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第4話

Author: 果てしない道
叶えたかったあの願いは、もう二度と現実にならない。

病室を出て、母のところへ向かった。

ベッドの上の母は深く眠っていて、頬はまた少し痩せていた。

父がビルから身を投げたあの日から、母の精神は壊れてしまった。

あの頃は借金取りが毎日のように家に押しかけてきた。

敵は闇に潜み、私たちは光の中にいた。

――だから、母を連れて国外に逃げた。

五年経っても犯人は見つからず、代わりに母は脳腫瘍を患った。

カチャ、とドアノブの音。

私は慌てて涙を拭う。

遼真が入ってきた。

私の赤くなった目を見て、眉を寄せる。

「泣いてたのか?」

答える前に、彼は小さく舌打ちした。

「これからは、俺の許可なく母親の見舞いに来るな」

信じられず、顔を上げた。

声にならない問い――なぜ?

遼真はその表情を見て、冷ややかに笑った。

「理由?簡単だ。お前の母親の治療費を払ってるのは俺だ」

私は視線を逸らした。

――でも、それももうすぐ終わる。

遼真は結婚式の準備に異常なほどこだわった。

会場、指輪、ドレス……何度も何度もやり直して。

最終案が決まったとき、妙な既視感に襲われた。

そのドレスを見た瞬間、理由が分かった。

――全部、昔、私が描いた夢だった。

あのドレスは大学の頃、二人でウェディングショップを覗いたとき、私が一目惚れしたもの。

「いつか結婚する時は、このドレスがいいな。綺麗で上品で……ちょっと高いけど」

そう言った私に、彼は笑って言った。

「高くてもいい。俺が稼いで買ってやる」

――彼は嘘をつかなかった。本当に買った。

でも、それはもう、私のものじゃない。

そのドレスを着た寧音は鏡の前で嬉しそうに回り、私に笑顔を見せた。

私は引きつった笑顔を返す。

彼女は花柄のブラウスを私に放り投げてきた。

「紗世、式の日はこれ着て。最近のブライズメイド、みんなこんな服で踊るのよ」

彼女の目の奥に、意地悪な光が見えた。

遼真が冷たい視線を向ける。

「言われた通りに着ろ。文句あるのか?」

「……分かった」

心のざらつきを押し殺して、私は頷いた。

彼は鼻で笑い、私の耳元に顔を寄せて囁く。

「苦しいか?――あの時、俺を捨てなきゃ、このドレスはお前のものだったんだぞ」

その言葉が胸を鋭く刺した。抜けなくて、ただ痛かった。

そして、結婚式の日が来た。

控室で、寧音が私にミルクティーを差し出した。

それは、私の一番好きなブランドだった。

彼女は私の手を握り、昔のようにケンカして、仲直りするように。

「紗世、覚えてる?前にケンカした時もさ、どんなに酷くても、ミルクティー一杯で仲直りしてたよね」

私は目を伏せ、静かに言った。

「……寧音、私たち、もう昔には戻れないよ」

寧音の目が潤み、顔に影が落ちた。

「やっぱり……許してくれないんだね。本当なら今日が一番幸せな日なのに、全然笑えない」

彼女は震える声で続けた。

「紗世、あの時ね、あなたがいなくなってから、遼真は壊れたの。酒で誤魔化して、何度も病院に運ばれて……もし私が側にいなかったら、あの人、きっと死んでた。

私ね、遼真のことが好き。でも、あなたとの友情も本気だったの。

……少しでいい、理解してほしい。ずっと彼を支えてきたのは私よ。なのに、なんであなたが戻ってきただけで、全部奪っていくの?」

彼女の目が赤くなり、涙が光る。

私は息をついて言った。

「心配しないで。私は彼を奪わない。これからも、あなたたちの前には現れない」

寧音は信じなかった。私は仕方なくミルクティーを一口飲んだ。

彼女はようやく安堵の笑みを見せ、手を上げて顔の涙を拭った。

「そう……やっと安心した」

――その瞬間。

控室のドアが開き、数人の男たちが入ってきた。

私は眉をひそめ、困惑したが、次の瞬間、身体の芯が熱くなり、力が抜けていくのを感じた。

信じられない思いで寧音を見る。

彼女の笑みは、ねじれたように歪んでいた。

「五年前ね、私も信じてた。もうあなたは戻ってこないって。でも、結局帰ってきた」

……ごめんね、紗世。私も本当は、あなたという友人を失いたくなかった。でも、夫の心に『別の女』がいるなんて、耐えられないの。

――許して」

司会の声がホールに響き、寧音は何事もなかったように控室を出ていった。

ドアが閉まった瞬間。

男たちの影が、獣のように私へと迫ってきた。

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