LOGIN「......あぁ。そう言う訳だ。本当に申し訳ない。......いや、でも......そう言ってもらえると助かる。あぁ。若葉の事は任せてくれ。それじゃあ」「おじさん?」「!若葉」「母さんと電話してたの?」「......やっぱり分かったか。お前の事任せられたよ」「......て事は」若葉は顔をパァッと輝かせ直道に抱きついた。「これからもそばにいてくれるんだね!オレ凄い嬉しい!」若葉の心からの言葉に直道は涙を流しながら若葉を抱きしめ返した。そして、「ありがとう、ありがとう」と感謝の言葉を口にした。その様子を少し離れた所から見ていた新とダニエルは顔を見合せながら笑い合った。その2人に気がついた若葉はチョイチョイと手招きするとバッと手を広げた。そしてその腕の中に新とダニエルの2人も飛び込んで行った。「?!お前ら!」「直道さんばかりズルいですよ。オレ達も若葉とハグしたいです。」「ソーデスヨ!それにワカバが呼んでくれたんデス!来ないわけにはイキマセン!」「まったく......困った子供達だよ、お前らは」そうしている時だった。玄関のチャイムが"ピンポーン"と鳴った。こんな遅くに誰だ?と不審に思っていると、再度チャイムが鳴らされた。直道が代表してインターフォンを確認すると、そこに立っていたのは直道の妻、花緒であった。直道が急いでドアを開けると、花緒が直道に抱きついてきた。「か、花緒?!どうしてここに......」「あなた...私どうしていいのか分からなくて......」「おばさん?」「?!若葉君!本当に、本当にごめんなさい!怖い思いをさせてしまって......!!」「おばさんは何も悪くないよ。それにおじさんも。だから自分を責めないでよ。」「けれど...本当はここに来る資格も、若葉君に会う資格も無いのは分かっているの......。でも、でも......!!」若葉はそっと花緒の事を抱きしめた。花緒はハラハラと涙を流し続け、その場にしゃがみこんだ。「若葉君......優しすぎるわ......。おばさんの事なんて責めて良いのに...。こんなに優しく抱きしめてくれるなんて......」「......オレにとっては、おじさんもおばさんも大切な存在だよ?浩兄の事は正直許せない。でも2人は関係ないよ。それにオレの油断が招いた事件でもあるんだよ。だから、
浩史と喜多川が警察に連行された後、被害者である若葉を筆頭に関係者である新にダニエル、それに直道も調書を受ける事になった。新とダニエルはストーカーにあっていた事くらいしか分かることが無かったので直ぐに解放されたが、被害者である若葉は勿論、加害者の父親である直道も長時間拘束される事になった。「若葉......大丈夫かな。酷く取り乱していたし......。それに直道さんも」「アラタ...。今の私達はただ待つことしかできまセン。だから落ち着きマショ?」「そ、そうだよね。......ごめん、ダニエル」「アラタが謝ることはありません!そうだ。楽しい事でも考えマショ!明後日はクリスマスイブデス!ワカバにプレゼントは用意シマシタカ?」「ダニエル......こんな時に......」「こんな時だからこそデスヨ!」ダニエルはそう言うとウインクをして見せた。...まったく。ダニエルには調子を崩される。「用意はしてあるよ。それもだいぶ前からね」「では、イブは2人きりで過ごして下サイ!」「え?ダニエルはどうするのさ。」「アラタ、日本ではイブは恋人同士で過ごすと聞きマシタ!私もヤボな事はしません!どうぞ2人で過ごして下サイ!」「......ありがとう。ダニエル」新はダニエルの明るさに救われた気がした。そうしていると若葉と直道かほぼ同時に取調室から出てきた。直道は若葉にどう声をかけたらいいか分からず、若葉に目をやれないでいた。しかし、若葉の方から直道に抱きついてきた。「......若葉?」「おじさん。おじさんは何も悪くない。だから自分を追い詰めないで、ね?オレはもう大丈夫だから!たしかに怖かったけど......でもおじさん達が警察呼んで助けてくれたんでしょう?」「だから、ありがとう皆」若葉はそう言うと笑顔を3人に向けた。その笑顔は傍から見ればカンペキな笑顔だが、若葉をよく知る3人だからこそ分かる。若葉は無理をしている。一見何ともない笑顔だが、どこかぎこちなく感じる。しかし、若葉は3人を心配させまいとの行動なので、それを無駄にしたくはない。だから3人は普段通りに振る舞う事にした。「ワカバ!遅くなりましたが夕飯は何が食べたいデスカ?」「ガキ共、喜べ!おじさんがピザとってやる!」「そんな、悪いよおじさん!」「若葉、こういう時はお言葉に甘えよう?」「そうだぞ?好
