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第5話

Penulis: ちょうどいい
玲子は弁護士の大野との電話を切って、振り返ると、昌彦がベビールームから出てくるのが見えた。

玲子の姿を見つけると、今さらのようにその存在を思い出したふりをして、わずかに気まずそうな表情を浮かべ、さりげなく言った。「玲子、トップクラスのインテリアデザイナーを探してくれ」

玲子は動かず、ただ静かに彼を見つめていた。

昌彦は彼女を一瞥すると、すぐに視線を逸らし、まるで自分に言い聞かせるように話を続けた。

「さっき気づいたんだけど、ベビールームのものがいろいろ合ってないんだ。プロに頼んで一からやり直してもらおう」

玲子は淡々とした表情で彼を見つめ、何も言わなかった。

――本当に「合ってない」のか?それとも麻里子の好みに合わないだけ?

昌彦、ついに見せかけの演技すらしなくなったのか。

彼女はゲストルームに戻り、かつて大切に飾っていた、彼から贈られた品々を一つずつ取り出しては、壁際の金属製の火鉢に放り込んだ。

もう離れると決めたのだから、以前昌彦がくれたこれらの物も、もう存在する意味はない。それに、麻里子に残していくのは、きっと彼女が気味悪がるだろう。

炎が、バレンタインの日にもらったオルゴールを覆い、たちまち精巧なバレリーナの人形を包み込んでいった。

「やめて!」

玲子は勢いよく突き飛ばされた。

薄着の寝間着の麻里子が突然現れると、火の粉も厭わず火鉢に手をかけ、中身を取ろうとしている。

「玲子さん、どうして私の物を燃やすの?」

玲子の動きが止まった。

彼女の物?

「玲子さん、どうしてそんなひどいことをするの?」

麻里子は涙まみれで、怯えた様子を見せながら哀願した。

「私にはもう、これしか思い出が残っていないのに、どうしてそれさえも奪おうとするの?あなたにはもう昌彦さんがいるじゃないか。これからはまた私の子供の母親になるっていうのに……」

麻里子の言葉が終わる前に、昌彦の大きな体がドアに現れた。

彼は散らかった部屋と泣きじゃくる麻里子を見て、顔色を一瞬で険しくした。「玲子、お前はいったい何をしたんだ?」

玲子はただ彼を見つめ、何も言わなかった。

その沈黙は、昌彦の目には麻里子をいじめたことを認めたように映った。

彼の瞳の輝きが曇り、失望の色を深めていった。

玲子はふっと笑った。軽やかな笑い声が、針のように胸に刺さる。

彼女は背を向けて階段を上り、しばらくして、まったく同じ形のアクセサリーケースを手に戻ってきた。中には、まだ処分していなかった贈り物がすべて入っている。それを麻里子の目の前に放り投げる。

「これ、全部あんたのもの?

好きなの?

じゃあ、全部あげる」

昌彦の胸がドクンと跳ねた。

玲子の目元に浮かんだ笑みは、瞳の奥までは笑っていなかった。その冷たい眼差しに、強烈な不安が彼を襲った。

嫌な予感に心がざわつき、思わず彼女の手を掴もうとした、その瞬間――

「昌彦さん……」麻里子が弱々しく彼の腕を引いた。潤んだ瞳で見上げながら、かすれた声で言い出した。

「もういいの……ここにいられるだけで十分幸せよ。玲子さんが全部燃やしちゃっても、仕方ないわ……」

「そんなわけないだろ。でも……もういい、燃やしても構わない。新しいのを買ってやるよ」

昌彦の考えが一瞬で吹き飛んだ。麻里子の青ざめた顔を見て、とっさにその体を支えた。

二人はこれまで数え切れないほどの困難を乗り越えてきた。玲子が自分のもとを去るはずがない。

ドアが閉まり、世界は再び静寂を取り戻した。

スマホがピンと鳴る。昌彦からのメッセージだった。

【玲子、俺が戻るまで待ってて。話をしよう……もう少しだけ我慢してくれ。俺のためだと思って、最後のひと踏ん張り、いいか?】

その後、昌彦は数日間戻らなかった。

その日の午後、玲子は戦場記者連盟の責任者とビデオ通話をしていた。

「松島さん、君の入職延期の申請は受け取りました」

画面の向こうの男の声は穏やかだった。

「私たちは完全に理解しているし、出産後に復帰することを承認します。子どもは神様からの贈り物ですからね」

「ありがとうございます」

玲子の顔に、久しぶりに柔らかな笑みが浮かんだ。

ドン――!

寝室のドアが蹴破られた。

昌彦が麻里子を連れて、冷気をまとったまま飛び込んできた。手にしたスマホを玲子の目の前のテーブルに叩きつけた。

「玲子!」彼の血走った両目は、怒り狂った獣のようだ。「そこまで彼女を許せないのか?なぜ彼女をいじめるような人間をけしかけたんだ?」

玲子は視線を落とし、スマホを手に取った。

画面には、無数の動画と写真が映し出される。

麻里子が拉致され、服を引き裂かれた惨めな姿。ネット上では「愛人奪い」とののしる嘲笑の嵐。そして、病床で包帯だらけの手首を晒す、痛ましい自傷の画像に至っては、見る者に強い衝撃を与えている。
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