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兄貴の悦び10

作者: 相沢蒼依
last update publish date: 2026-08-22 09:57:02

箱崎と同じクラスというワードを聞いた箱崎の彼女は、僕に呼び出されたときに見せた警戒しているような表情を緩めて、首を横に振りながら答えた。「ごめんね、そういう話は疎くて」と。

「箱崎、どうして嘘をついたんだ? 僕はそれを知りたくて、今日ここに呼びだした」

核心に迫るべく、ところどころアクセントを置きながら言の葉を告げた。それでも逸らしたままでいる、箱崎の視線が戻らない。伏せたまぶたが影を落として、箱崎の苦悩を色濃くする。

「黒瀬はすべてわかっていて、今日まで俺を野放しにしてたってのか。あの時点でわかっていたなんて、驚きしかないよ」

「ピアノの裏に盗聴器を仕掛けたのも、箱崎だろう?」

「うん。休み時間に黒瀬のスマホの内容が見えて、黒瀬先輩とわざわざ音楽室で逢うっていうのが引っかかったから。ふたりは兄弟なんだし、自宅でも話ができるだろう?」

やけにあっさりとゲロした箱崎に、内心あっけにとられた。

「そうだね。自宅でできない話の内容について箱崎が気になって、持っていた盗聴器を仕掛けたのはわかったけれど、おまえはいつでも、そんなものを持ち歩いていたのか?」

「……持ち歩いてた。理由は――
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     内なる苛立ちがバレないように、奥歯をぎゅっと噛みしめながら自室に移動した。素早く鞄を手にして、リビングを背にしたまま声をかける。「行ってきます」 僕のかけ声を合図に義母が椅子から立ち上がり、慌てて追いかけてきた。「辰之、忘れ物はない?」「ないよ。帰りは、いつもどおりになると思う」 しゃがんで靴を履いていたら、いつの間にか兄貴が傍にいた。振り返って目を合わせた瞬間に、後頭部を撫でられる。「寝癖くらい直さないと、彼女できないぞ」 兄貴に指摘されたことが恥ずかしくなり、その手を容赦

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    *** 兄貴が部活を終えるまでの時間を使って、この間女子トイレに仕掛けた盗聴器の中身を確認すべく、目立たないであろう図書室の隅の席で聞いていた。(前々回と前回は空振りに終わったけど、今回はどうだろう……) 期待を胸にイヤホンから流れる女子の会話を耳にしつつ、机の上に広げたノートにその内容を端的に書き記した。僕の姿を傍から見る分には、熱心に勉強しているように見えるだろうな。 いろんな女子からもたらされる噂話や愚痴を聞いている最中に、衝撃的とも言える話は突如はじまった。 早口でまくしたてる甲高い声に反応し、相槌する者は僅かだったが、信じられない内容にめまいがしてきた。どうにもメモする気

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