちゃにしてほしい。「兄貴っ、ぁも…いれてっ…んっ…は…ぁっ……!」 湿った尻穴に、迷うことなく指を1本だけ挿れた。飲み込まれていく指先に感じる内壁がヒクついて、物足りなさを語った。もう1本増やしてみたが大して変わらず、出し挿れしても虚しさだけが募っていく。「あ……やぁっ、あああ!」 前を扱きながら尻穴に4本の指を挿入し、小刻みに腰を前後させる僕は変態だ。もう前だけではイケない躰になってしまったため、いつもこうして自慰にふけった。「ぁあん、足りなぃっ…兄貴のおっきぃのがっ、ほしいぃ!」 時折掠める中の気持ちいいトコロを探しつつ、前を弄る手のストロークをさらにあげた。卑猥な水音が一層激しくなったそのとき、ピンポーンというインターフォンが耳に聞こえる。兄貴が帰ってきた合図だった。「宏斗兄さんっ… っく、っく……ぁあっ! 兄貴のでっ……ぁあっ…イクっ!!」

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    *** 昼休みが終わる直前になって、先にノートを貸していた箱崎が済まなそうな顔で僕の傍にやって来た。「黒瀬、ノート助かったよ。今日は彼女と遊ぶ約束してたから」「ということは、部活をサボる気だな?兄貴に言いつけてやろーっと」 ノートを受け取りながらふざけ半分で脅した途端に、箱崎は両手を合わせて拝むポーズをとる。「頼むから黙っててくれって。今日は彼女の誕生日でさ、どうしても長く一緒にいてあげたくて」「はいはい、惚気けるのはそれくらいでストップ。見逃してやるよ」「ノートからなにからサンキューな。さすがは黒瀬先輩の弟!」「褒めてもこれ以上なにもしないし。同じ彼女持ちでも、兄貴は部活をサボらないんだから偉いと思う」 あえて話題に兄貴を出してふたりを比べる発言をすると、箱崎は顎に手を当てて難しい表情を浮かべた。「箱崎なんだよ、納得いかない顔してさ」「黒瀬先輩、どうしてあの女子と付き合ったんだろうなと思って」 ノートを貸したときには聞けなかったことを口にしてくれたので、嬉しさをひた隠しつつ、声をひそめて訊ねてみる。「あの女子っていう言い方、なにかあるのか?」「隣のクラスの女子だし、俺はまったく接点はないんだけど、俺の彼女がさ――」 5時限目の予鈴が鳴るまでの短い間だったが、箱崎からもたらされた情報によって、とても有意義な時間を過ごすことができた。 兄貴を堕とすための決定的な証拠を集めるだけで、楽しくてならない――。

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   兄貴のほほ笑み3

    ***『お母さん、今日遅くなる。友達と勉強することになった』 帰りが遅くなってもいいネタを、昼休みになってから義母宛にLINEを送った。兄貴の頭の中では今朝僕の行動を耳にしているおかげで、いつもどおりの時間に帰宅していることになっている。だからこそ慎重に兄貴のあとをつけて、絶対に見つからないようにしなければならない。(兄貴は部活が終わったあとに、友達と勉強会の予定。だけどそこは友達じゃなくて、彼女の可能性が高い。学校の図書室はすでに閉まっているから、市立図書館の自習室で勉強をするのか。あるいは――) こうして頭の中を兄貴でいっぱいにするこの時間が、結構好きだったりする。僕と一緒にいない兄貴の知らない顔を想像するだけでワクワクするし、同時に幸せな気持ちになっていく。「黒瀬、おまえ昨日ログインしてなかっただろ!」 苛立ちを含んだ友達の声に、一瞬で思考が中断された。仕方なく目の前に現れた顔を見上げる。「あ~、他のゲームしてたらすっかり忘れて、そのまま寝ちゃった」「リーダーのおまえがいないだけで、戦闘に無駄に時間がかかるんだから、ちゃんとログインしてくれよな。それとさ――」 他にもぐだぐだ文句を言い続ける友達の口を塞ぐためのアイテムを、必死になって考え出す。「土屋、お詫びにはならないかもしれないけど」 申し訳なさを表現するために、しょんぼりした顔を作り込みながら話しかけてやった。「なんだよ?」「明日提出の数Ⅰの宿題、写していいよ。実はもう終わってるんだ」 休み時間をすべて使ってやり終えた宿題をエサに、友達の機嫌をとることにした。「早っ、写していいのか?」「いいよと言いたいんだけど、先に箱崎にノートを貸しちゃっててさ。だけど放課後までには渡せると思う」「わかったよ。ノート待ってる」「今日はログインするから、安心してくれ」 いついかなる時も使えるものは、常に用意しておく。それは僕の中の鉄則になっていた。こうしていままで円滑に、友達関係を築いている。そして、時には利用させてもらった。(本人の知らない間にだけどね――) 兄貴を手に入れるためなら、躊躇なく友達だって使ってみせる。

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