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第4話

Auteur: 朝比奈 雨
美桜が眠りについた後、私は突然一通のメッセージを受け取った。送り主は雪乃だった。

【晴香、時間があれば少し話せる?】

私は眉をひそめて、メッセージを送ってもいいと返したが、雪乃はそれきり何も言ってこなかった。

寝る前になって、ようやく雪乃から電話がかかってきた。

「今、あなたの家の下にいるの。ちょっとだけ聞きたいことがあるんだけど……最近、また海外に行くつもりある?

私も悠真も、あなたにはやっぱり国外にいてほしいのよ。それに、あなたの旦那さんも海外にいるんでしょ?やっぱり、そっちの方がいいと思う」

私は少し呆然としたが、だんだんと可笑しくなってきた。夜中にわざわざ連絡してくるなんて、この話以外に考えられなかった。二人とも、私のことがそこまで嫌いなのか。同じ国にいることさえ我慢できないなんて。

私は眠る美桜を見つめてから、下に降りた。本当に雪乃は街灯の下に立っていた。

私は彼女の前に立ち、深く息を吸い込んでから、まっすぐ彼女の目を見た。

「もう海外に行くつもりはないよ。美桜のためにも、もうあちこち連れ回すのはやめる」

雪乃は小さく笑った。周りには誰もいなくて、彼女の目
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    美桜が眠りについた後、私は突然一通のメッセージを受け取った。送り主は雪乃だった。【晴香、時間があれば少し話せる?】私は眉をひそめて、メッセージを送ってもいいと返したが、雪乃はそれきり何も言ってこなかった。寝る前になって、ようやく雪乃から電話がかかってきた。「今、あなたの家の下にいるの。ちょっとだけ聞きたいことがあるんだけど……最近、また海外に行くつもりある?私も悠真も、あなたにはやっぱり国外にいてほしいのよ。それに、あなたの旦那さんも海外にいるんでしょ?やっぱり、そっちの方がいいと思う」私は少し呆然としたが、だんだんと可笑しくなってきた。夜中にわざわざ連絡してくるなんて、この話以外に考えられなかった。二人とも、私のことがそこまで嫌いなのか。同じ国にいることさえ我慢できないなんて。私は眠る美桜を見つめてから、下に降りた。本当に雪乃は街灯の下に立っていた。私は彼女の前に立ち、深く息を吸い込んでから、まっすぐ彼女の目を見た。「もう海外に行くつもりはないよ。美桜のためにも、もうあちこち連れ回すのはやめる」雪乃は小さく笑った。周りには誰もいなくて、彼女の目には隠しきれない軽蔑が浮かんでいた。「晴香、君がお金に困っていることは知ってる。もしお金を渡したら、また海外に行く気はある?」私はしばらく黙り込んだ。お金に困っていることなんて、もう誰でも知っている。雪乃も悠真も、私が海外でどれほど苦労していたか知っているからこそ、こうして私を脅す時にも、その弱みを突いてくる。でも、私は断った。雪乃は少し意外そうな顔をした。その夜、私と雪乃は気まずいまま別れた。それから数日間、私は仕事探しに奔走した。でも、どの会社の面接も一回目で落とされてしまう。しかも、ある若い面接官が小さな声で教えてくれた。「これは周藤社長の指示です」その時初めて、雪乃が私に仕事もさせたくないのだと気付いた。彼女はどうしても私を海外に戻したいらしい。長い間頑張った末、真実を教えてくれた面接官にお礼を言い、面接を終えて会社を出ると、病院からメッセージが届いた。昨晩、私は病院で診察の予約をしていた。抗うつ薬をもらうためだった。診察の時、医者に言われた。「最近のあなたの状態はよくありません。もっとカウンセリングを受けることを勧めます」

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