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14食目・『定番のバサーム』

ผู้เขียน: 柊雪鐘
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-12-01 08:00:59

「はぐっ……!ん、んんん~~!」

 まずは一口、何もつけずそのままの状態で口に運んだ。

 長いパンの外側はザクっとしながらも歯切れがよく、中はふわっとしている。

 そしてそんなパンに挟まれている新鮮なレタスと玉ねぎ、香ばしく焼かれたベーコンの味が広がった。

 更には鼻腔を通ってニンニクの香りが漂って、とても美味しい。

「どう?お口に合うかしら?」

「とっても美味しいです!」

「本当?嬉しいわ!次は是非、こっちのソースをつけて食べてみて。私のオススメはトマレッティよ」

「じゃあ早速失礼しますね」

 エリザさんのオススメに沿おうとパンを持ち上げる、ものの……ただでさえ長いパンを浸すのもなんだか嫌だな。

 しかも口をつけてるし、エリザさんが気にしたらどうしよう。

 そんな一瞬の迷いの間に、エリザさんは「これをどうぞ」とスプーンを手渡してくれた。

 なるほど、スプーンでかければいいのか。

「ではいただきます!……――んむむ!」

 トマレッティと呼ばれるものの赤いソースをすくって、バサームの切れ込みにかけて一口。

 美味しい下地にトマトとオリーブオイルがマッチしたソースの味が加わって、一気にイタリアン感が増した。

 なるほど、トマレッティはトマト、オリヴァーオイルはオリーブオイルのことだ!

「私が住んでいた世界の、異国の料理にもこんな味付けの料理がありました!私も好きです!」

「そうなのね?なんだか嬉しいわ」

 次は緑色のソース。

 確かヴァージルって言ってたっけ。

 この調子なら名前で予想がつきそうだけど、とりあえずトマレッティ同様ソースをかけてみる。

 匂いから、すでに感じるアレ。

 食べる前からさっきのトマレッティのソースに合うのではないかと思ってしまう。

 それでも、食す……!

「はぐっ……んむ、美味ぁ……」

 鼻に抜ける独特の香りとほんのり甘くて爽やかな風味、ベーコンレタスサラダが一瞬にして高級料理に昇華したような感覚。

 これは――パスタだ。

 トマトに続いてバジルまで、これはもう、合わさざるを得ない。

「トマレッティのソースとヴァージルのソースを一緒に……!?どんな味なのかしら、私も……!」

 うわあ、どうしよう。本当に美味しい。

 おもむろに2つのソースをかけて齧り付く私に続いてエリザさんまでソースをかけて、口に運ぶ。

 するとエリザさんの目が輝いた。

「そんな……この2つのソースが合わさるとこんなに美味しいなんて……!ルシーちゃん知ってたの?ほら、最後!こっちのソースも食べてみて!」

 うっとりした様子のエリザさんは満足だったらしい。

 急かすように最後のソースを私の前に向くよう回した。

「じゃあ、失礼します……!」

 エリザさんに言われるがまま、最後のソースをすくってバサームにかける。

 赤はサラサラとしたソース、次の緑はトロッとしたソースだったけど、今回はその比じゃない。

 ドロリ……を越えて最早ねっとりとしたソースをかけて一口……私の意識は昇天した。

「……美味しい……」

 それは、言葉を失うほど。

 そして、気付いてしまった。

 全部合わせたら絶対に美味しい味となるのだ。

 トマトにバジル、そこにチーズが入ったらそれはもう確実にピザである。

 そこに抗う理由がどこにあろうか。

 試さざるを得ない。いっそパンを開き、全てのソースをかけていく。

 これは最早私の欲。

 美味しいと分かったらやらなければいけない、食に強欲な日本人のさがである。

 そして予想通り、否、予想を超えて自分の知らない極致へと辿り着いた。

「まあ……ソースを、全部……」

「エリザさん、騙されたと思って食べてみてくれませんか」

「わ、わかったわ」

 驚くエリザさんはゆっくりと、たどたどしい手つきでソースを全てかける。

 そして、目を見開いた。

「なあに?これ……! すごい、こんなに美味しいだなんて……!」

 どうやらこの世界の料理は、私たちがいた世界とそう、違わないみたい。

 なんなら風味はそのまま、美味しさだけが上乗せされたような気分だった。

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