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その少女は愛を知る
その少女は愛を知る
Penulis: 小嵩 名雪

000.プロローグ

Penulis: 小嵩 名雪
last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-01 00:34:39

――私の可愛いフィルエット。

遠い夏の記憶。

向日葵がひしめき合うように咲く丘の上で母が笑顔で手を差し伸べ、抱き上げてくれた。

母は体が弱く、ベットに横になっていることが多い人だった。

それでも公爵夫人としての役割を果たすために、体を奮い立たせ大事な舞踏会やお茶会、夜会など社交界にも顔を出していた。

本来その横にはパートナーである父がいるのが当たり前なのに、毎回パートナーを務めるのは祖父であった。

父は愛人の所に入り浸り、母と私がいる屋敷には帰ってくることはなかった。

私が生まれる前は月に数度帰ってきてたみたいだが、私が生まれてからは一切帰ってこない。

そんな父に嫁がせてしまった事を祖父母は悔い、母に何度も頭を下げているのを幼い私はうっすら開いたドアから眺めている。

母は頭を下げたままの祖父母を立たせ、笑顔で言う。

――こうなる事はわかっていたことですから気にしないでください。

母の言葉を聞くたびに祖父母は涙を流しまた何度も謝罪する。

そんな二人に困った顔をみせつつ母はどうしようか考えていると、ふとこちらを見て笑顔で言う。

――フィルエット、そんなところにいないで、こちらにいらっしゃい。

母に呼ばれ、覗き見していたのがバレて恥ずかしくなった私は廊下を走って逃げだした…

まではよかったが、何故か母に捕まってしまう。

あれ?この母は体が弱くなかったか?

と幼心に思ったのを記憶している。

――フィルエット…おじいさまとおばあさまに挨拶しなさい!

私を抱き上げた母は、私の頬を甘噛みしつつまた祖父母がいる部屋に戻ってきた。

母曰く、礼儀作法はしっかりとしなくてはいけない。

母曰く、勉強はできる限りしっかりとしなくてはいけない。

母曰く、令嬢としての仮面をつけなさい。

母曰く、男を頼ってはいけません。

母曰く…

――本当に愛する人ができたら、その仮面を外してたくさん甘えなさい。

母は心が強くそして不思議な人であった。

娘の私からみても母は本当に綺麗な人で、使用人の話によれば社交界では【白薔薇の君】と呼ばれているらしかった。

結婚をしているとわかっていても、男性からの求婚は絶え間なく続いていたらしい。

しかし母はこう言っていたそうだ。

――私には可愛い娘のフィルエットがいますから、あなた達は不要です。

母はとことん男性を信じていなかった。

父のせいかと思って聞いてきた人がいたみたいだが、母は違うと即答したらしい。

――私が信じるのは愛娘のフィルエットだけです。あの人には一切興味がありません。

――唯一感謝しているのはフィルエットと会わせてくれてありがとうございます位です!

母は事ある毎にこう言っていたそうだ。

その言葉通り、母は私を大切にしてくれた。

勉強や礼儀作法、時に叱られ、生きる為に必要なことを教えてくれた。

…怒る時は何故か噛み癖があるので少々痛かったが

時が経ち、私が6歳になった頃のある冬の日。

…母が倒れた。

元々体が強い人ではなかったのでいつかこうなると予感はしていたが、私は母の元を離れることができなかった。

倒れた日、たくさん泣いた。

食事も喉が通らず、執事長やメイド長が一日付き添ってくれて抱きしめてくれていた。

それでも私にとって母は大切な存在で憧れでもあった。

母はベットから起き上がるので精一杯になってしまった。

私は意を決して愛人の家にいる父に会いに行った。

専属メイドのミリーナに頼み込み、一緒に付いてきてもらった。

そこで目にしたのは、とても幸せそうにする父の姿だった。

私の知らない女性と私と同じ位の女の子、そして少し幼い男の子。

私は私の知らない光景を目の当たりにして、これが父なのか…と幻滅したのを今でもはっきり覚えている。

まがりなりにもあの優しい祖父母と血が繋がっているのかと…

少々躊躇いがちにミリーナは訪問を告げるベルを鳴らす。

中から知らない執事が出てきて、私たちの用件を父に伝えてくれた。

そして玄関先まで父がやってきて一言。

――時間が空いたら行く。

この言葉を言ってまた中に戻って行った。

これが父か…初めて会ったけど、こんなやつの血が私に流れているのかと憤った。

ある日とても天気が良く、母は体調が良かったのか、久しぶりに散歩に行きましょうと言われた。

私はとても喜んだのを覚えている。

あの父との対面は、母には内緒にしている。

あんなのと会った事を告げれば母がどんな気持ちになるか予想できなかったからだ。

もし悲しませたりしたら、私は私を許せなくなる。

その日の夜、不思議な夢を見た。

母が埋葬される夢。

雪が降る中、母が入れられた棺に縋り付き、大泣きしている私がいる。

そんな私をあの男が迷惑そうな顔をしながら引きはがそうとしている。

そこに先程まで泣き崩れていた祖父母が優しく私を抱き寄せ、ずっと【ごめんなさい】と呟き続けていた。

母を弔うのが終わり、徐々に人がいなくなりつつある中、私はじっと動かず、いつまでそうしていたのか、体には雪が積もっていた。

そこで朝を迎えた。

私は朝の支度をしにメイドが来る前に飛び起き、急ぎ母の元へ向かった。

母は起きてて、急にきた私に驚きながら笑顔で迎えてくれた。

そして私は泣きながら夢のことを話すと、母は驚きそして…泣いていた。

――フィルエット。そうなのね…その力はあなたに引き継がれたのね…

母は妙に納得し、私を抱きしめつつこう言った。

――フィルエット。その力はあなたを守る力でもあり、傷つける力でもある。

だからどうか約束して。その力のことはあなたが本当に信用する人にだけ明かすと…

私はこの6年で初めて母が泣く所を見た。

それから1年の月日が流れ、雪が降りだした頃…

母はこの世を去った。

1年前にみたあの夢の通りとなり…

そして喪が明けた頃、父が数年振りに本邸へと帰ってきた。

…後妻となるあの家族を連れて。

私はこの日から仮面を被る事とした。

表情を動かさず、心を動かさず、ただそこにあるだけの人形となる事を。

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