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第298話

Auteur: ラクオン
どの言葉からだったか、梨花は呼吸することさえ忘れていた。

体のどこが苦しいのかもわからないまま、彼女はゆっくりと頭を下げ、腰をかがめて息が詰まりそうな感覚を和らげた。

ずっと、竜也を責めていたはずなのに。

それなのに、こんな話を聞くと、頭が反応するより先に体が反応してしまう。

彼が傷ついたと聞いて、自分の体までが苦しさを感じるなんて。

かつての九年間が、これほど深く影響を受けたとは、思いもよらなかった。

梨花は必死に涙をこらえていた。

今泣くのはよくない、みんなの食事の雰囲気を台無しにしてしまう。

しかし瞬きをすると、涙はやはり地面にこぼれ落ちた。

綾香も大家族のいざこざについて多少は耳にしていたが、これほど生々しい話を聞くと、さすがに驚きを隠せず、しばらく呆然としていたが、やがて梨花の異変に気づいた。

菜々子はティッシュを一枚取って綾香に渡し、梨花に渡すよう目配せした。

綾香がそっと声をかける。「梨花?」

「ごめんなさい」

梨花はティッシュを受け取ったが、顔も上げず、慌ててまつ毛の濡れを拭った。

ようやく顔を上げて、彼女は笑ってみせた。

「急に、両親のことを思い出してしまって」

綾香は察し、菜々子に説明するように取り繕った。

「この子の両親も、交通事故で亡くなったんです」

菜々子も、わかっていながらあえて触れなかった。

ちょうど店員が料理を運んできたタイミングで、彼女はすぐに声を張った。

「さあ、いただこう。ここのスープ、美味しいよ」

食事を終えると、綾香は事務所に戻り、梨花と菜々子は一緒に黒川グループへ向かった。

一人は研究開発部へ、もう一人は社長室へ。

幸い、道中は様々な思いが頭をよぎったが、実験室に入ると、すぐに余計な雑念を振り払い、仕事に没頭することができた。

今すべき最優先事項が何か、彼女は誰よりもわかっている。

しかし、夜になって仕事の手を止めると、菜々子の言葉がまるでリピート再生のように、脳内で何度も繰り返された。

弾丸が体に撃ち込まれた瞬間が、一体どんな感覚なのか、彼女はあまり想像したくなかった。

あの時、竜也はどれほど痛かっただろう。

あれほど潔癖でこだわる竜也のことだから、ベッドに寝たきりになる無様な姿だけでも、彼にとっては耐え難かったのではないだろうか。

和也は今夜、隼人を食事に連れて
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