魔女ドーラの孫(仮)

魔女ドーラの孫(仮)

last updateZuletzt aktualisiert : 19.05.2026
Von:  エチカGerade aktualisiert
Sprache: Japanese
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59Kapitel
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Zusammenfassung

泣ける

溺愛

α(アルファ)

BL

契約結婚

大罪人 魔女ドーラの孫として慎ましやかに暮らしていたオルタナが ヴィンス・サリバン公爵閣下に犯罪者として捕らえられ 国で起こっている謎の事件に巻き込まれていく。 魔女狩りと称した薬師処刑の歴史を持つドーン王国で 薬学復興に力を入れる王とその側近達。 投薬を悪とする教会派の策略とは――――? 謎の植物が歴史を超えて巻き起こす事件の結末が一人の少年を導いていく。 凡庸Ωのオルタナと執着が過ぎる公爵様の焦れ恋シンデレラストーリー

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Kapitel 1

モリガン区 Ⅰ

 ベルの花が鳴く頃、モリガン区の雪も少し解け始める。

 雪原から顔を出した青白いベルの花は、リンリンと鳴いて春を告げるのだ。

 そんな北の果てに不穏な噂が流れていた。

「王都じゃ余計に死人が出たってさ」

「ここじゃ当たり前だが、去年は寒かったからねぇ」

「何でも王都じゃ病で死んだ者は、教会で死体を燃やすんだと」

「罪も犯してないのに病で苦しんだ挙句、体を焼かれるなんて酷い話じゃないか」

「王様も教会には強く言えないんだろうさ」

「サンノ国から来られた王妃様は、まだご懐妊されねぇのかねぇ」

「そりゃ、あんた、王妃様はまだ子供だろ?」

「いやでも、王妃様はΩなんだろ?」

「そんなもんかい? Ωなんて希少すぎて……ねぇ? オルタナ」

 祖母が残した店で、暇を持て余した主婦たちがオルタナへと視線を寄こした。

「……さぁ? 十二ならまだかもね」

「じゃあ、一体いつ発情するんだい?」

「まぁ……個人差あるらしいけど、もうすぐじゃない?」

「じゃあ、何であんた発情しないんだい? もう十八だろ?」

「……僕が知りたいよ」

 オルタナはカウンターの中から、そう呟いた。

 下世話な話も、主婦に掛かれば日常会話だ。

「何だって? でもじゃあ、お世継ぎが出来るのはもっと先だね」

 去年、サンノ国から嫁いで王妃となられたラチア妃は、若干十一歳でレイモンド王の正妃となられた。

 二十も年の離れた幼い姫だが、運命の番として迎え入れられたのだ。

 御輿入れの際には、王都は昼も夜もない程の大騒ぎだったとか。

 雪深いこの地でも、ご成婚でお祭り騒ぎだったのはちょうど一年程前だ。

 元は国だった程広いこのモリガン区では、一年の殆どが雪に覆われている。

 過酷な環境の上、折り合いの悪い隣国との国境がある。

 その為、軍の大きな要塞があり、モリガン国防軍が日夜国境を防衛している。

「ところで、おばちゃんら、今日は何か入用?」

「あ、そうそう。旦那の腰痛が酷くてねぇ。何かないかい?」

「私は孫の寝つきが悪くて。かんの虫が酷いのよ」

「じゃあ、コレと……コレかな」

 オルタナは小瓶に入ったスパイスと、シロップを差し出した。

「助かるよ、オルタナ。薬は高くて買えないし、あんたの···はよく効くからね」

「胡椒は小匙程度。シロップは二滴で十分だから」

「ありがとう。これで今晩は嫁もゆっくり眠れるだろうさ」

「ホント。王様が薬師を増やすって話は、一体どうなっちまったのかね」

「王様は若くて可愛いお姫様に夢中なんじゃないのかい」

「なのにお世継ぎが出来ないんじゃ、話になんないわね。はははっ」

 忙しなく姦しい主婦達は、そう言って店を出る。

