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第93話

Penulis: またり鈴春
last update Terakhir Diperbarui: 2025-06-17 11:19:28

「玲央さん、コンサート楽しいですか? 楽しめていますか?」

 聞くと、玲央さんは「うん!」と。

 子供みたいに無邪気な返事をする。

『こんなにワクワクしたコンサートは初めてだよ、楽しくて仕方ないんだ』

「そうですか、よかったっ」

 玲央さん――

 私を探すためにアイドルになった人。

 思えば、玲央さんの言動にも引っかかる所はいくつもあった。

――そう言えば、私いつ怜央さんに自己紹介したっけ?

 名乗ってなかったのに、玲央さんが「萌々ちゃん」と私の名前を口にしたこと。

――好きだよ。皇羽は萌々ちゃんの事

――な、んで。どうしてわかるんですか?

――ふふ、秘密

 皇羽さんが私の事を好きだと、既に知っていた事。

――萌々ちゃんが可愛くて仕方ないんだよ。どんな時も、一人にさせたくないって思っているんだ。あの時から

 私が一番つらかったあの日を、まるで実際に見たように知っていた事。

 私と皇羽さんが出会った日に、玲央さんは、私の事を皇羽さんから聞いていたんだ。

 そして私を探すためにアイドルになり、レオになり……

 不完全なアイドルとしての自分に悩んで葛藤し、一人静かに苦しんで来た。

「私のせいで玲央さんの人生がめちゃくちゃになったんじゃないかって、不安でした」

『むしろ逆。君は俺に生き甲斐をくれたんだ。本当に感謝してもしきれない。

 だからこそ俺は、やっぱり萌々ちゃんの事が好きだよ。いくら皇羽の婚約者でもね』

 しれっと告白する玲央さんに、思わず笑みがこぼれる。すると会話を聞いていた皇羽さんが「おい」と、隣で口をひきつらせた。

「なに堂々と横取りしてんだよ」

『コンサートに遅刻する人が、四の五の言わないでほしいなぁ』

 悔しがる皇羽さんを想像したのか、玲央さんは「遅刻した罰だから、これくらい言ってもいいでしょ」と笑う。

『ねぇ萌々ちゃん。皇羽が嫌になったら婚約破棄して、いつでも俺の所においでね。顔がそっくりだから嫌な思いをさせるかもしれないけど、それ以上に大事にするから!』

「は、はは……」

 たぶん割と本気で言ってるのが、玲央さんのすごいところ……。

 乾いた笑いを返すと、玲央さんが「コンサート楽しんでね!」とマイクを切る。

「玲央さん……私こそ、ありがとうございます」

 私と出会ってくれて、アイドルになってくれてありがとう
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