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オメガ騎士は王の閨に囚われる
オメガ騎士は王の閨に囚われる
Author: 琉斗六

登場人物と用語説明

Author: 琉斗六
last update publish date: 2026-02-07 10:08:06

・カレドヴール帝国

 大陸の覇者と呼ばれる侵略国家。

 戦争と拡大によって国力を増す一方で、国内は階級制度と差別が根強く、オメガに対する偏見・蔑視が公然と存在する。

 犯罪者や政治犯への処罰として〝奴隷落ち〟の制度が存在する。

・アルカディール連合

 砂漠地帯に点在する氏族の連合国家。

 オメガを希少な存在として保護対象と見なす文化を持っていたが、カレドヴールによる侵略で属国化。独自の価値観は徐々に失われつつある。

・アルトゥール・コンスタンティン・カレドヴール

 カレドヴールの皇帝。アルファ。金髪碧眼。

 冷静沈着で感情を外に出すことは少ないが、その内に複雑な葛藤を抱えている。

・パーシヴァル・シャヒーン

 アルトゥールの近衛。オメガ。黒髪にオリーブの肌、金茶の瞳。

 カレドヴールとアルカディールのハーフ。

・リオン・ソーンウッド

 カレドヴール帝国・ソーンウッド家の現侯爵。アルファ。

 パーシヴァルとは血縁を持つが、複雑な家族事情により、幼少期以降はほとんど接点を持たなかった。

・モルドレッド・クレイモア

 パーシヴァルの同僚の騎士。アルファ。

 オメガに偏見のあるカレドヴール帝国の騎士団において、唯一パーシヴァルを〝友〟と扱ってくれる。

・ヴィクトール・アッシュフォード

 アルトゥールの側近。ベータ。伯爵家次男。

 通称・ヴィ。有能な右腕であり、幼少の頃からアルトゥールの傍に仕えている。

・レイヴン・クロウ

 カレドヴールの暗部の長。

 アルトゥールの耳目・手足となって働く。

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  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   エピローグ

     パーシヴァルは、温もりの中で目を覚ました。 アルトゥールの腕が背に回され、未だ残る傷を撫でている。「陛下……?」「アルと呼べと、言っただろう」 アルトゥールは、拗ねた感情を乗せてそう言った。「では、この部屋でだけなら……」「うむ。……だが、この部屋を出てもパーシーと呼ぶぞ」「はい」 傷を撫でるアルトゥールの手が止まる。「言っておくが……。俺は次代の皇帝は──」 アルトゥールの口元に、パーシヴァルが指を当てる。「エドワード殿下に、重荷を背負わせず、為政者として育てる覚悟を、僕も持とう」 パーシヴァルの言葉に、アルトゥールは驚いた顔をする。「ユーウェイン殿下と良好な間柄を築いていたアルを、ずっと羨ましいと思っていた。エドワード殿下にしわ寄せや悪意が及ばないように、慎重に距離感を保っていることも。……オメガ隷奴のことも、議会に腐敗が蔓延していることも……。僕は……アルの騎士だ。きみの心を、信念を守るために、盾になる」 ぐいとアルトゥールはパーシヴァルの体を抱き寄せた。 それらが、言うほど容易くないことは、パーシヴァルも理解しているだろう。 常に、その悪意に晒されてきた当人であるのだから、骨身に染みて──。 それでも、パーシヴァルは折れずに未来を見据えている。 アルトゥールの真意を汲んで、共に進むと言ってくれた。「ありがとう……」 アルトゥールは、他に言葉が思い浮かばなかった。終わり。

