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第12話

Author: みっつ
あれから1ヶ月。

残る手続きを終えるため、私は再び東都へ戻った。

尋は約束の時間より2時間も早く来ていたらしい。

私が着いたとき、彼は手には赤いバラの花束を持って役所の前に立っていた。

ありきたりだけど、どこか情熱的な花束。

昔の私は、こういう花が好きだった。

でも尋はほとんど贈ってくれなかった。

花なんて実用的じゃない。

そんなものを買うくらいなら、生活用品を買ったほうがいい。いつもそう言っていた。

今になって、ようやく買ってきた。

でも私はもう、欲しくなかった。

私を見つけると、尋の目が一瞬だけ明るくなった。

「寧々」

私は静かに頷く。

「入ろう」

尋は花束を抱えたまま動かなかった。

「その前に、少し話せないか?」

「無理」

私は即座に否定した。

尋が息を詰まらせる。

「10分だけでいいんだ。玲奈はもう辞めさせた。

転勤じゃなくて、解雇にした。

あいつ、社内で俺のことを言いふらして、メッセージの履歴まで同僚に見せたんだ。

周藤社長もかなり怒ってるし、昇進は完全になくなって、担当してた案件も外されたよ……

自業自得だって分かってる」

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    あれから1ヶ月。残る手続きを終えるため、私は再び東都へ戻った。尋は約束の時間より2時間も早く来ていたらしい。私が着いたとき、彼は手には赤いバラの花束を持って役所の前に立っていた。ありきたりだけど、どこか情熱的な花束。昔の私は、こういう花が好きだった。でも尋はほとんど贈ってくれなかった。花なんて実用的じゃない。そんなものを買うくらいなら、生活用品を買ったほうがいい。いつもそう言っていた。今になって、ようやく買ってきた。でも私はもう、欲しくなかった。私を見つけると、尋の目が一瞬だけ明るくなった。「寧々」私は静かに頷く。「入ろう」尋は花束を抱えたまま動かなかった。「その前に、少し話せないか?」「無理」私は即座に否定した。尋が息を詰まらせる。「10分だけでいいんだ。玲奈はもう辞めさせた。転勤じゃなくて、解雇にした。あいつ、社内で俺のことを言いふらして、メッセージの履歴まで同僚に見せたんだ。周藤社長もかなり怒ってるし、昇進は完全になくなって、担当してた案件も外されたよ……自業自得だって分かってる」尋は自嘲するように笑った。「今の俺には、もう何もない」私は尋を見た。「仕事はあるでしょ。家もあるし、あなた自身も残ってる。まるで私が何か奪ったみたいに言わないで」彼の表情が苦痛に歪んだ。「そういうつもりじゃない。ただ伝えたかったんだ。玲奈とは完全に終わったし、もう二度と、ほかの女には目を向けない」私は淡々と答える。「それはあなたの問題で、私には関係ない」尋が花束を強く握った。指先も白くなっている。「寧々、本当にもう少しも情は残ってないのか?」私は役所の中を見た。中で泣く人、笑う人。手をつないで入っていく人もいれば、背を向けて別々に出ていく人もいる。私も昔は、自分たちがここへ来るなんて思っていなかった。もしかしたら、人生で一番苦しいのは、心から信じていた相手に、その信頼を自分の手で壊されることなのかもしれない。私は静かに言った。「情ならあったよ。7年間、ずっと。だからもう、私の心が揺らぐことなんてない。これは当然の報いなの」尋は目を赤くして私を見つめる。「そんなふうに言うなよ」私はもう答えずに、そのま

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