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第509話

Penulis: ラクオン
竜也にもまだ、体面を保とうとする理性は残っているらしい。

そうでなければ、単なるキスだけで済んでいるはずがない。

だが、これ以上彼の忍耐力を試すわけにはいかない。

「も、もう一回呼べばいいんでしょ?」

かつて、ドア一枚隔てた向こうに人がいる状況で、長いことキスをされたことがあるのだから。

竜也は頷いた。

「ああ」

梨花は一刻も早く逃げ出したくて、何の感情も込めずに早口で言った。

「お兄ちゃん」

実におざなりな言い方だ。

「竜也?」

突然、洗面所のドアがノックされ、海人の意味ありげな声が響いてきた。

「ずいぶん長い手洗いだな。そろそろご飯だぞ」

梨花は穴があったら入りたい気分になり、羞恥と怒りで竜也を睨みつけると、身をよじって逃れようとした。

「すぐ行く」

竜也は適当に声を張り上げて返事をしたが、腕を緩める気配はない。

彼女を見つめたまま、「心がこもってない。やり直し」と告げた。

注文の多い男だ。

外で待たせている二人のことを思い、梨花は焦った。

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!これでいいでしょ?」

それだ。

その口調こそ、幼い頃の彼女そのものだ。

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