  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   §

     衣服は、とうの昔に脱ぎ捨てられ、ベッドの外へと落とされた。  微かに汗ばんだオリーブの肌から立ち上る、芳しい香り。  鎖骨に胸元に、一つ一つ丁寧に証を残し──。  アルトゥールは、パーシヴァルの体に火を灯す。「パーシー……」 「はい……、ここにおります……」 乳首を舌で転がすと、パーシヴァルの体がびくりと強張った。「怖くはないか?」 「いえ……」 だが、その声は震えている。  パーシヴァルにとって、体を重ねる行為は、一つとしていい思い出が無いだろう。  暴かれたのは、アルトゥールにだけだが──。  下劣な物言いや、下心を持って撫で回されたこともあると聞く。──スラムに居たなら、強姦されかけたこともあるだろう……。 脇腹を撫で、臍にキスを落とす。「ん……っ」 下腹に手を伸ばせば、既にそこは熱を持って立ち上がっていた。  やんわりと握り、幹を撫でながら、アルトゥールは先端を舐め上げた。「あっ……!」 パーシヴァルが反応を示す場所を、わざと音を立てて執拗に触れる。「や……、い……いけません……っ!」 「なにがいかん? 気持ちがいいなら、このままイケ」 「だ……だめ……で……、ああっ!」 びくりと体を強張らせ、パーシヴァルは果てた。  アルトゥールは、その熱情を口内で受け止め、飲み下す。「陛下っ!」 「アルと呼べ」 パーシヴァルの頬が、更に赤さを増す。「不敬では……?」 「番をねだっておいて、今更だろう?」 「……申し訳ありません」 「いい。……パーシーが、俺の気持ちを想って言ってくれたことは、分かっている」 「……それだけじゃ、ありません。……僕は、本当に……」 「それも、分かっている。……パーシーが、俺を求めてくれたことは、心から嬉しく思っている」 アルトゥールの指が、熱で現れた孔に触れる。  フェロモンを含んだ蜜が、トロリと溢れた。  それを、アルトゥールは舌で掬う。「ひゃっ!」 「ふふ……、オメガのこれは、アルファには甘露と聞いていたが。確かに甘い……」 舐め、啜り、吸われることに、パーシヴァルは両手で顔を覆った。  舌でそこをなぶられるたびに、たまらない甘い痺れが、背筋を駆け上る。「あっ! あっ! だ……だめで……す……、だめ……」 「あんなつまらぬ器具で、ここを穢さ

  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   §

     アルトゥールの寝室で、パーシヴァルは横たわっていた。  ヴィの用意した抑制剤を飲ませ、息もだいぶ落ち着いている。 アルトゥールは黙って、パーシヴァルの顔を見つめていた。  様々な感情が胸のうちにある。  しかしどの感情にも、正しい答えは出せないまま──。  ただ、現実としてある結果を前に、アルトゥールは途方に暮れていた。「……へい……か?」 「目覚めたか? 抑制剤で落ち着いたとは思うが、まだ休んでいたほうがいい」 目を開いたパーシヴァルは、半身を起こす。「ここは……、陛下の……」 「済まない。きみには、いい気持ちのしない場所だが、他になくてな……」 「陛下……?」 「アルで、いい。スラムで俺を助けた時に、帰り道で肩車をして、そう呼んでくれただろう?」 「申し訳ありません……、また陛下にご迷惑を……」 「きみは、俺の光で、永遠の英雄だ。迷惑だと、思った事は一度もない」 そう言ってから、アルトゥールは深々と頭を下げる。「済まない、パーシヴァル。結局俺は、またきみを危険に晒した」 「僕があなたの英雄なら、危険を引き受けるのが役目です」 「俺は!」 アルトゥールは眉根を寄せ、苦しげな顔で俯いた。「俺は……、きみを得難い存在だと思っている。……あんな形できみを穢し、きみの矜持を奪い……。今は見世物のように扱って、政治利用している……」 「光栄だと思ってます。陛下のお役に立てるなら、家臣としてどれほどの誉れかと」 「だが、きみは傷ついている!」 「それは……、僕が自分の……オメガ性に負けたような気がしたからです」 「負ける?」 「はい。オメガであるゆえに、世間がなにも認めてくれないことに腹を立てて、僕は一人であがいていました。……でも唯一の理解者だと思っていたモルもまた……僕をオメガと……。彼らにとって、僕は個人ではなくて、オメガなんです」 「いや……、ある意味、オメガの中でも稀少な存在……とは認識しているだろう」 「それでも……。それは僕の人格や、僕自身ではなくて、オメガ性しか見ていません。……僕を……僕と見てくれていたのは、モルじゃなくて、あなただった」 「だが……、結局俺も、きみを穢した存在だ」 「違います。……陛下は……、アルは僕を守るために、あなた自身が傷つくことも構わずに庇護してくれた。僕が命がけ

