「はい、ルシーちゃんお待たせ!この世界のお料理が、お口に合うと思うのだけど」エリザさんは嬉しそうに抑揚のある声で目の前にご飯を並べた。出てきたのはパンとスープ、パンは外側がバリっと硬くて中はふわふわのパン、スープは抹茶みたいな薄い緑色に白いクリームのようなものがかけられている。これが異世界飯、と言いたいけど少しだけ既視感がある。ちなみにルシーとはルシェットの略称みたい。今後はどうやらルシー、と呼ばれることになりそうだ。「えっと、いただきます」「召し上がれ」手を合わせてまずはスープを一口。スプーンで掬うと少しだけとろみがあって、口に入れればほんのり甘くて豆の味がする。エンドウ豆のクリームスープ、って感じかな。「美味しいです。豆のスープですか?」「あ、分かる?ルシーちゃんの世界にもあるのねえ。ズンダー豆を砕いて濾したスープなのよ」ズンダー豆。……ずんだ?「ず、ずんだ…」「ルシーちゃんの世界ではあまり見ないかしら?昔はエフェニア地方で採れた豆だからエフェニア豆、なんて言ってたけど、私が小さい頃にはこっちに来た転生者が『ずんだの味だ』って言うから、その語感を気に入ってズンダー豆って呼ばれているのよ。確かニホンって世界から来た人だったと思うのだけど」ずんだはどうやら本当にずんだ餅から来てるみたい。話を聞く限り転生者は多いようだから、もしかしたら他のものでも馴染みのある物や音はあるのかもしれない。異世界なのに既視感があって、なんだか不思議な感覚だ。「異世界から来た人の言葉がこっちで浸透することってあるんですね」「この王国は特にだけど、実は意外と多いわよ。ルシーちゃんも通った召喚術式が呼び出す世界なんだけど、2,3つの世界から死んだ人を定期的に呼んでるからなの。フォス=カタリナ人、特に私たちエルドアマリナ王国の人間は、そんな彼らを受け入れる義務があるの。それは言語や文化も同じよ。でも異世界の文化って結構面白かったり、フォス=カタリナの元々の言語が発音が難しいこともあって、わりと異世界の言葉や文化が浸透しがちなのねぇ」「はえー、そうなんですか」行儀が悪いけど、スープを口にしながら異世界のお勉強をさせてもらってる気分。来たばかりだから仕方ないけど、この世界をもっと知らないとだめだな……。この世界で生活するんだから、もっとお話聞いておき
Last Updated : 2025-11-01 Read more