 彼女達の辞書に“不敬罪”と言う文字はない。

「まいど……」

 オルタナは煩いおばちゃん連中の背中を見ながら、ふっと溜息をついた。

 Ωでありながら未だ発情した事のない特異な体質。

 稀少なΩに生まれたのに妊娠する可能性がないと言う無価値な物だ。

 発情しない分生活はしやすいし、高い抑制剤を必要としない。

 βと変わらない自身の体を疎ましく思った事は無い。

 ただΩなのに――と周りから揶揄される事が疎ましい。

 こんな事ならβとして生まれて来た方が、何倍も楽だっただろう。

 Ωは容姿が女性っぽく、体つきも華奢になりやすい。

 ちゃんと発情するΩは、繰り返す発情期と抑制剤の過剰摂取で短命な者も多いと聞く。

 銀糸の髪に雪の様に白い肌を持ったオルタナは、近所の子供達からですら“出来損ないΩ”とバカにされている程だ。

 だけどそれを気にした所で、発情するわけでもない。

 発情したらしたで、身の危険が増えるのは当然の上、生活も今以上に苦しくなる。

 祖母が残した香辛料の専門店で慎ましやかに暮らして行けるなら、発情なんて来なくて良い。

 オルタナは常々そう自分に言い聞かせていた。

 馬の蹄の音がした。

 オルタナは、首を傾げる。

 雪が解けたとは言え、この辺りでは足の太い赤鹿が主流で、馬に乗る人なんていない。

 心なしか店の前が騒がしい気もして、嫌な予感が過る。

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Rezensionen

雨音休
雨音休
オルタナ君が可愛いのです...️ 文章が綺麗、というか表現力が深いです...️まるで何年も熟成されたワインのような味わいと香りがいたしました...️とっても読みやすくてするすると物語が入ってきます。私は男でこのジャンルを読むのは初めてですが、ドキドキと読ませていただいております...️ああ、濡れ場が待ち遠しい(笑) オススメの作品であり、描写力のお手本だと思います。一読あれ...️
2026-04-10 19:09:29
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59 Kapitel
モリガン区 Ⅱ
 馬なんて王都の貴族か、国軍くらいしか乗らないものだからだ。「逃げるか……」 オルタナは非常時に備えていつも用意してある荷袋を持って、カウンターの後ろに設えてある子供一人が通れるほどの隠し扉を開けて潜り込む。 その出口を知っているのは、祖母と自分だけだ。 なのに、出た瞬間覆い被さる様な人影に、オルタナは動きを止めた。「あ。出て来た」「は?」 四つん這いになって見上げたその先にあった影は、ローブを被った軍人の物だった。 逆光になって顔はよく見えないが、モリガン兵ではない。 見えなくても身形と佇まいから下級兵士ではない事くらい分かる。「はい、確保ぉ」 そう言ってオルタナは片腕を掴まれ、引き摺り上げられた。「な、何っ……?」 ヤバい。 咄嗟に左手に持った荷袋をその場に落としていこうか、躊躇う間もなくもう片方の手で取り上げられた。 その男はローブを被っているので顔はよく見えないが、ローブの下の制服は黒く、国王の右腕と称される“特務警護団”の物だ。 彼らは国王軍の中でも王に指名された少数精鋭。 王の為だけに動く王の私兵の様な部隊だ。「お前が魔女ドーラの孫か。まだ子供のようだが……いくつだ?」「……」「発言を許す。答えろ」「じゅ、十八……」「……嘘はいけない」「う、嘘ではありません」 信じられないと言う顔をしているのだろうか。 男は後に続く言葉が出ない様だった。 店の正面から回り込んできた部下らしき男の声が聞こえて来る。「団長! どちらにおいでですかっ?」「ノエル! 裏口だ!」「一人で勝手に行くなとあれほどっ……」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-31
