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第7話

Author: 匿名
桂子の言葉を聞き、集まった人々がざわめき始めた。

重信も東の立場を思い出し、慌てて職員たちに朱音を放すよう合図し、口調まで大きく和らぐ。

「お母さん、実は縫製工場で、あなたの娘さんが防寒着を横流ししていたことが分かりまして。ご存じのとおり、あれは工場の大切な物資ですから……」

重信が言い終えるより早く、桂子は朱音の頬を力いっぱい平手で打った。

続いて壁に立てかけてあった、赤ん坊の腕ほどもある太い木の棒を掴み、朱音の足へ叩きつけた。

乾いた音を立てて、木の棒が折れた。

同時に朱音の足からも骨の折れるボキッという生々しい音が響き、彼女はその場に崩れ落ちた。

それでも桂子は構わなかった。

同行者の1人が持っていた鉄の棒に目を留めると、それを奪い取り、朱音の頭へ振り下ろそうとした。

重信は顔色を変え、慌てて前に出て止めた。

「お母さん、落ち着いてください!これ以上殴ったら、本当に死んでしまいますよ!」

取り押さえられても、桂子は泣きながら大声で罵り続けた。

「ああ、なんて情けない!どうしてこんな疫病神を産んじまったんだか。工場の物を勝手に売り飛ばすなんて!私たちまで牢屋にぶち込まなきゃ気が済まないのかい!これから私は、どんな顔をして世間様を歩けばいいんだよ!」

朱音は地面に倒れ伏していた。

痛みは感じなかった。足全体の感覚が完全になくなっていたからだ。

片方の頬はひどく腫れ上がり、口の端から血が流れている。頭の中では耳鳴りが続き、周囲の騒ぎも遠くに聞こえた。

その時、桂子の手首で揺れる金色の光が目を射て、朱音はようやく我に返った。

朱音はわずかに意識を取り戻し、金の腕輪を見つめた。

「お母さん、その金の腕輪、どこで手に入れたの?」

掠れた声で尋ねると、罵り続けていた桂子が急に黙り込んだ。

周囲の人々も一斉に腕輪へ目を向ける。

大ぶりの金の腕輪は、一目で高価な品だと分かった。

桂子はしどろもどろになり、人混みの後ろへ隠れようとしている麗奈を見つけると、慌てて呼び止めた。

「麗奈、腕輪やネックレスを買った金は、どこから出したんだい?」

桂子もようやく、おかしいと気づいたのだ。

麗奈は見るからに動揺していた。

重信が連れてきた職員たちも、皆険しい顔をしている。

追いつめられた麗奈は叫んだ。

「そのお金は東さんにもらったのよ!」

重信たちは顔を見合わせた。

それでも疑いは消えない。

東の給料だけで、これほど高そうな金の腕輪を買えるものだろうか。

しばらく考え、重信が口を開いた。

「笹川さんは組織の幹部で、公正な方だ。すぐに人を向かわせて、本人に確認しよう」

しばらくして、東が急いで戻ってきた。

事情を聞くなり、迷わず答えた。

「麗奈が腕輪とネックレスを買った金は、俺が渡した。俺はもうすぐ朱音と式を挙げるだろう。だから麗奈に、婚礼用の品を買ってきてもらったんだ。少しでも体裁を整えようと思ってな」

人々はすぐに納得した。

そして東が暗に、麗奈は潔白だと訴えていることも理解した。

ならば、防寒着を横流ししたのは朱音ということになる。

重信は朱音を怒りのこもった目で睨み、それから東へ向き直った。態度を和らげて頼む。

「笹川さん、ご家族に関わることですが、どうか公平に対処してください。縫製工場は、大勢の暮らしを支えているのです」

東は威厳に満ちた顔で答えた。

「安心してください。賠償であろうと法的な処分であろうと、身内だからと手心を加えるつもりはありません」

朱音は顔を上げ、最後の力を振り絞って訴えた。

「東、私はそんなことしてないわ」

東は暗い目で朱音を見下ろし、冷たく言い捨てた。

「そのまま跪いていろ」

麗奈と桂子を連れ、東は家の中へ入っていった。

集まっていた人々も、やがて散っていった。

夕暮れになって、ようやく東が外へ出てきた。

意識を失いかけている朱音を引き起こし、片足が力なく垂れ下がっていることに初めて気づいた。

東の目に不安が走った。

その足に触れて尋ねる。

「朱音、その足はどうした?」

「折れたわ」

朱音は淡々と答えた。

東は胸を突かれたが、朱音が腹立ち紛れに嘘をついているだけだと思い込んだ。

朱音を支えて家の中へ入れ、椅子に座らせる。

桂子と麗奈は四角いテーブルのそばに座っていた。2人とも落ち着かず、表情を暗くしている。

その重苦しい空気に、朱音はますます不安を募らせた。

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