Se connecterサミヤ視点
全員の視線が自分に注がれているのを感じたが、私の眼差しはまっすぐ前だけを見つめていた。頭の中でスカーレットが荒れ狂っているのを感じたが、私は彼女を無視して一歩前に踏み出した。
アルファ・ザインの鋭い視線が一瞬たりとも私から外れないのに気づき、私は彼の一番目の前まで進み出ると、深々とお辞儀(カテシー)をした。「おはようございます、アルファ」
「ついて来い」彼はそう命じ、ほんのわずかに間を置いた。「警備兵、それとメイドラン。お前たちは来なくていい。私は赤毛と二人だけで話がある」
何声かの「承知いたしました、アルファ」という返事と足音が聞こえ、私はようやく顔を上げて背筋を伸ばした。未だに疑いの眼差しを向けてくるアルファの警備兵たちには目もくれず、私はアルファの後を追って部屋を出て、見覚えのない廊下へと進んだ。
数分ほど歩いたところで男が足を止めたため、私も立ち止まった。ゆっくりと彼が振り返る。彼の頭のブラウンの髪は後ろに流され、前に垂らされた栗色の毛束は、まるで一筋一筋を完璧な位置に保つための専属スタッフがいるかのように整っていた。
そして、私の魂の奥底まで穿ち、私の存在のすべてを問い詰めてくるかのようなミッドナイトブルーの瞳。目をそらして他の何かに意識を向けたいという強い衝動に駆られたが、どうしてもできなかった。私の中のプライドがそれを許さなかったのだ。やがて私の視線は、彼のキューピッドの弓のような美しい形の唇へと落ちた。昨夜、彼が私の耳元で囁いた一つ一つの哀願、褒め言葉、そして柔らかい快楽の喘ぎ声が、ハリケーンのように脳裏に蘇り、私は深く息を吸い込んだ。
「これからお前が口にする言葉は、お前の破滅にも、あるいは恩恵にも繋がり得る。慎重に言葉を選べ」
私が返事をする間もなく、男は私の手首を掴むと、近くのドアを開けて私を部屋の中へと押し込んだ。
電光石火の速さで、彼は再びドアを閉め、鍵をかけた。「お前は何者だ?」閉めたばかりのドアの脇の壁に背を預けながら、彼は問い始めた。
私は咳払いをした。「サミヤです。サミヤ・コードヴァ……オメガです」
彼は鼻で笑った。「オメガにしては、随分と威勢がいいようだな。昨夜、私の部屋で一体何をしていた? なぜ目隠しをしてフルートなんて吹いていた? そして一体全体、なぜ今朝他の参加者たちと一緒にいたんだ? お前は何らかのスパイス……それとも魔女なのか?」
「だから言ったじゃない、良い考えじゃないって」震えるようなスカーレットの声が聞こえた。時々、この牝狼(シェ・ウルフ)のせいで、十分にかたそうな壁に自分の頭を百万回ぶつけたくなることがある。
『黙って、言った通り私を信じなさい!』と言い返すと、彼女は少しつぶやいた後に静かになった。
私は咳払いをした。「私は魔女ではありません。お望みなら今すぐ変身(シフト)してみせてもいいですよ。昨夜あなたの部屋にいたのは、あなたを求めていたからです……見たところ、あなたも私を求めていたようですが。曲と目隠しについては、良い印象を残せると思ったからです。違いましたか?」
アルファ・ザインは沈黙を守った。別の機会であれば、この男は私の言ったことを聞き取れていたのだろうかと疑ったかもしれない。しかし、彼の表情がいらだちから好奇心へと徐々に変化していく様子から、彼が私の言葉を聞き、それを吟味しているのだと分かった。
彼は背筋を伸ばし、壁から離れた。一言も発することなく私の脇を通り抜け、私の目は彼の動きを最初から最後まで追いかけた。その時初めて、私は押し込まれた部屋の中を見回す余裕を持てた。
もっと早く気づくべきだったが、アルファ・ザインの機嫌を伺うこととスカーレットを宥めることに必死で、気づく余裕がなかったのだ。アルファ・ザインが私を連れてきたのは、彼の城の中でも屈折の美しさを誇る場所かもしれない。どうやら私たちは、地面や壁を様々なサイズや色の花々が彩る温室へと足を踏み入れたようだった。