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モリガン区 Ⅲ
 今からでも逃げるか……いや、無理だ。 少なくともローブの男と大柄なノエルと呼ばれていた男は間違いなくαだろう。 ミレーと呼ばれていたもう一人は女性だったが、纏う雰囲気がもう凡人のそれではない。 間違いない、全員αだ。 詰んだ。 でも、どこかで逃げなければ、このまま監獄にでも入れられたら、本当に人生が詰む。 ドーン王国では魔女狩りと称して薬師が大量に殺された時代があった。 当時の王が薬師に王妃を殺されたとして、国中の薬師を虐殺したのがキッカケだったとか。 そのせいでドーン王国は他国に比べ薬学が廃れて久しい。 現王レイモンドは積極的に他国からの薬も輸入し、自国の薬師を増やす政策を謳っている。 だが、現状高価な薬を買えるのは貴族くらいで、平民には過ぎた代物でしかない。 そんな平民が頼れるのは民間療法程度の気休めで、祖母は持てる知識を生かして、薬効成分を混ぜた特別な香辛料を作っては売っていた。 何故祖母にそんな知識があったのかは分からない。 だが、その分からない事が、モリガン伯の疑念を晴らす事が出来ない理由の一つでもある。 祖母がモリガン伯に捕らえられてからは、オルタナがその店を継いだ。 幼い頃から何でも口にし、匂いを覚え、見分けて、レシピがなくても出来る様に教えられて来た。 ドーン王国では国が認めた薬を、国が認めた医師が処方する。 それには国の許可が必要で、個人での薬の販売は禁じられている。 だから、スパイスやシロップ、調味料や果実酒として売るのだ。 薬ではないけれど、薬効のある物ではある。 グレーな物を扱っている認識はあるので、憲兵や軍幹部には気を付ける様にしていたのに――――。「おい、待て! オルタナをどうするつもりだっ!」 馬車の外で騒いでいるのは、隣の肉屋の幼馴染スーランだった。「口の利き方に気を付けろ。我々は王陛下の右の翼“特務警護団”だ」 ノエルと言う軍人の低い声が響き渡る。「ッ……どうか、理由を。オル……何故彼を」「お前には関係ない。これは王命だ」「王……命……?」「道を空けろ。邪魔をするなら、この場で……」「ま、待って下さいっ! スーランは関係ないっ!」 オルタナは押し込められた馬車から身を乗り出し叫んだ。 冗談じゃない。 こんな訳の分からない理由で友達を斬り殺されたんじゃ、黙って付いて行
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-01
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モリガン区 Ⅳ
 祖母は顔の上半分が薬草に被れて、まるで火傷の痕の様に爛れている。 その見た目から祖母は魔女ドーラと揶揄されていた。「あぁ、いや違う。気を悪くするな。彼女は栗毛で肌も小麦の様だった。お前は銀髪に白い肌をしているから、こんなに違うものかと……」「そ、祖母に会ったことがあるんですかっ?」「あぁ、一度だけ。モリガン伯が薬物兵器を研究していた者を監禁していると聞いて、見に行った」「そう、ですか……」 元気だったのか、どんな風に拘束されているのか、聞きたい事は沢山ある。 何一つ聞けなかったのは自分が今、殺人容疑で連行されている罪人だと思い出したからだ。 それを忘れる程、目前にいる公爵閣下は穏やかな声で話している。 尋問するでもなく、罪人だと蔑む様子もない。「僕はこれからどうなりますか……?」「まぁ、特別室でお話合いだな」「特別室……?」「お前の為に用意した特別な部屋だ」 拷問――。その言葉が最初に過る。 抑揚なくそう言われて、心底恐ろしくなった。 彼からしてみれば犯罪者なんて珍しい物ではないのだろうし、拷問するのだって日常の一部に過ぎないのかもしれない。 今日のディナーはシチューだよ、くらいの軽さで言われるのも当たり前なのかもしれない。 だが、一介の商売人には非日常すぎて驚くなと言う方が無理だ。 驚く暇があるなら、一つでも状況を把握しろ――。 今、動揺したって状況は変わらない。 どうにか隙をついて逃げないと。 オルタナはそう腹に決めて車窓の向こうへと視線を投げた。 馬車は王都に向かっているはずなのに、何故か鬱蒼とした森の中を走っている。「え&