意識を失ってどれくらい経つだろう。浩史を出迎えた所までは覚えている。...それから何が起こったのだろうか。気がつくと見慣れない場所に寝転がされていた。「あぁ......若葉。目が覚めたかい?」「ひ......ひろにい?ここどこ?何があったの?」「若葉。コレはなんだい?誰に付けられた?若葉は僕のものなのに......!!」浩史はそう言うと持っていたナイフで若葉の服を切り裂いた。「浩兄!ヤダ!!やめて?こんな事はよして......!!」「若葉......僕達はこれから一つの作品になるんだよ?ね、"喜多川先生"?」「えっ......?」浩史がそう言うと若葉は驚きの声を上げた。その瞬間、"パシャリ"とカメラのフラッシュが光ったのであった。「やぁ、久しぶりだね佐倉君。会えて嬉しいよ」「な、なんで浩兄と喜多川先生が......?!」「僕も喜多川先生の教え子なんだよ」意外な接点があったのに若葉は驚きを隠せないでいた。「喜多川先生が逮捕されたのにはビックリしてね。僕も微力ながら先生の釈放に一役買ったんだ」「ど、どうして......?」「若葉の美しさを理解し、語れる相手だからだよ!」「そう言う事だよ、佐倉君。君が眠っている間にたくさん写真を撮らせて貰ったよ。いやぁ、実に美しい......」喜多川はそう言うと恍惚とした表情を浮かべた。そしてカメラを地面に置くと若葉と浩史の元へと歩み寄ってきた。「さぁ、写真もたくさん撮れたよ。どれもこれも美しい物ばかり。さぁ。一息ついた事だし......ね?」「そうですね、喜多川先生」「な......何......?ヤダ!来ないで!」「誰か助けて!!」と若葉が大声を出した次の瞬間だった。廃墟の入り口が"ガシャン!!"と大きな音を立てて開かれた。微かにパトカーのサイレンの音も聞こえる。「そこまでだ!喜多川!清水!!誘拐と監禁の容疑で逮捕する!!」「クソッ!どうしてここが......?!」「若葉!同意だと言え!言うんだ!!」「往生際が悪いぞ浩史!」「と、父さん?!」浩史は直道の姿を見ると、「終わった......」と絶望の表情を浮かべその場に立ち尽くした。そして浩史と喜多川の2人は手錠がかけられると、パトカーへと乗せられて行った。「若葉!!無事か?!」「ワカバ!大丈夫デスカ?!」「新......ダニ
新とダニエルの談議が白熱していた時、"ピンポーン"とチャイムが鳴った。若葉がインターフォンを確認するとそこには浩史が立っていた。「あ、浩兄!もう来てくれたの?」「「!」」「心配だったし、早く若葉に会いたかったからね」「母さんがケーキを焼いたんだ」とインターフォン越しに箱を見せてきた。若葉は「すぐ開けるね!」と言って玄関へとかけて行った。「まさか、もう来るとは......」「警戒がバレないようにシマショ」新とダニエルは頷き合うと、2人がリビングへ入ってくるのを待った。しかし、いくら待っても2人が入って来る気配がない。2人は「まさか......!」と思い玄関へと向かうと、玄関のドアが開かれたまま、落とされた弾みか、潰れたケーキが置かれていた。「やられた......!!直道さんに連絡を!!」「アラタ、ワカバはスマホを持ったままデスカ?」「?たしかズボンに入れたままだったかと......」「GPSで追跡しまショウ!」新はあまりにも動揺していたため、その発想が出なかった。GPSアプリを入れたのは、ストーカー対策のためであった。「早目に入れておいてよかった......」と2人は思いながらアプリを起動する。若葉のスマホはまだ移動している事を示していた。新とダニエルは急いで靴を履くとGPSを辿りながら追いかける。その間にダニエルは直道に連絡を入れる。