そして、匂いがやってきた。湿った土の爽やかで甘酸っぱい匂いとミックスされた深い土の香り、そして露に濡れた葉や咲き誇る花々の香りが私の鼻腔を突いた。
前へ歩みを進めると、ガラス窓から差し込む柔らかく遮られた光に目が慣れていった。ここは完璧な場所だった。私はこの景色に永遠に見とれていたいと思ったが、アルファ・ザインの声が再び聞こえ、容赦なく現実へと引き戻された。
「変身しろ!」それは首筋の毛が立ち上がるような、単純な命令だった。
アルファ・ザインと視線を合わせたまま、私はドレスの袖に手を伸ばし、それを下ろし始めた。ドレスを引っ張り、露わになった素の胸が剥き出しになるまで、一瞬二人の時間が凍りついたかのようだった。
アルファ・ザインは視線をそらしながら、眉間を指でつまんだ。「変身しろと言ったんだ。服を脱げとは言っていない」
「服を着たまま変身したら、人間の姿に戻った時に着る服がなくなってしまいます。ですからこの場合、変身することは服を脱ぐことと同じだと思いますが、アルファ……それとも、私の裸にそれほど動揺されているのですか?」私は片方の眉を上げ、アルファの次の反応を注意深く観察した。
彼は再びこちらを向き、両手を降ろし、眉間に小さなシワを寄せた。「好きにしろ。だが、もし次の1分以内に変身しなければ、私の領地に迷い込んだスパイや魔女を私がどう扱うか、身をもって知ることになるぞ」彼のトーンは鋭かったが、その言葉の裏にある脆さを感じ取ることができた。特に、彼の運命の番との間に起きたことを思えば、彼を責めることはできなかった。
先ほどよりも少し急ぎ足でドレスを脱ぎ、数フィート離れた地面に置くと、私は彼の命令通りにした。
最初は犬歯が覗くのを感じ、それからすべての制御をスカーレットに委ねた。数年前までは、激しい痛みを伴うために変身することを考えると怯えていたのに、23歳になった今では、それが第二の天性のようにごく自然に行えるのがおかしかった。
『私たちをバカに見せないようにしてね』主導権を握ったスカーレットにマインドリンクを送った。その雌犬は私に返事すら寄越さなかった。
アルファ・ザインの視線を私たちの上に感じた。昨夜彼が私を見たのと同じような目でスカーレットを見つめているように感じられた。私の狼がいかに珍しいか、私自身よく分かっていた。他の多くの狼とは異なり、彼女はチェリーレッドにブラウンが混ざった毛並みと、アーモンド型の目を持っていた。
彼女は他の多くの狼よりも小さく、少し弱かったが、時折キツネのように見える独特の魅力があった。私の唯一の願いは、彼女が時々はキツネらしく振る舞ってくれることだった。
どうやら、もっと強く願わなければならなかったらしい。彼女がアルファ・ザインの立っている場所まで力なく歩み寄り、彼の脚に体を擦り付けるのを感じたからだ。
『女神様、こんなに甘えん坊な狼と付き合わなきゃいけないなんて、私は一体何をしたっていうの』
スカーレットには私の声が聞こえていたに違いない。なぜなら、その後彼女は私をもっと苛立たせることだけが目的であるかのようにクンクンと鼻を鳴らしたからだ。驚いたことに、温かい手がスカーレットの毛並みをひと撫でし、それから離れていくのを感じた。アルファ・ザインは一歩下がり、咳払いをした。「人間に戻れ」
『時間切れよ、相棒。さあ戻って』私はからかった。
『黙って! 彼はあなたより私の方がずっと好きなのよ』彼女は言い返した。
『でも彼が求めているのは私の方よ。傑作ね』
彼女がいくつか毒づくのが聞こえ、私は思わず笑ってしまった。スカーレットをどんなにからかっても、彼女が本気で怒ることはないと分かっていた。やがて彼女はコントロールを解放し、私を再び人間の姿へと変身させてくれた。
