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第4話

Autor: 局所宇宙
「朔。これって、あなたが結奈を選ぶ、9回目ってこと?」

私は朔を見つめる。赤い発疹は、もう顔にまで広がっている。

ここで朔が振り返れば、私が本当にアレルギーを起こしているだけで、嘘をついているわけではないと分かるはずだ。

けれど朔は、その場に立ち尽くしただけだ。垂れ下がった手を、ぎゅっと拳に握りしめる。

そしてとうとう、何かを決意したように、静かに口を開く。

「じゃあ、これが最後だ」

車のエンジン音が響き、屋敷には再び静寂が戻る。

私はとうとう耐えきれず、その場で意識を失う。

次に目を覚ましたとき、私は病院にいる。朔は今にも泣き出しそうなほど取り乱している。

「どうしてアレルギーのこと、ちゃんと言わなかったんだ?家政婦が気づいてくれなかったら……本当に死んでたんだぞ……」

「言ったよ」

私は彼の言葉を遮る。自分でも驚くほど、心は穏やかだ。

「アレルギーだって言った。死ぬって、ちゃんと言ったよ」

朔は言葉を失う。まるで今になって初めて、その意味を理解したように、目を逸らす。

「俺……お前がただ……」

そこまで言って、続きが出てこない。朔は自暴自棄になったように、私の手を握る。

まるで、その手を自分の体の中に埋め込んでしまいたいとでもいうように。

「もう二度としない。梨々香、俺、本当にもう二度としないから」

私は「うん」とだけ答える。

けれど、もう何とも思わない。

10回の約束は、とっくに終わっている。今起きていることなんて、私が彼のもとを去っていく途中の、小さな出来事にすぎない。

そんなことを知らない朔は、ただ頑なに私のベッドのそばに居続ける。

私に自分を見ていろと言わんばかりに、決して目を離させようとしない。

胸の中にある不安を埋めるように、これでもかというほど私を気遣おうとする。

結奈から電話がかかってくる、その瞬間までは。

今回は、朔も少しは学習したらしい。

彼は申し訳なさそうに私を一度見てから、そっとトイレに入っていく。

けれど、私はそれでも聞いてしまう。

結奈が私にも電話をかけてきているからだ。

「あなた、朔と約束したんでしょ?朔が私を10回選んだら、大人しく身を引くって。

よく聞いて。これで13回目。今夜は12時まで、朔には私と一緒にいてもらうから。これ以上恥をさらして、しつこく付きまとうのはやめたら?」

そうか。結奈ですら、これが13回目だと覚えていたんだ。

イヤホンの向こうから、声が聞こえてくる。

最初に口を開いたのは、朔だった。

「今度はどうした?梨々香が入院してるんだ。今日はそばにいてやらないと」

結奈は鼻を鳴らし、不満そうに甘える。

「私はまだ何も言ってないのに。昨日、どうして私のために買ってくれたケーキを梨々香に食べさせたの?

私に買ってくれるって言ってたじゃん。あの人なんかが食べるなんて、もったいないよ」

朔はため息をつき、慣れた様子で彼女を宥める。

「結奈、いい子だから。ケーキ1個くらい、また買ってやるよ」

「でも、2時間も並んでくれたんでしょ?私、朔が大変そうで心配だったんだから」

結奈はそれでもまだ不満そうだった。

朔は小さく笑い、甘い声で答える。

「こんなの、たいしたことじゃない。結奈のためなら、俺は何だってするよ」

「じゃあ、今夜は?映画を見に行くって約束したでしょ。もう梨々香のところに行くのは禁止だからね」

朔は黙り込み、何度もこちらを振り返る。

しばらくして、諦めたように言う。

「分かったよ。じゃあ、会社で急な用事があるって言って、適当に理由をつけて抜け出す」

結奈はくすっと笑い、それから意地の悪い声で尋ねる。

「そんな簡単な嘘、梨々香が信じると思う?」

朔は一瞬言葉に詰まる。けれど次の瞬間、確信に満ちた声で笑う。

「信じるよ。だって、あいつは俺のことが大好きだから。あいつは、簡単に騙せる」

電話が切れる。

私はベッドの上に座ったまま、長いこと呆然としている。

そうだったんだ。あのケーキは、私のためじゃなかったんだ。

2分後、朔が戻ってくる。申し訳なさそうな顔をして、私に告げる。

「梨々香、会社で急な仕事が入ったんだ。ちょっと戻らないといけない。今日はもう遅いから、ちゃんと寝ろよ」

私は頷く。案の定、何も聞かない。

ただ、朔が部屋を出ようとしたとき、私はふいに口を開く。

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