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第353話

Penulis: ラクオン
梨花は外来診療を終え、適当に食事を済ませると、車で研究所へと向かった。

今日は、治験薬のフィードバックデータが出る日だ。

「梨花、データが出たよ」

梨花が研究所に着いてバッグを置いたところへ、和也が嬉しそうな顔で入ってきた。

だが、彼女と目が合うと、すぐさまその表情を曇らせた。

弘次が振り返ると、ちょうど和也が浮かない顔をしているのが目に入った。

彼は笑いながら尋ねた。

「和也さん、データはどうでした?佐藤リーダーと予想していた通りでしょう?」

「予想通りなもんか」

和也はため息をついた。

「違いすぎる。被験者の状態があまり良くないんだ」

梨花は眉をひそめた。

「見せて」

彼女は資料を受け取って目を通すと、顔色を曇らせた。

弘次は音を立てずにほっと胸をなで下ろした。

何か慰めの言葉をかけようとした瞬間、携帯電話が鳴り出した。

着信画面を見た彼は、一瞬にして緊張した面持ちになった。電話に出ながら外へと歩き出す。

「もしもし、母さん?昼間は仕事中だって言っただろ……」

人気のない非常階段まで行くと、彼は録音ボタンを押し、声を潜めた。

「黒川側のデータが出ました。確かに、あまり良くないようです」

電話の向こうで、桃子は喜ぶどころか失望したような声を漏らした。

「良くないだけ?被験者に何か副作用は出てないの?」

本来なら、梨花が臨床試験申請のために提出したデータは、弘次がすり替えたものだ。

ここ数日で、被験者に強烈な副作用が出始めるはずだ。

弘次は首を横に振った。

「はっきりとは分かりませんが、和也さんも佐藤リーダーも、かなり顔色が悪かったので……」

「わかったわ」

桃子の表情が和らいだ。

「なんとかして、詳しい状況を探りなさい」

もし梨花たちがこの不祥事を隠蔽しようとするなら、遠慮なく世間に公表してやるつもりだ。

研究界の期待の星である梨花の名声を、地に落としてやるために。

弘次が遠ざかるのを待って、和也と梨花は顔を見合わせて微笑んだ。

「おめでとう!フィードバックデータは最高のものになった。君の予想通り、いや、それ以上に効果が出るのが早い」

梨花は手元の資料を置いた。

「順調にいって、早く発売できるといいんですけど」

発売されて初めて、本当に安心できるのだ。

「きっと大丈夫さ」

和也はドアの方を一
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