しかし、自分が今置かれている状況を見て、なぜスカーレットがそれほど抵抗もせずにあっさりと私に主導権を渡したのかが理解できた。
私はアルファ・ザインの隣に座っていた。
素裸で。
このイカれた牝狼を殺してやりたい気分だった。
「お前はサミヤ・コードヴァ。『エトラナの淫婦』。そしてオメガだ」アルファ・ザインは、まるで本から言葉を暗誦しているかのように言った。今の自分の格好で彼からその言葉を聞くのは余計に惨めに感じられたため、私は慌てて立ち上がった。
彼の話し方からして、誰かにマインドリンクを送って情報を得たのは明白だった。私の予想では相手はメイドランだ。知りたいのは、彼が裏切る前にメイドランと私が幼馴染の親友だったことや、私が彼の拒絶された番であることまで知っているかどうかだった。あのバカが、そんな不快な詳細を省くくらいの知恵を持ち合わせていることを願うばかりだった。
「……じゃあ、ようやく私を信じてくれたのですね」
「ああ。そして今、お前には二つの選択肢がある。コンテストから辞退して、私の側室の一人になることだ。もしうまく務め上げれば、一番のお気に入りにしてもいい。そうなれば誰も二度とお前を『エトラナの淫婦』などとは呼ばなくなる。一生安泰だ。あるいは、私が全力でお前を落としにかかることを承知の上で、コンテストに留まるかだ。賢く選べ」
「そもそも、私が転生することすら、あの遠い昔にヘレネとして蘇ることすら許されるべきではなかったのよ。すべての発端は私にある。私が死んだままでいさえすれば、こんな狂気じみた惨劇が起きることは決してなかった。だから今、私が万事を正す準備はできているわ」私は自らの腹部にそっと手を当てた。「お願いだから、この子だけは見逃して。まだ形すら成していない小さな命なのよ。他の者たちにも手出しはしないで。代わりに、私の命を生贄として捧げるわ。そもそも初めから、私が生き長らえることなど許されてはならなかったのだから」エズメラルダはくすくすと忍び笑いを漏らした。それは微かで不気味な響きを帯び、やがて腹の底からの哄笑へと膨れ上がっていった。「私の母たちや姉妹たちが、その程度の思いつきを考慮していなかったとでも本気で思っているのかい? お前のあの愚かな番が、再びお前を引き戻すだけに決まっているだろう。仮にそうしなかったとしても」彼女は首を傾げ、その瞳に冷酷な光を宿した。「子供の魂ほど強大で純粋な力を持つものなど、この世に存在しないのさ。さあ、代価を支払いなさい!」「やめなさい」そのたった一言が、鋭利な刃のように室内の空気を切り裂いた。ジェナが一歩前へと進み出た。手にした本をさらに強く胸に抱きしめながら。その瞳には、これまでに見たこともないほど苛烈な炎が宿っていた。一体今、彼女の頭の中をどんな思考が駆け巡っているというのだろうか?「私が捧げますわ」彼女は告げた。私の首が勢いよく彼女の方へと跳ねた。「何を……駄目よ!」「いいえ」彼女は両肩をすっと引き締め、エズメラルダを真っ直ぐに見据えた。「私が生贄となりますわ。私の血管には、事実としてヘレネの血が流れております。そして私は、すでにしばらく前から身籠もっているのです。これこそが、サミヤ、私があなた様にお願いしたあの頼み事なのですわ。これこそが、そのすべてです」私は激しく頭を横に振った。「今の人生で、私たちに血の繋がりなんてないじゃない、ジェナ! そんなの通用するはずが——」エズメラルダの唇が残酷な笑みを刻んだ。「通用するさ。いかなる生を巡ろうと、血はすべてを記憶しているのだよ。いつだって例外なく通用するのさ」「ジェナ、やめて——」私は前へと身を投げ出したが、手が届くよりも早く、ジェナの動きはさらに俊敏だった。驚
