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第8話

Auteur: ギャクゲツ
通話が切れると同時に、一本の動画が送られてきた。

動画の中で、レイは瀕死の状態だった。廃工場の梁から吊るされ、その下には緑色の泡を吹く化学薬品のプールが煮立っている。

動画の最後には剛の声が入っていた。「神崎、忠実なボディーガードを助けたければ、高嶺凛と交換だ。

ああ、それともう一つプレゼントを送った。メールボックスを確認しろ。パスワードは250367だ」

奏多は急いでパソコンを開いた。確かに暗号化されたメールが届いている。

中身は同じく動画ファイルだったが、今度は凛が映っていた。

薄暗い部屋に座る彼女の声は、冷静かつ明瞭だった。「影山社長、レイが産業スパイであるという証拠を偽造してほしい。成功の暁には、神崎グループの半分を譲渡する」

対する剛の低い笑い声。「高嶺さん、俺がお前を信用する理由は?」

「夫の隣に愛人が居座るのを許せる女はいないわ。それに、神崎グループをレイにすべて奪われるくらいなら、あなたに半分渡す方を選ぶ」

動画の中の女は、その表情、声、微細な癖、そしてその冷徹で論理的な思考回路さえ、凛そのものだった。

奏多の呼吸が止まる。だが考える隙も与えず、次の画面には銀行の取引記録が表示された。

見たこともない海外の秘密口座。記録によれば、数日前、天海グループからの巨額の資金が「協力手付金」の名目でその口座に振り込まれていた。

さらに、専門家による分析レポートが添付されており、凛が提示したレイの不正証拠がいかに捏造されたものであるかが「論証」されていた。

「凛、これはどう説明するんだ?待ってくれと言ったのに、どうして僕を信じなかった?レイを死地に追いやって、一体何の得があるんだ!」

「奏多、あなたは敵の言葉を信じて、私を信じないの?」

凛はあまりの滑稽さに悲しみを通り越して乾いた笑いが出そうになった。二つの証拠があるのに、彼は天海が提供した方を信じ、逆に妻を詰問しているのだ。

奏多は逆上して叫んだ。「君こそ僕を信じていないじゃないか!レイはさっき僕たちの命を救ったばかりだぞ。それなのに君は……」

「奏多!もしあの事故が、最初から彼女の自作自演だとしたら?」

凛も声を張り上げたが、奏多は無意識に彼女の視線から逃げた。

その「逃げ」が、凛の心を冷やした。あの事故について、彼はとっくに真相に気づいていたのではないか?

だが、レイの腹にいる子供のために、全てを握り潰したのだ。

今回の「証拠」についても、彼は薄々気づいているのではないか?

つまり、彼は愚かなのではない。ただもう自分を愛していないだけなのだ。

凛が悲哀に満ちた笑みを浮かべた時、奏多の携帯が再び鳴った。

「神崎社長、決断は?高嶺凛か、それとも忠実なボディーガードか。

チッ、俺としては高嶺凛の方が欲しいんだがな。あれほどの交渉のエキスパートがいれば、資本拡大も思いのままだ。あのボディーガードなんて、死ねばただのゴミだ。惜しむ価値もない」

剛の言葉が、奏多の神経を逆撫でする。

彼の目は血走り、声は氷のように冷たく震えていた。

「凛、お前が行って彼女と代われ。これはお前が蒔いた種だ」
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