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13食目・異世界最初の夜ご飯

Author: 柊雪鐘
last update Huling Na-update: 2025-11-30 08:00:58

 店員さんはエリザさんの注文に、それはもう明るい笑顔で「では失礼いたします」と頭を下げてテーブルをふたつ挟んだ対面の壁の奥――厨房へと向かう。

 ウエスタンドアのような扉の奥から、「オーダー、シェフのおすすめとバサームです!」と聞こえた。

 シェフたちの姿は見えないけど、注文が入ったそばから人が動く物音がかすかに厨房から聞こえる。

 明るい内装に落ち着いた店内、人はまだ2,3人だけど辺りを見回すとテーブル数がかなりあるから人がよく入るお店なのかもしれない。

 周りを気にしているとさっきの店員さんがやってきて、「失礼いたします」とカトラリーを音もなく置いて行った。

 凛とした姿で丁寧な様子はまるで、格式高そうなレストランのようだ。

「ところでエリザさん、バサームってどんな料理なんですか?」

「ふふ、気になる?バサームはね、柔らかいバケットに野菜やお肉を挟んだお料理よ。普通のバサームは自分でソースを選んで買わないといけないのだけど、ここのバサームは持ってきてくれる3種類のソースをこっちが好きにかけていいの。途中で味を変えることもできるのよ!どれも美味しいの~っ」

「そうなんですか。それは楽しみです」

 ずっと朗らかな笑顔を見せていたエリザさんの表情が、うっとりとしたものに変わった。

 まるで恋焦がれているような、待ち遠しいような、その様子を見てるとどれだけ美味しいものなのだろう、と自然に想像してしまう。

 柔らかいパンで野菜やお肉を挟むなら、サンドイッチのようなもの?

 名前のバサームは『挟む』っぽいニュアンスに聞こえて馴染み深い。

 異世界の野菜、一体どんなものが出てくるのだろう、と考えると、つい興味が湧いてしまう。

 そして体は正直なようで、「ぐううぅぅぅう」と特大の腹の虫が鳴ってしまった。

「あらあら!うふふ、役所の手続きって疲れちゃうわよね。今日この一日で大事なことはぜーんぶやり切っちゃったから、あとは美味しいご飯を食べてゆっくり休みましょっ」

「あはは……はい、そうします」

 笑われてしまってちょっとだけ恥ずかしいな。

 でも、そう言われると確かに今日は怒涛の一日。

 更にこの世界に馴染むよう色々と手続きをしたんだもん、お腹も減るし疲れが出るのも当然なのかも。

「さ、まずは乾杯よ。改めて、今日からよろしくね。ルシーちゃん」

「こちらこそです」

 お互いお水の入ったグラスを手に取って、コツンとグラス同士を鳴らす。

 この流れはどこの世界でも同じなのだろうか。

 寧ろどこか安心できるようで有難い気持ちに浸れた。

 そこへ「お待たせいたしました!」と明るい店員さんの声が聞こえた。

「前、失礼しますね。お先にバサームです!本日のソースは赤いソースがオリヴァーオイル・トマレッティ、緑のソースがヴァージル、黄色のソースがツィーザとなってますっ」

「あら、良い所に来たわね。ありがとう」

 店員さんの声に合わせてテーブルには料理が並べられていく。

 大皿にはコッペパンのような手の平ふたつ分の長いパンが2個、中にはいろんな物が挟まれているようで、見ただけで葉っぱやベーコンのような薄いお肉がはみ出ている。

 そして一緒に置かれたのはタレ用の小皿3つをまとめたような、角の丸い三角形のお皿。

 店員さんが言った通り、それぞれ三色のソースが入れられている。

 「じゃあいただきましょう」というエリザさんの掛け声でバサームを手に取る。

 それだけでニンニクのような香ばしい匂いが漂ってきた。

「い、いただきます……!」

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