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第7話

Author: 六花
「船に関する監査権限を全部お前が持ってるのは分かった。今回の調査申請、取り下げられないか?」

「6年間、父が遺したものには一度も興味を持たなかったのに、問題が起きた途端、私の権限が怖くなったんだね。もう遅いよ」

直哉は通知をテーブルに置いた。その顔には、初めて本当の焦りが浮かんでいた。

「凪紗、このまま調べさせるのは駄目だ」

「昇格に響くのが怖い?」

「違う」

直哉は少し間を置いた。

「船全体に影響が出る」

私はじっと彼を見た。

「やっと、自分以外にも船のみんながいるって思い出したんだ」

直哉は近づいてきて、私の肩をつかんだ。

「一度だけ、俺の言うことを聞いてくれ。澪のことは俺が片づける。渡したものも全部取り戻す。だから申請を取り下げてくれ」

「取り下げたら、また私の印鑑を勝手に使うの?」

直哉の顔が灰色になった。

「俺が悪かった」

彼が自分の非を認めたのは、これが初めてだった。

けれど、私を傷つけたからではない。私の手に、彼を慌てさせるだけの権限があると分かったからだった。

澪から会いたいと連絡が来た。場所はまた、汐見ベイレジデンスの一階にあるカフェ
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    「船に関する監査権限を全部お前が持ってるのは分かった。今回の調査申請、取り下げられないか?」「6年間、父が遺したものには一度も興味を持たなかったのに、問題が起きた途端、私の権限が怖くなったんだね。もう遅いよ」直哉は通知をテーブルに置いた。その顔には、初めて本当の焦りが浮かんでいた。「凪紗、このまま調べさせるのは駄目だ」「昇格に響くのが怖い?」「違う」直哉は少し間を置いた。「船全体に影響が出る」私はじっと彼を見た。「やっと、自分以外にも船のみんながいるって思い出したんだ」直哉は近づいてきて、私の肩をつかんだ。「一度だけ、俺の言うことを聞いてくれ。澪のことは俺が片づける。渡したものも全部取り戻す。だから申請を取り下げてくれ」「取り下げたら、また私の印鑑を勝手に使うの?」直哉の顔が灰色になった。「俺が悪かった」彼が自分の非を認めたのは、これが初めてだった。けれど、私を傷つけたからではない。私の手に、彼を慌てさせるだけの権限があると分かったからだった。澪から会いたいと連絡が来た。場所はまた、汐見ベイレジデンスの一階にあるカフェだった。ダイヤのジュエリーは身につけていなかったが、手首にはあの波をモチーフにしたブレスレットがあった。「凪紗さん、なかなかやりますね」私は席に座った。「あなたも、ずいぶん大胆だね」澪は笑った。「直哉から全部聞いたんですか?」「何を?」澪は椅子の背にもたれた。「直哉、もうすぐ統括船長に昇格するんですよ。今こんなことをしたら、彼の将来も、自分の生活も駄目にするだけじゃないですか」「私の生活なら、もう十分めちゃくちゃにされてるよ」澪の顔が曇った。「本気で離婚するつもりなんですか?」「うん」澪は私をじっと見た。「じゃあ、何が欲しいんです?お金?家?それとも、直哉に土下座でもさせたい?」私は水を一口飲んだ。「本当のことが知りたいだけ」澪は鼻で笑った。「本当のことなら簡単ですよ。直哉はもう凪紗さんを愛してない。でも、妻にしておくなら凪紗さんが都合いいんです。大人しくて、言うことを聞いて、ご両親の面倒も見てくれる。直哉に面倒をかけないから」「ずいぶん嬉しそうだね」「そりゃ嬉しいですよ。私は一人で帰りを待たなくていい

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