サミヤ視点メイドランの変装は、少しでも凝視した者なら誰もが道化師(ジョーカー)と叫びたくなるような代物だったが、それは奴自身の問題であり私には何の関わりもないことだった。ザインが奴の首に賞金を懸けている可能性は極めて高く、城へ戻る道中で余計な寄り道をする気は毛頭なかった。私たちにとって幸いだったのは、エズメラルダが多彩なウィッグやドレス、外套を取り揃えていたことだ。メイドランが身に纏い、この小屋に残る奴の痕跡を覆い隠すにはうってつけだった。『まさか、昔の私たちがこんな阿呆を求めていたなんてね』身支度を終えたメイドランが姿を現した瞬間、スカーレットが鼻を鳴らした。メイドランは丈の長い青緑色のドレスを纏い、その上から黒い外套を羽織っていた。茶色の長い巻き毛がその顔を縁取り、彼が持ち合わせてなどいないはずの女性らしさを引き出していた。そしてさらに悪趣味なことに、唇には真っ赤な口紅まで塗られていたのだ。メイドランの唇は当分消えそうにない不機嫌なへの字口に歪んでいた。頬に浮き出た無精髭もその異様な装いを和らげる役には立たず、窮屈なドレスの胸元からは剛毛に覆われた逞しい胸板が覗いていた。どこからどう見ても完璧な姿だった!私の唇から笑いが零れ落ちた。今度のそれはスカーレットの皮肉とは関係なく、純粋にメイドランの滑稽極まりない外見のせいだった。「はっ、笑止千万だな。さっさと行くぞ」メイドランは私の脇を通り抜けながら吐き捨てたが、私の笑いが収まることはなかった。どうやら小屋の裏手に馬が一頭繋がれていたようで、最初は手こずったものの、やがてメイドランと私はどうにか跨ることができた。最後にあの廃屋を振り返った時、頭の中に湧き上がり始めていた疑問を口にせずにはいられなかった。「待って、メイもジェナもザインも、私がずっとあそこにいたことを知っていたのよね。どうして誰も助けに来てくれなかったの?」「来たさ。だが、エズメラルダが隠蔽の魔術で我らの気配を覆い隠していたのだ」メイドランはそう答え、馬の腹を強く蹴った。間もなく馬は疾走を始め、私たちは一路、城へと駆け戻っていった。あっという間に城へと辿り着き、メイドランと私は何の咎めを受けることもなく門を通過できた。不気味に思えたが、エズメラルダが私の姿に化けてすでに先回りしていたことを思い出して合点がいった。当然の成り行
サミヤ視点身重の奴隷。それこそが、今の私の姿だった。この四日間というもの、エズメラルダは出荷を控えた子豚でも育てるかのように私に食事を与え続けていた。寝所も、小屋の隅の床が椅子とベッドを兼ねていたあの酷い一角から格上げされ、今では本物の寝室を与えられていた。城でザインと分かち合っていたあの部屋とは似ても似つかない代物だったが、それでも改善には違いなかった。そして、メイドランこそがその監視役だった。あいつは私がエズメラルダの意向通りに万事をこなすよう見張り、初日こそ反抗したものの、エズメラルダに激しく頬を張り飛ばされ、今すぐ生贄にしてやると切っ先を突きつけられて脅されて以来、私は従順に従う術を学んでいた。従順であることは、必ずしも弱さとは限らない。それは私が最近になって痛感した教訓だった。捕らわれて以来毎晩のように、エズメラルダは私の元を訪れては、今日のエトラナの繁栄を築き上げたのは自分たちであるにもかかわらず、いかに魔女たちが不当な扱いを受けてきたかについて愚痴をこぼしていった。無論、私には大人しく耳を傾ける以外の選択肢などなかった。だが幸いにも、話を聞かされれば聞かされるほど私の記憶は呼び覚まされ、やがてすべての真相を思い出すに至った。そして、彼女の言い分は正しかったのだ。初代アルテミスが完全に正気を失いかけていた時、救いの手を差し伸べたのは魔女たちだった。魔女たちは彼に希望を与え、アルテミスはその見返りとしてベータのすぐ下に位置する階級を授け、彼女たちをエトラナ全土で三番目に強大な勢力へと引き上げ、定住の地と共同体を保証した。