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第7話

Auteur: 水瀬
「乃愛」

卓也が大股で詰め寄る。

まず晴香と悠斗を起こし、支える。それから乃愛の腕を掴み、鋭く問い詰めた。

「何をしてる」

強く引かれ、乃愛はよろめいた。乃愛は卓也の怒りなど意に介さず、逆に不思議そうに尋ねる。

「どうしてあなたがここにいるの?今年は誕生日会はやらないって、あなたには言ってなかったの?」

そう言って、彼女は詩織と明夫に目を向けた。

二人の視線が揺れる。

「ああ。やらないって言ったのは、私にだけなのね。そういうことね」

乃愛は理解した。

「やっぱり晴香だけが実の娘で、あなたたちは最初から同じ側。お似合いだわ。こそこそ誕生日会。あなたと、あの人にだけは連絡して」

そう言い終えると、乃愛は口角を吊り上げ、また晴香に向かって足を上げた。

「見ればわかるでしょ。私がこの人をいじめてるの」

「――っ!」

乃愛が短く声を上げた。

卓也に突き飛ばされたのだ。身体が後ろへ弾かれ、背中が強く木の幹にぶつかった。

「乃愛......」

卓也の表情が揺れ、声が少しだけ和らぐ。

「今日は義父さんの誕生日だ。言いたいことがあるなら、今日が終わってからにしろ」

乃愛は、ふうん、とだけ返した。

「言いたいことなんてない。あなたたちが家族で誕生日を祝うのに、私みたいな外野になんの関係がある?」

乃愛は立ち直り、服の乱れを整えてから、もう一度言う。

「誕生日が終わったら、役所に行って。離婚の手続きが済んでから、ここに顔を出すのが筋でしょう」

「乃愛!」

その言葉に、詩織が青ざめて駆け寄った。

「離婚だなんて、軽々しく言わないで。あなたたち、長いこと一緒にいたでしょう?離婚なんて、言えばできるものじゃないのよ」

乃愛は冷たく言った。

「離婚しなかったら、あなたの大事な晴香はどうやって彼のところに行くの。子どもを抱えながら、愛人のままでいろって?」

乃愛は顎を上げ、卓也を見た。

「あなたが離婚に同意しないなら、私はあの二人に会うたび殴る。叫んで回ってもいいわ。こいつは愛人だって」

指先が、晴香と悠斗を刺す。

「晴香。悠斗を連れて二階へ行きなさい。今日は帰らなくていい。お前は俺が認めた娘だ。誰にも追い出させない」

明夫が立ち上がり、厳しい顔で言った。

晴香は悠斗を抱いて二階へ上がっていく。

「俺の鞭を持ってこい!」

明夫が執事に怒鳴った。執事が小走りで鞭を持ってきて、彼に渡す。

明夫は鞭を握り、乃愛を指差した。

「俺が甘やかしすぎた。だからお前は、どんどん気位が高くなったんだ。姉と張り合って嫉妬して、挙げ句の果て子どもまで脅かす。お前、自分が悪いと分かっているのか!」

乃愛は冷たい目で見返し、顔に反省の色はなかった。

「いいだろう。謝らないなら、謝るまで叩いてやる!」

明夫は怒りに震え、鞭を振り上げて乃愛へ打ち下ろした。詩織は口元を押さえ、涙をこぼした。

乃愛は反射的に目を閉じた。だが、記憶にあるあの裂けるような痛みは、来ない。

「卓也君!」

明夫が叫ぶ。

「何をしてる!」

乃愛ははっとして目を開けた。卓也が背中で、その一撃を受け止めていた。
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