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第4話

Auteur: 水瀬
乃愛はぱちりと瞬きをし、目の奥のつんとした痛みをこらえた。

そのとき、スマホが震えた。ラインにメッセージが一通、届いている。

開いた瞬間、乃愛は信じられず、目を見開いた。

何十枚もの写真。そこに写っているのは、どれも卓也が晴香のそばにいる場面だった。

晴香がようやくお腹を目立たせ始めた頃、卓也は彼女に付き添って産婦人科へ行っている写真。

腹がさらに大きくなると、二人で公園を散歩している写真。

出産の日、卓也が病室の外で待っている写真。

写真の一枚一枚の下には日付があり、すべて晴香が出産した年に撮られたものだった。

あの年、卓也は頻繁に出張していた。

それは、立ち会い出産のためだけじゃない。

――彼は晴香の妊娠期間を、丸々付き添っていたのだ。

それなのに今、この男が私の隣に横たわり、強引に、支配的に抱きしめている。

八年も一緒にいたのに。彼は、本当に私を愛したことがあったのだろうか。

胸を錐で貫かれるような痛みが、遅れて押し寄せた。

必死に堪え込んでいた涙が、とうとう溢れ出す。

乃愛は勢いよく起き上がり、手を振り上げて卓也の頬を叩いた。

痛みで目を覚ました卓也は、怒鳴りかけて――すぐに、彼女の涙に気づいた。

「乃愛......」

胸が締めつけられ、卓也は起き上がって彼女の肩を掴む。

「どうした?悪い夢でも見たのか?」

「卓也。離婚届、出しに行くわよ」

乃愛は伏し目がちに身を引き、男の手を避けた。

卓也の声はいっそう柔らかくなる。

「乃愛、いったい何があった。どうして急に離婚なんて言い出す?俺たち、うまくいってただろ。

......もう、やめよう。な?」

乃愛の涙は、もう止まっていた。それを聞いて、彼女は問う。「あなたは、私が拗ねてるだけだと思ってるの?」

卓也は答えない。沈黙が、すべてを語っていた。

乃愛は、拳を綿に打ち込んだような無力感に襲われた。

彼は、自分が嫉妬したのだと思っている。

帰ってきて少し宥めれば、また元どおり。そしてこれからも、彼は自分と晴香の間を行き来する――そういうつもりなのだろう。

乃愛は画面を開き、スマホを彼に見せつけた。

「あなた、あの年は出張が多いって言ってたわよね。お兄さんが亡くなって株価が不安定で、提携の話をまとめなきゃいけないって。

......でも、現実は?あなたは彼女の妊娠期間ずっと、付き添ってた。彼女はあなたにとって何なの?

両親はいないの?姑も舅もいないの?どうして、夫の弟のあなたが出産に付き添う必要があるの。

ねえ、どうして!」

乃愛は、自分が取り乱して叫ぶと思っていた。狂ったように、喚き散らすのだと。

でも実際には、何もかも静かに口にしていた。声には、ほんのわずかな揺れもない。

目尻に嘲りを滲ませて言う。

「それとも江口家には、兄が死んだら弟が跡を継いで妻を引き継ぐっていう掟があるってわけ?」

「乃愛!」卓也が彼女の名を呼び、顔色が陰った。

この件は、本来彼女に知られるべきではなかった。きちんと調べさせる。

卓也は小さく息を吐き、言った。

「兄貴が突然死んで、父さんと母さんは受け止めきれなかった。二人とも辛すぎて、晴香の世話まで手が回らなかったんだ。それに、彼女の両親は......」

そこで言葉を切り、さらに複雑な声になる。

「お前は晴香が嫌いで、父さんと母さんに近づけたくなかっただろ。だから、彼女は二人に言えなかったんだ。

もう、やめよう。俺があいつら母子の面倒を見たのは、兄貴のためだ。変に考えるな」
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