すると、「早退して今すぐ向かうからくれぐれも早まるなよ!」と言葉を投げてきた。しかし、GPSの動きが止まった事でこれは急がねばならない、と新とダニエルは直道に「待っていることはできません!」と通話を切るとダッシュした。なにせGPSの動きは車移動だったようで、スピードも早く、距離もどんどんと離れていってしまったのだ。「ここ......廃墟地じゃないか?」「?」「地元じゃ有名なヤバい場所だよ。直道さんも知ってるはずだからマップ送る」新がそう言うと一度立ち止まり直道にLINEする。するとすぐにダニエルのスマホが鳴った。相手は直道だ。「もしもし?!いいかお前ら、今、オレも向かってるから絶対2人で乗り込むなよ!」「でも......待ってる間にワカバに何かあったら......」「大丈夫だ。おれの今いる場所から廃墟地までそう距離はないから。慌てるな。一息ついて落ち着け。いいな?」スピーカーで聞いていた2人がそ
なんやかんやあったが、若葉達はリビングでそれぞれの宿題をし始めた。1時間が経過すると、新が「もうダメだ......疲れた......」と言ったため、休憩をする事にした。新がペンケースの蓋を開けるとダニエルは目敏く蓋に貼られたプリクラを見つけた。「アラタ、そのシールはなんデスカ?」「?あ、コレ?プリクラだよ」「ちょ......、そのプリクラってまさか......!」若葉がバッとペンケースを取り上げると"桜ちゃん"として行ったデートで撮ったプリクラであった。「ちょっと新!なんでこんなの貼ってるのさ!」「?この女性は?まさか......!アラタ、浮気デスカ?!」「違う違う!それ若葉だから!」「......そう言われて見るとたしかにワカバ...デスネ?そう言えばこの間、チアガールの格好してましたネ!」「ダ、ダニエル!シッ!」「......若葉さん?どういう事デスカ?」「球技大会で、その......。クラスメイトに頼まれて仕方なく......」若葉がもごもごと説明すると、新は「何それ、見たかった......!!」と項垂れるのであった。「う......そ、それはそうと!なんでプリクラ貼ってるのさ!恥ずかしいから取ってよ!」「えー、ヤダよ。せっかく可愛いんだからさ。ほら、ダニエル。この若葉可愛いだろ?」新はそう言うとクリアファイルにしまっていたプリクラを取り出しダニエルに見てきた。「oh......これはcuteデスネ!」「だろう?ダニエルなら分かってもらえると思ってたよ」新はそう言うとダニエルと肩を組んだ。「若葉の女装は本当にクオリティ高くて......。下手な女の子より可愛いんだよね。オレの友達も若葉の事女の子だと思ってるよ」「何もしなくてもワカバは可愛いデス!」2人に可愛い可愛いと言われ、若葉は段々いたたまれなくなってきた。恥ずかしさのあまり、唇を噛み締め、目を潤ませた。その顔を見られたくなくて、宿題のプリントで顔を隠そうとしたが、その手を新に取られてしまった。「!......離して!恥ずかしくて死ぬ!!」「ごめんごめん。若葉があまりにも可愛くて少しイジワルになっちゃったかな?」「......もうしない?」「しないしない。でもプリクラはオレにとってお守りだから許して、ね?」新はそう言うと若葉の頬にキスをした。ダニエルの見
リビングのソファーに2人で座り、抱きしめ合ったり、キスをしたり。そんな事を続けていると、新は我慢が効かずに若葉をそソファーに押し倒した。「あ、あらた?!...んっ」「ハハッ。くっきり付いた。」「え?何が?」「キ・ス・マーク♡」「なんてもの付けるのさ!」「冬休みなんだし、見られて困る物じゃないよ。」若葉が「ぐっ」と押し黙ると、新は引き続き"チュッ"と何個もキスマークを若葉の首筋から胸元まで散らしていったのだった。「んンッ......。くすぐったい。もう終わり!ステイ!」新が調子こいていると、若葉は新の脳天に鉄拳を加えた。新は若葉の上から降りると、頭をおさえてプルプルと震えていた。そうしていると、玄関のドアが"ガチャリ"と開き、ダニエルがコンビニ袋を持って入ってきたのだった。「ただいまデース!肉まん買ってきマシタ!皆で食べマショ!......ん?アラタ、何してるんデスカ?」「な、なんでもないよ。