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第6話

Auteur: みずちゃん
時間が無情に過ぎていった。泣き続けたせいで、千歌の喉は焼けるように痛み、やがて声すら出なくなった。意識もぼんやりとかすみ、全身を重い倦怠感が覆っていく。

涙はとっくに枯れ果てていた。

今すぐここから逃げ出したい。真人がどうしているのか知りたい。その思いだけが胸を締めつけるのに、千歌は光の差し込まない地下室に閉じ込められたまま、ただ苦しみに耐えることしかできなかった。

どれほど時間が経ったのだろう。不意に聞こえた足音に、千歌ははっと目を開けた。

地下室の扉が開き、執事が姿を現す。ようやく希望が見えた千歌は駆け寄った。

「真人は?」掠れた声が怯えと心配で震える。「あの子は無事なの?怪我はしてない?誰かにいじめられたり、私を探して泣いていたりしてない……?」

矢継ぎ早の問いかけに、執事は言葉を失ったように視線を伏せる。やつれきった彼女の姿を見て、胸を痛めているのが伝わってきた。

しばらくためらったあと、彼はようやく重い口を開く。「奥様……旦那様はお忙しくて、坊ちゃんのことはほとんど奈帆様が面倒を見ています。

奈帆様自身は表向き問題のあることはしておりません。ただ……俊太様がたびたび坊ちゃんをからかい、その度が過ぎているようでして……

食事の際にわざと熱いものを触らせて火傷を負わせたり、家の中で足を引っかけて転ばせたり……夜にはベランダへ閉じ込められ、一晩中寒さに晒されたこともありました」

真人がずっと苦しめられていたと聞くと、千歌の心が引き裂かれそうだった。

彼女はふらつく身体を無理やり起こしたが、執事に止められる。「奥様、落ち着いてください。実は、他にお伝えしたいことがあって参りました。

今日は幼稚園の遠足の日でした。奈帆様は俊太様を連れて出かけたのですが、坊ちゃんも無理やり同行させられました。

私どもは止めたんですが、聞く耳を持たれなくて……それで、奈帆様は三十分ほど前に戻られました。

しかし、坊ちゃんの姿が見当たらないのです。私どもが尋ねても、はっきりしたことをおっしゃらなくて……万が一のことがあってはいけないと思い、ご報告に参りました」

その言葉は、千歌にとって青天の霹靂だった。

身体が大きく震える。ただでさえ青白かった顔から、完全に血の気が失せた。

次の瞬間には、彼女は地下室を飛び出していた。

一刻も早く真人を探さなければ。

リビングへ駆け込むと、ソファに座る奈帆の姿が目に入った。その瞬間、張り詰めていた感情が爆発する。

「真人をどこへやったんですか?」

奈帆はちらりと視線を向けただけだった。驚く様子もない。

「遠足先で勝手にどこかへ行っちゃったのよ」まるで他人事のような口調だった。「その後、俊太が足をひねっちゃってね。私は手当をするのに忙しかったから、あなたの息子がどこへ行ったかなんて知らないわ。

そんなに心配なら、私に土下座でもしてみたら?機嫌が良くなったら、どの山に置いてきたか教えてあげるよ」

その勝ち誇った目を見た瞬間、千歌はすべてを悟った。奈帆は最初から自分を辱めるつもりだったのだ。

だが今はそんなことを考えている場合ではない。目の見えない五歳の息子が、たった一人で山の中に置き去りにされている。そう思っただけで息が詰まりそうになる。

もやはプライドも体面もどうでもよかった。千歌は迷わず床に膝をついた。そして額を床へ打ちつける。

「お願いします……!何でもしますから、真人がどこにいるのか教えてください!」

その必死な姿を見て、奈帆は満足そうに微笑んだ。そしてようやく場所を口にする。

千歌はよろめきながら立ち上がると、そのまま家を飛び出した。通りでタクシーを捕まえ、教えられた場所へ向かう。

到着した頃には、すでに夕暮れが迫っていた。山は草木が生い茂り、視界も悪い。千歌はたった一人で山の中を歩き続けた。

何度も足を取られて転び、そのたびに身体中に激痛が走る。

それでも立ち止まることはできない。痛みをこらえながら、必死に真人の名前を呼び続けた。

空は少しずつ暗さを増し、胸の中の恐怖も絶望も大きくなっていく。

体力の限界が近づいていた、その時。かすかな泣き声が風に乗って聞こえてきた。

千歌は息を呑み、その声を追う。そしてようやく――真人を見つけた。

だが、その光景に心臓が止まりそうになった。

真人は崖の縁に座り込んでいる。ほんの数歩先は切り立った谷。落ちれば助からない高さだ。

全身の神経が凍りつく。千歌は息を殺しながら慎重に近づき、息子を抱き寄せた。安全な場所まで離れた瞬間、全身から力が抜ける。気付けば服は汗でびっしょりだった。

真人は顔を真っ赤にして泣いていた。「うぅ……ママ……ぼく、ママが絶対に来てくれるって信じてた。

もう嫌だよ……もうママと離れたくない……ねえママ……ぼくたち、いつここから逃げられるの?」

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