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第8話

Penulis: またり鈴春
last update Terakhir Diperbarui: 2025-03-01 02:23:28
さっきの番組が生放送?

「え、あれ……?」

混乱する私に、皇羽さんは伏し目がちにため息をつく。

「この番組は、いつも生放送なんだよ。もしも俺がレオなら、今ここに俺はいられないだろ?」

「確かにそうですが、でも!」

うり二つだよ⁉皇羽さんの髪色を変えたら、まんまレオじゃん!猫っ毛な黒髪の皇羽さんと、マッシュ型なアッシュ系金髪のレオさん。髪を除けば、ピッタリすぎるほど二人が綺麗に重なる。

「まさかドッペルゲンガー?」

「……言うと思った」

皇羽さんは呆れ半分で「よく間違われる」と、テレビの画面を消しながら答えた。

「そっくり過ぎるから、よく道端で声を掛けられるんだよ。あまりの似具合に”人違いです”ってのも通じねぇから、外では帽子かぶってんだ」

「まるでアイドルですね……」

「うるさい」

にわかには信じられないけど、だけどテレビ局を疑うことも出来ず。皇羽さんとレオは別人なのだと、考えざるを得ない。

「じゃあ、皇羽さんは Ign:s じゃないんですね?」

「そう」

「アイドルでも無いんですね?」

「そーそー。俺を信じろって」

ホッ――と安堵の息をつく私。そして「現金な奴」と思われるのを承知で、皇羽さんに向かって頭を下げた。

「正直、今の私が頼れるのは皇羽さんしかいません。私を置いてくれたら家事をするので、一緒に住まわせてください」

「……」

「お願いします……っ」

ソファから降りて頭を下げると、皇羽さんもソファから降りたのか「ギシッ」と音がする。次の瞬間、何かがふわりと私を温かく包み込む。まあ何かって、分かっているんだけど。

でも分かりたくなかった。だって私を包んでくれるこの温かさに、不覚にも安心してしまったから。

「萌々」

「はい……」

皇羽さんに抱きしめられて安心する私がいるなんて、知りたくなかった。だって皇羽さんは私のファーストキスを奪った人。口は悪いし強引なところがある、とんでもない男の人。それなのに……

「今日から離さないから、覚悟しとけよ」

「ッ!」

こんな事をサラリと言ってしまう皇羽さんの事を、詳しく知りたくなっている私がいる。この人はどういう人でどんな生活をしているのか、興味が湧いている。

あぁもしかして私は、とんでもない場所に来てしまったかもしれない。

――抱きしめられたまま、どれくらい時間が経っただろう。気づけば私は皇羽さんの背中に手
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