アルテミスと魔女たちの関係は極めて良好だったのだ——彼女たちの意に反して私が息を吹き返させられ、アルテミスと私が契約の義務を果たさずに彼女たちを裏切るまでは。当初、魔女たちは自らの支配地としてエトラナのより広大な領土を要求した。だが、月の女神自らが祝福し私たちに授けたこの聖域に手出しができないと悟るや否や、彼女たちは私の産み落とす初子を要求してきたのだ。深い哀哭の底に沈んでいたアルテミスは、その要求を呑んだ。そして代償を支払う刻限が訪れた時、アルテミスは魔女たちを裏切り、国外へと追放した。私は間もなく第一子を産み落としたが、出産の最中に命を落とした。今、歴史は再び同じ過ちを繰り返そうとしていた。だがそれでも、私は我
ザイン視点持てる資源のすべてをサミヤの捜索に注ぎ込んだというのに、何一つ手がかりは得られなかった。長く過酷な四日間が過ぎ去ってもなお、何の収穫もなかった。私は護衛たちを引き連れ、あの荒れ果てた小屋があるはずの場所へと向かったが、そこに見出せたのは広大で虚無な空き地だけだった。小屋が存在していたと確信していた地点の周辺を隈なく探索したが、それでも何も見つからなかった。まるで、万事のすべてが私の妄想の産物に過ぎなかったかのように思え始めていた。夜になればエズメラルダがサミヤを監禁していそうな隠れ家の推測図を描き殴り、朝が来れば激しい怒りに呑まれ、人生で初めて、ラルフが支配権を握って行く手を阻む者すべてを血祭りに上げてくれればいいと心底願った。まるでヘレネを失ったあの日の絶望をもう一度味わわされているかのようだった。だが今回は、涙を流すための墓を訪れることも、羊皮紙に想いを書き殴ることも叶わなかった。頭の中で無数の「もしも」の破滅を何度も再生させられることを強いられていたのだ。だが、五日目にすべてが一変した。ジェナと共に馬車へ乗り込もうとしたまさにその時、報せが届いた。心臓が先走る中、足はかつてないほどの速さで私を前へと運んだ。城門に辿り着くまで一度も足を止めず、そしてそこに——彼女がいた。あの日と同じ衣服を纏っていたが、今やそれは無残に引き裂かれ、泥に塗れていた。目頭を鋭い痛みが突き刺し、私は涙を隠そうともしなかった。目の前に立ち尽くしているのが、我が番なのだから隠す必要などどこにあるというのか。我が赤毛。そのジンジャーレッドの髪は頭上で乱れ散らかり、瞳の下には濃い隈が居座り、顔は疲労でやつれ果て、そして何よりも耐え難いことに、その瞳に宿っていたあの輝きが完全に消え失せていた。エズメラルダは我が番に一体何をしでかしたというのか?同等の怒りと悲哀が全身を駆け巡り、今すぐエズメラルダを捜し出してその首をへし折るべきか、それとも我が番の元へ駆け寄って彼女が必要としている安らぎを与えるべきか、激しく引き裂かれた。無論、私は後者を選んだ。エズメラルダをどれほど憎悪し軽蔑していようとも、奴への復讐など後回しにできると分かっていたからだ。サミヤの元へと疾走し、私は彼女をお姫様抱きの形で抱え上げた。「……これ、持ってきたの……」抱え持っていたことすら気づか
サミヤ視点魔女という存在に対して、私は昔からある種の強い関心を抱き続けていた。だが、この人生で初めて対峙する魔女が、まさか我が番(メイト)の元恋人になろうとは夢にも思っていなかった。月の女神は、私に残酷な悪戯を仕掛ける気になったのだろうか。ちっとも笑えなかった。微塵も面白くなどなかった。「いいかい、ここへ連れて来ると言った時……わ、私……私はただ、こんな古臭い薄汚い場所でお前を野垂れ死にさせるために連れて来たわけではないのだよ。私の真意は、エズメラルダの元へ連れて行き、彼女の手で我ら二人を人間に変えてもらうことだったのだ。そうすれば残りの人生を幸せに、人狼であることに伴うあの狂気から遠く離れて生きていけるはずだったのだよ、ミヤ。階級に縛られることもなく、頭の中を駆け回ってはあれこれと要求を突きつけてくるあの忌々しい狼どもに煩わされることもない。