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-04
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モリガン区 Ⅴ
「モリガン大佐に頼まれていたのは、ただの香辛料で……」「それが、悪用されたようだ」「あ、くよ……う?」「適量を守ればただの香辛料も、摂取量を間違えれば毒になる。彼らが死ぬ前に飲んだ酒には大量の香辛料が混入されていた」「ま、さか……大佐が……? 嘘だ……」「まだ、真相は分からん。だが、こんな分かりやすい方法で六人も害したとなれば、お前は犯人に仕立てられたんだろうよ」「仕立てられた? なのに、僕を捕まえてどうしようって言うんです?」 段々腹が立って来て、何が正しいのかも分からなくなってくる。 モリガン大佐は祖母を捕らえたモリガン軍の中で、唯一信用の置ける人だと思っていた。 そんな人が人を殺しただなんて、聞いてすぐに飲み込める事態じゃない。 あんなに優しい人が、六人もの部下を殺しただなんて。「大佐は違う。大佐に渡した香辛料を奪ったヤツがいるんだ」「それはどうかな。まぁ、もし大佐がシロならお前を釈放しろと直談判でもしてくるんじゃないか? 後暗い事がなければ、だが」「もしかして、態と大佐の不在を狙って……?」「お、良い読みだ。こっちの動きを悟られて、お前を隠されたんじゃ面倒だったからな。お前の御婆様の様に」「婆ちゃんの様にって……?」 ゴトン、と言う音と共に馬車の動きが止まる。 話している内に陽が陰った森の中は薄暗く、向かいに座るサリバン公爵の顔にも影を落とした。「お疲れ様でした、旦那様」 馬車の扉を開けたのは、執事服の老齢の男だ。 馬車の両脇を並走していた部下のノエルとミレーも揃って下馬し、主人が下りるのを待っている。
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-05
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アウルム地方 Ⅰ
 アウルム地方にあるサリバン公爵家の別荘へ来て一週間が過ぎようとしていた。 気候の良いアウルムではもう、雪の残る所はなく、芽吹いた若い緑が眩しい程だ。 オルタナの為に用意された特別な部屋とは、薬草に関する書籍や古文書が所狭しと並ぶ一室だった。 拘束も解かれその部屋を私室として与えられ、普通に暮らしていた。 そう、普通だ。「いや、おかしいだろ……」 目が覚めていつも思う。 ここで何をしているのだろうか? この先、自分の身がどう扱われるのかも分からないのに、呑気に寝ている場合か、と。 だが、そのオルタナの心配を余所に公爵は休暇を楽しむべくのんびりと過ごしており、部下達も庭で稽古したり談話室で喋っていたり、と何の緊迫感も漂わせることはなかった。 時折、部下であるノエルやミレーが不在だったりはするが、果たしていつまでこんな状況なのかと不安を覚える。 オルタナは食事に呼ばれる以外、する事もないので部屋に置いてある本を片っ端から読んで時間を潰す。 そもそもついた初日の晩ですら、今思えば揶揄われたに過ぎなかった。「な、何の御用ですか?」 湯浴みを済ませ夜も更けようかという頃に、公爵が一人でオルタナの部屋を訪ねて来たのだ。 ベッタリ張り付いているはずの部下二人はどこへ行ったのか。「話がある。入れてくれ」「……どうぞ」 薄い夜着を羽織っただけの公爵は、巷の淑女が見れば垂涎物の色気を垂れ流していたし、発情しない自分でさえ体が熱を持った様に感じる程だった。 何だか見てはいけないものが目の前にある感じで、視線の先が定まらない。「こんなに簡単にαを部屋に入れて、危機感がなさすぎやしないか?」「はっ?」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-06