  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   9:親友

     割れた窓から、レイヴンが飛び込んできた。「なんだっ?」 ほぼ同時に扉が開き、ヴィとアルトゥールが踏み込んでくる。「パーシヴァル!」 床に倒れ、衣服が乱れたパーシヴァルの姿と、部屋に立ち込める香の匂い。 アルトゥールは瞬時に状況を理解し、同時に怒りに全身が焼けるような感覚に襲われる。「陛下っ!」 ヴィの制止は、アルトゥールの耳に聞こえなかった。 そこで、レイヴンと切り合っているモルドレッドを、アルトゥールは無言のまま、その背に剣を打ち下ろす。「ぐあっ!」 振り返ったモルドレッドは、信じられないといった顔をした。 皇帝が、自らその剣で、賊を切ることなどあり得なかったからだ。 アルトゥールは、驚きに見開かれたモルドレッドの目を真っ直ぐに見据えながら、そのままモルドレッドの心臓を剣で刺し貫く。「あ……、が……」 モルドレッドの口から、赤い泡に続いて、液体が溢れ出た。「陛下……」「………………」 呼びかけるレイヴンに返事もせず、アルトゥールはモルドレッドを刺した剣をそのままにして、振り返った。「パーシヴァル殿、助けにきたのです。落ち着いて」「あ……、あ……っ!」 香に蝕まれ、ヒートが加速している。 だが、パーシヴァルは服の前を掴んで、身を縮こませ、手を差し伸べるヴィを拒絶するように壁に身を寄せ、首を振った。「パーシヴァル!」 歩み寄るアルトゥールが一喝すると、ハッとそちらを見たパーシヴァルは──。 相貌を崩し、まるで迎え入れるように手を伸ばす。「ある……」「そうだ、俺だ」 アルトゥールは、そのままパーシヴァルの体をグイと抱き上げた。

  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   §

    「なぜ、ソーンウッドが加担を……?」 「リオンは自滅したようなものさ。きみは気づいていなかったようだが、やつは子供の頃から、きみを欲しがっていた」 「ありえない……」 子供の頃から、腹違いの兄からは罵倒と蔑みをされた記憶しか無い。「リオンは母親が怖くて……、いや、違うな。あれは〝母親に見捨てられるのが〟怖くて、逆らえなかったんだろう。前侯爵夫人は、半分とは言え血を分けた兄弟を妾にすることを許してくれず、やつは泣く泣くきみを手放したんだ」 「義母上……は、僕を憎んでいた……」 侯爵の正妻といったら、パーシヴァルとその母を心底疎ましげに、憎しみの視線を向けてきた記憶しか無い。「当然だろう? 亭主と息子を狂わせる、傾城の母子だぞ? 屋敷に置くのが怖かったんだろう。スラムに捨てれば、すぐにも奴隷商に捕まるか、野垂れ死ぬかと思ったのかもしれないが……。その逆境を生き延びたきみは、美しさのみならず、その高潔な精神によってアルファの垂涎の的になってしまった」 じり……と、モルドレッドが歩み寄る。  それは、追い詰めた獲物を嬲る、獣のような動きだった。  肘をつき、パーシヴァルは後退る。「きみがオメガ隷奴に落とされると決まった時。リオンはいつもの横流しで、うまうまときみを手に入れようとしていたんだが……。俺に過去の悪事を暴露されそうになって、再び泣く泣くきみを諦めたのさ」 「じゃあ……、僕を牢から逃がしたのは……」 「オークションに掛けて、俺が手に入れるためだった。……まさかアルトゥールが、横からかっさらうとは思ってなかったよ。俺なら、近衛になった時点で、小姓にでもしたのにな」 手を伸ばし、モルドレッドはパーシヴァルの顎を掴む。「アルトゥールには、後ろばかり責められたのだろう? 可哀想に。俺なら、きみの全てを余さず可愛がってやる」 「は……なせっ!」 払った右腕を捕まれる。「もう、剣を握ることもままならなくなってしまったなぁ。だが、もうそんなことをする必要はないがね」 「なぜ……、取引をしたのに、ソーンウッドを売ったんだ……?」 「アルトゥールにかっさらわれたきみを、手に入れるためさ。ブラッドレーが生きていたのは誤算だったが……。意識を取り戻し、パロミデスがきみを斬ったと証言してくれた。おかげでアルトゥールの閨から、きみを取り戻