我らは完全なる理想郷に到達できたはずなのだ!」言い忘れていたが、月の女神は私を元番の男諸共、同じ場所に閉じ込めるという仕打ちまで与えてくださったのだ。これ以上なく悪辣な冗談だった。そして重ねて言うが、やはりこれっぽっちも笑えなかった。父親の邪魔立てさえ入らなければ、そして私が勝手にあの試練に乗り込みさえしなければ、いかに私たちが完璧な番同士になっていたかを語り続けながら、メイドランは両目を見開いていた。ザインと私がアルテミスとヘレネの転生した魂なのだと知らされたら、あいつが一体どんな顔をするか容易に想像がついた。四方八方に乱れ散らかった白銀の髪と、言葉の一つひとつを身振り手振りで必死に説明するその姿は、すでに狂乱の野兎そのものに見えていたのだから。万事の真相を知ったあかつきには、本物の発狂した兎へと成り果ててしまうかもしれない。その仮説を試してみたい衝動に駆られたが、私の両手首は擦れて痒みを覚えるほどきつい縄目で後ろ手に縛り上げられており、口には猿轡まで噛まされていた。獣化(シフト)して自力で縄を解くことくらい造作もなかったが、下手に動けばさらに最悪の窮地に陥るのではないかという懸念があった。その上、今のメイドランには魔術という後ろ盾があったのだ。あいつはその力を使って私をここへ連れ去り、メイとジェナ、そしてザインを女神のみぞ知るどこかへと吹き飛ばした。それ以上の暴挙に及ぶために魔術を悪用することなど、疑う
ザイン視点無能。今の己の心情を寸分の狂いもなく言い表す言葉があるとすれば、それしかなかった。「私たち全員に残された時間は、もう一瞬たりとも残されておりませんわ」謎の小屋へと向かう馬車に揺られる間じゅう、私の意識を占領していたのはジェナのその一言だけだった。かつて魔女たちと危険な契約を交わし、何か重要なものを犠牲に捧げることに同意したという事実だけは自覚していた。だがどうしても思い出せなかったのは、その重要な代償が一体何であったのかということだ。答えを求めてジェナを何度も問い詰めたが、彼女はそのたびに前回よりもさらに曖昧模糊とした返答を寄越すばかりだった。ジェナという女は、これ以上ないほど癪に障る存在だった。サミヤ自身も何も知らされていないという事実も事態を好転させる役には立たず、私はただ背もたれに体を預け、息を抜き、予期せぬ破滅を迎え入れる準備をするしかなかった。なんと素晴らしいことか!「ザイン」サミヤが呼びかけてきて、私を渦巻く思考の迷宮から引き戻した。カタツムリのような遅さで、私はサミヤの方へと首を傾げた。「サミヤ」彼女が使ったのと同じ静かな調子を真似て、私はその名を呼んだ。「メイドランのことを黙っていたから、怒っているのでしょう?」彼女は声を潜めて尋ねてきた。その視線は居心地が悪そうに彷徨い、私を捉え続けることができずにいた。怒ってはいた。だがそれ以上に、私たちの前に何が待ち受けているのかという懸念の方が遥かに重くのしかかっていた。「ああ、怒っているよ」「ごめんなさい。本当に悪かったと思っているわ。必ず話すつもりだったのよ、でもあまりにも多くのことが一度に起きすぎて……だからメイドランの件なんて、私たちの抱える問題の中では一番取るに足らないことのように思えてしまったの」彼女は弁明した。私の唇は細く一文字に結ばれた。彼女の言い分は痛いほど理解できたし、二度目の好機を授かった今となっては、サミヤに対して長く怒りを抱き続けることなど我が心のいかなる部分にも不可能だった。私自身、メイドランを過小評価するという過ちを犯していたのだから。あいつは月の石(ムーンストーン)のことをメイに暴露すると警告してきていたのに、今朝早くにメイ直々に思い知らせを受けるまで、私はその脅迫を完全に失念していたのだ。そして今や、あいつが魔術に首までどっ