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アウルム地方 Ⅱ
 そう聞かれて、オルタナはただ全力で左右に首を振って答えた。「こっちを向いて。オル……オーリィ」「へっ?」「怖くない、と言っていただろう?」「ちょ、まっ……」「ぶはっ! ははははははっ……流され過ぎだぞ、オーリィ」 公爵は、我慢ならないと言った風に腰を折って笑う。 解かれた手首には、まだ公爵の熱が残っている。 何が起こっているのか未だに整理が付かないオルタナの脳内は、混乱し熱を持って呆然とするしかなかった。「か、揶揄わないで下さいっ……」「ふはっ……すまん。あんまりにも初心な反応を見せるもんで、つい」「さ、触らないで……」「怒ったのか? オーリィ」「オーリィって呼ばないで下さい」「特別な呼び名、か? 妬けるな」「何を……バカな事を……」 そんなわけあるか。 元王族の公爵閣下が、一介の商人相手に妬くなんてあるわけない。「許してくれ、オーリィ。俺が悪かった」 下から伺うようにして視線を合わせようとする公爵は、眉を下げて困った様な顔をして見せた。 それでも楽しそうに見えるから腹立たしい。 こちらが狼狽えているのが、余程楽しいらしい。「そんな事より、は、早くお話を……」「あー、何だったか。忘れた」「はい?」「夜更かしせずに、寝るんだぞ。おやすみ、オーリィ」 呼び方を変えるつもりはないらしい。 こちらが拒否しても、決定権はあちらにある。 貴族とはそう言うものだ。 まして身分のない平民が、遊びであろうと一夜の相手に選ばれるなら、それは光栄な事なのだろう。 もしかしたら発情しないからこそ、慰み者として飼われる事になるのだろうか。 Ωは発情しなくても普通に
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-07
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アウルム地方 Ⅲ
 口に入れた瞬間から、何が入っているのかを考えて、危ないと判断したら吐き出す。 でもそれが遅れれば、体に支障が出る。 どんな薬草で、どういう症状が出るのか。 どの程度なら問題なく食べられる物なのか、常に考えていなければならない。 勿論死ぬほどの量は含まれていないが、祖母はスパルタだったから、吐こうが下そうが、白目をむいて倒れようが容赦なかった。 そうして具合を悪くする度、祖母が作ってくれるのはミルクベリーのスープだった事を思い出す。 母乳に近いと言われる栄養価の高いベリー種の一つで、滋養強壮効果が高いその果実を、山羊の乳と一緒に煮込んでペースト状にしたものだ。「あ……ミルクベリーでしょうか」「え、食材? ミルクベリーってあの白い果物だろ?」 驚いたノエルがキョトンとしてこちらを見ている。「あ、はい。祖母がいつもスープにしてくれていました」「へぇ……俺達には馴染みのない料理だな。果物をスープにするのか」「ノエルは味音痴だから、食べれりゃ何でも良いんだろ?」「ヴィーと違って好き嫌いがないだけだ」「あー、ヴィー様の偏食は酷いからぁ……。野営訓練の時とか、大変だったわ」「ミレー、煩いぞ。しかし、ミルクベリーか。俺も食べた事がないな。どんな味がする?」「味は動物の乳に似ていると思います。山羊の乳より濃いかも……」「私も食べてみたいわ! 甘くて美味しそうじゃない? ね、ノエル」「え……。それは俺にミルクベリーを調達して来いって言ってんの?」「ははっ、それは良いな。王都に戻ったら、料理長に作らせてみよう。レシピは分かるんだろう? オーリィ」「はぁ……多分、自分で作る方が早いかと…&hel
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-08