肉まんありがとう」新は涙目になりながら立ち上がると、ソファーへと腰掛けた。すると分かりやすく若葉に距離をとられ、新は"ガーン"っと頭に金ダライを落とされた気分になった。「若葉ァ......ゴメンて......。ゆるしてよ。オレだって健全な男子高校生だよ?これくらい勘弁して......?」「......分かった。オレもゴメン。...で...も、もう少しゆっくりがいいな」「ハイ......」「ゆっくり?何がデスカ?」「だ、ダニエルは知らなくていい事なの!大丈夫だからね?ホラ、冷める前に肉まん食べよ?」「おれ、お茶入れてくる!」そう言ってキッチンへと行く若葉の顔は何時にもなく真っ赤であった。それにダニエルは何かを察したようで、新にウリウリと肘を押し当ててきた。「私がいない間にイチャイチャしすぎて、ハメを外しちゃいマシタカ?」「ぐっ......なんで分かるんだよ......。」「2人の顔を見ればいちもくりょーぜんデス!」「まぁまぁ、肉まんで元気出して下サーイ!」とダニエルから慰められる新なのであった。「2人揃って何話してるのさ」「ワカバ!アラタも年頃のボーイデス!どうか怒りをしずめて下サーイ!」「ちょっと!新、ダニエルに話したの?!」「ドードー。ワカバ、私が気づいただけなので、アラタを責めないで下サイ!」若葉はダニエルに悟され、怒り
天気は快晴。見事なまでの学園祭日和。そんな天気とは裏腹で、若葉のテンションはどんよりと曇っていた。「...とうとう来てしまった...。せめて雨でも降って来客数減ってくれればよかったのに...。」若葉が誰にも気づかれないように本当に小さく呟いたのだが、地獄耳のクラス委員長がその呟きを聞き逃すハズがなく。「なんてことを言うの佐倉君!学園祭と言えば晴れと決まっているものよ!そして、この学園祭に来たお客さんを1-3に集客するのよ!そ・の・た・め・に!桜ちゃん!よろしくね!」「...ハァ...」クラス委員長の言葉をかわきりに、クラス中から「桜ちゃんよろしくね!」「期待してるぜ!桜ちゃん!」と
どこを見ても男、男、男。男子校とはむさ苦しく悲しい場所である。マンガの様に美人な若い女性教師が居るわけでもない。そんな中で3年間過ごすというのは、青春を送る若者には酷な話しである。授業中も落ち着きなく騒がしい中、新は回ってきたマンガの最新巻を読んでいた。すると、高校に上がってから仲良くなった斉藤が声をかけてきた。「新ぁー、お前、今月末の土曜ヒマか?」「土曜か...。なんも無いけど何?合コンでも開いてくれるん?」斉藤はこの辺りの高校に顔が広いため、よく合コンを開いたりしているのである。「いやいや。今回は合コンじゃなくて(笑)オレの中学の親友が桜ヶ丘に通ってんだけどさ。その日学園祭らしく
出し物が決まった翌日のホームルーム。さっそく若葉は女子達の着せ替え人形と化していた。どこから持って来たのかという程の大量の衣装達。様々なメイド服やゴスロリ、チャイナ服まで。ウィッグもロングを中心にいろんな髪型が揃っていた。「...チョット、まさかコレ全部オレが着るわけ...?」と、着せ替えが始まる前、若葉が恐る恐るクラス委員長に尋ねた。すると、彼女は目をこれでもかと見開き、「何を言っている?」と言わんばかりの表情を浮かべた。「佐倉君。クラス優秀賞は君にかかっていると言っても過言では無いのよ?そのためにはお客様に喜んでもらえるようにいろんな姿を見せる必要があるの。おわかり?」「...わ
学校行事の花形と言えば、学園祭だ。1年生にとっては入学して初めての学園祭なので、どのクラスもテンションが尋常でなく上がっていた。それは若葉のクラスも例外ではなく、出し物を何にするかで白熱していた。若葉はさほど興味がなく、ぼう、と外を眺めていた。だがそれがよくなかった。気づいた時には、出し物は喫茶店。若葉の担当はホールキャスト。若葉は血の気がサァっと引き、大声で「ムリムリ!」と声を上げ立ち上がった。しかし、クラス委員長はそんな若葉の元へと行くと、ヒョイっとメガネを取り上げた。「佐倉君。君の可愛らしさを活かして是非とも客寄せパンダになっておくれよ。大丈夫。当日は可愛らしさを倍増させてあげるから