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すれ違い
すれ違い
Author: 行杏

第1話

Author: 行杏
薄暗い個室の中、児玉茂香(こだま しげか)はずぶ濡れのまま中央に立ち尽くしていた。血の気が引いた頬は凍えるように冷たく、色を失っていた。寒さで震えが止まらず、ビンタされた頬がヒリヒリと痛んだ。

再び、氷水の入ったバケツが頭から浴びせかけられたその時、無機質なシステムの音声が響いた。

「宿主様、任務完了が近いことを検知しました。もう少しの辛抱です」

茂香は思わず息を呑んだ。胸がキュッと締め付けられ、今にも泣き出しそうだった。

3年間、耐え忍んできた。やっと、愛しい彼と再会できるのだ。

茂香は柏原若彰(かしわら わかあき)など好きではない。彼女が愛しているのは、朝霧陸(あさぎり りく)という男だ。

陸とは幼馴染として育った。生母を亡くし、この世界で恐ろしい継母にいじめられる時に、彼女を守ってくれたのは陸だけだった。

愛情に飢えていたあの頃、茂香は陸と出会った。それ以来、彼女の心の傷を癒せるのは陸だけだった。

数えきれないほどの昼と夜を、陸はそばにいてくれた。もうすぐ結婚し、やっと安らぎの場所が手に入ると思った矢先、陸は死んだ。

何者かの罠にはまり、出張先で崖から転落。遺体すら見つからなかった。

絶望の淵に立たされ、陸の後を追おうとした茂香の前に、システムが姿を現した。

任務は、柏原若彰と結婚すること。

結婚式さえ無事に終えれば任務完了となり、陸は戻ってくるという......

児玉夫人になった継母は、まるで虎の威を借る狐のように振る舞い、最も有力な財産相続人である茂香を追い出したくてたまらなかった。まるで筋書きがあったかのように、茂香と若彰の婚約はとんとん拍子で決まった。

結婚式は来月。そのため、茂香は若彰がこの間に問題を起こさず、婚約が滞りなく進むことさえ保証されれば、この地獄から抜け出せるのだ。

柏原若彰という男に対する茂香の評価は、ただ一つ。

愛情に飢えた、繊細で、性悪で幼稚なクソガキ坊ちゃん。

そのため、任務は想像を絶するほど困難を極めた。

この3年間、茂香はひたすら耐えた。若彰の狂犬のような気性に、何度心が折れそうになったことか。

「婚約してるからって何だ?俺がお前と結婚するわけないだろ、茂香!夢見るのも大概にしろ!」

グラスが足元で派手に砕け散り、ガラスの破片が白い足首に食い込んで血の筋を引いた。

個室にいる誰もが、無様に佇む茂香を高みの見物と決め込み、彼女が崩れ落ちる瞬間を期待していた。

だが、茂香は崩れなかった。

若彰が隣の女にけしかけて、また一桶の氷水を浴びせさせ、ビンタをさせたその時からずっと、茂香はただその場に立ち尽くしていた。

顔が痺れ、体が凍りつくような痛み。それでも歯を食いしばった。これが、彼女に残された最後の希望なのだから。

「もう、お家に戻ってもいいですか?柏原おじ様が、お待ちです......」

茂香はかろうじて、その言葉を絞り出した。

「聞いたか?昨日、若彰さんは日の出を見るための望遠鏡を届けさせるために、あいつを山の麓から頂上まで登らせたらしいぜ。三千段以上の階段を、マジで行ったんだと!」

「それだけじゃない。あの茂香って女、毎日若彰さんに朝食を届けてるんだと。会社のビル前で毎日、時間通りに待機してんだぜ」

「婚約してるからって、そこまでするか?よっぽど若彰さんのことが好きなんだな!」

......

「若彰さん、彼女が私を怒らせたの。謝らせてよ......」

若彰の隣に座るセクシーな女が、彼の腕に絡みつきながら甘えた声で言った。

若彰は片肘をつき、意地の悪い笑みを浮かべている。

「聞こえなかったのか?俺のフィアンセよ。俺の連れを不機嫌にさせたんだ。何か償いでもしたらどうだ?」

茂香は顔を上げて心の中で、あなたの連れがしたことは、もう十分すぎるほどだろう、と思った。

それでも、彼女は無理やり笑みを作り、どうして欲しいのかと目で問いかけた。

若彰の瞳がすっと細められ、薄い唇が開く。「茂香、お前はそこまで俺が好きなのか?」

「......なら、今から外で30分このままで立っていろ。戻ってきたら、結婚してやる」

「......本当ですか?」茂香の瞳が明らかに輝きを増した。若彰の冷たい視線を受け、彼が頷いたのを確認すると、彼女は躊躇なく踵を返して駆け出した。

それは零度に近い気温の日。茂香のワンピースは完全に濡れており、外で30分立つことが何を意味するかは言うまでもない。

だが、茂香は気にしなかった。ただ、一刻も早く陸に戻ってきてほしかった。会いたくてたまらなかった。

若彰の表情に影が差した。その視線は、茂香が消えたドアに釘付けになっている。

誰かが酒を続けるよう声をかけた途端、若彰は立ち上がり、個室を出て行った。

主役がいなくなって、誰が飲めるというのか。

取り巻きたちは諦めて若様の後を追い、ホテルの外に出ると、遠くで茂香が震えながら立っているのが見えた。

茂香の顔色はどんどん悪くなっていく。酒を飲んでいたせいもあり、外気に当たって意識が朦朧としているようだ。その場にいた誰もが息を呑んだ。分別のある者が何か言おうとしたが、すぐに周りに止められる。

中には、茂香は本当に若彰を愛している、命まで投げ出すとは、と囁く者もいた。

騒がしいざわめきが若彰の眉間に深い皺を刻んだ。空き地にぽつんと立つ、小さな影を見つめながら、彼はふと我を忘れた。
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