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アウルム地方 Ⅳ
 ミレー中尉に至ってはヴィンス・サリバン公爵閣下の番がどうお得なのかを延々と語って来る始末。 結局、番の話は有耶無耶になったが、この日を境にノエルやミレーとも普通に会話出来るようになった。 庭の方から子供の笑い声が聞こえて、オルタナは不思議に思い二階の私室の窓から顔を出す。 広く美しい庭園のガゼボで、ミレーと少女が笑い合っている。 少女は下級貴族の様な質素な装いで、傍には見た事のない中年の髪のない下男らしき男が侍っているが、少女の髪は鴉の濡羽の様な美しい黒髪だ。 あんな黒髪を持つ少女が下級貴族なわけないし、国内でサリバン公爵と同じ様な黒髪を持つ少女の噂なんて聞いた事がない。 そこにサリバン公爵が姿を現した。 片膝をついて少女の手を取り、甲に口付ける様を見て、首を捻る。「公爵が膝をつく相手なんて……」 そう一人呟いた途端、部屋のドアがノックされた。「……はい」「俺だ。団長が庭に来いと仰せだ」 ノエルが部屋の扉の前に立っていた。 相変わらず無骨で、大柄な分威圧感もある。 だが、この数日で彼はそう怖い男ではないとオルタナも分かって来た。「……承知しました」「お忍びのお客様がいらしている。粗相のないようにな」「お忍び……ですか」「何だ、お前。元気がないな。具合でも悪いのか?」「え? いえ……大丈夫です」 食事以外、放って置かれているのは喜ばしい事だ。 でも、状況が分からない場所で何の関心も持たれないと言うのは、一日を長く感じる。 毎日誰かの気配を感じながら、一人で部屋にいると言うのに慣れない。 ずっと一人だったのに、どうしてこんなに落ち着かないのか。「団長、オルタナを連れて来ました」「あぁ、こちらへ。オルタナ、ご挨拶を」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-09
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アウルム地方 Ⅴ
 本当に彼女は十二歳なんだろうか。 十八にもなって、自分の人生すら他人に右往左往されている自分が恥ずかしくなる。「義姉上、彼には順を追って話しましょう」「あら、まだ事件の事はお話してないの?」「まぁ、そうですね。義姉上を待ってから、と言うのもありましたが……。教会側の承諾を得るのに時間がかかっておりまして」「団長のオイタが過ぎて距離を測りかねている、と正直に仰っては?」 そう言ったミレーの言葉に、オルタナはビクリと肩を震わせた。 オルタナはあの番云々の話以来、 公爵と二人になると緊張して口籠ってしまい、微妙なのは確かだった。「ミレー、御前だぞ」「ラチア陛下はそんなこと気にする様な狭量な方ではございません」「そろそろ昼食にしましょうか、義姉上」「あ、誤魔化しましたね。団長」「煩いぞ、ミレー」「うふふ、二人は本当に仲が良いのね」「義姉上、誤解です。この者はノエルを慕っておりますから」「ちょ、団長! ラチア陛下になんて事をっ!」「事実だろう? ミレー。婚約話が進んでいるんだろ?」 ミレーはその場で黙るしかない様だった。 なるほど、事実なのか。 そんな事をオルタナは呆然と思う。 ノエルはレンスター伯爵家の次男で、家督を継ぐことはない。 だが、サリバン公爵家と懇意な上級貴族に変わりない。 ミレーの実家ジェラルド男爵家と言えば地位はそこそこだが、現王の指南役として抜擢される程、剣技に優れた一族として有名だ。 それこそ、ただの商売人が名を知っている程には。 後ろで控えていたノエルは聞こえているはずなのに、聞いてないふりをしているのか、ただ黙ってそこに立っている。「まぁ! 婚約パーティーにはぜひ呼んでちょうだい」「い、いえっ&he
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-10
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