  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   §

     パーシヴァルは、むせ返るような香の匂いで目を覚ました。「なん……だ……?」 全身に、嫌な汗をかいている。  蘇る、アルトゥールの閨で縛られていた記憶……。  だが、今は怠いだけで、手足は動いた。「こ……こは……?」 咳き込みながら、体を起こそうとしたが──。  寝かされていた寝椅子から転がり落ち、床に肩を打つ。  だが、打った痛みより、全身に響いた衝撃のほうが強かった。「うあっ……あ……」 ぞくりと走る、快とも不快とも感じる感覚。  痛みすらも熱に変える、おぞましい発情の兆候だ。「思ったより、早く目が覚めたな……」 うつ伏せたパーシヴァルの背中に、聞き慣れた声が落ちてきた。  だがそれは、パーシヴァルの知る優しい声音ではなく──。  聞いたこともない、冷ややかなものだ。「モル……?」 「ああ、俺だ」 振り返ったパーシヴァルは、天井の明かりの下、逆光になった親友の顔を見てギョッとなった。「いや……まさか……」 戦場で、背中に衝撃を感じたあと。  記憶の中では、ちらと人影を見たような気がした……だけだった。「なんだ、今更、思い出したのか?」 にやりと笑って、モルドレッドが言った。「そうだ、パーシー。俺が、お前を斬った。幻術を使っていたから、ブラッドレーにはパロミデスに見えていたがな」 モルドレッドの言葉に、パーシヴァルは愕然となる。  あの時と同じような──。  地に伏した自分と、逆光で影になった顔の襲撃者。──そうだ。あの時、僕ははっきり相手の顔を見た。 しかし、頭がその情報を拒絶した。  ただ一人。  アルファであっても、自分に劣情を向けなかった男。「長かったよ、パーシー。初めて見たときから、きみが欲しくてたまらなかった」 「う……そだ……」 「嘘じゃない。その繊細な芸術品のようなきみに、魅せられないアルファがいると思うのか? 騎士団の兵舎で、惜しげもなく肌を晒し汗を拭くきみを、その場で攫ってしまいたい衝動を、何度抑えたかわからない」 パーシヴァルはなんとか体を仰向けにし、モルドレッドを睨む。「たまらないな、その顔。誘っているようにしか見えないよ。……パーシー、きみを手に入れるために、俺がどれほど骨を折ったか……」 「じゃあ、僕が反逆罪に問われたのは、……全部きみが……?」 「

  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   2:オークション

     パーシヴァルは、檻の中で気を失って倒れていた。  焚き火で嗅がされたヒートの香の影響で、意識を失っていたのだ。  どれだけ時間が経ったのか分からない。  ツンと鼻を突く匂いに、意識が引き戻された。「……うっ……」 「ようやくお目覚めか?」 先程の男たちとは違って、妙に身なりの綺麗な男が覗き込んでいる。  パーシヴァルが意識を取り戻したことを確認したところで、男は轡を噛ましてきた。「さて、お楽しみの競りだ。頑張れよ」 男が持っている鎖を引くと、気を失っている間に加えられたらしい首枷が引っ張られる。  ヒートの香は、嗅げば嗅ぐほど効果が増すが、どうやら少し嗅がされただけだっ

  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   §

     騎士時代は、モルドレッドと二人で街の食堂で夕食を取り、エールを交わした。 と言っても、飲むのはもっぱらモルドレッドばかりで、パーシヴァルは果実水を飲んでいたが……。 アルコールは量を過ごせば、ヒートを抑えにくくなる。 オメガに生まれた者は、ヒートを抑えるために|己《おのれ》を律し、それでも本能的にやってくる衝動を、薬で抑える。 それを知るアルファの中には、パーシヴァルに無理矢理アルコールを飲ませようとする輩もいたが。 モルドレッドは、いつもそれを庇ってくれていた。「色々あって、疲

  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   §

     数日が過ぎた──。  その朝も、いつもと同じく執務室に、レイヴンが現れる。 夜毎、アルトゥールはパーシヴァルを抱く。  言葉は交わせない。  ただ、どちらも香によって獣のようにまぐあうだけだ。  それによって、アルトゥールの心が日々疲弊していくのが分かる。 ヴィは、表情一つ変えずに、しかし明らかに憔悴しているアルトゥールを、痛ましく感じていた。「なにか、ございましたか?」 レイヴンが部屋から出ていったところで、ヴィは訊ねた。「別に、なにも……。……ただ、部屋から出るこ

  • オメガ騎士は王の閨に囚われる   4:パーシヴァル

     パーシヴァルは、部屋に入ってきた他人の気配で意識を取り戻した。──誰だ? と声に出して問いかけようとしたが、轡によって呻きをもらしただけに終わる。「気付かれましたか?」 目を開けると、昨晩見た顔があった。 音もなく近づき、レイヴンはまず轡を外す。「レ……ヴン……?」 声は、掠れて言葉を成さなかった。 昨晩の責め苦に、轡をされながらも悲鳴を上げすぎて、喉を痛めてしまったのだろう。「戒めを外します。動

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