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第611話

Author: 木憐青
芽衣はまるでご褒美を自慢する子どものようだった。

深雪は冷ややかに鼻で笑った。

「そう?じゃ、その指輪は大事に守ることね。くれぐれも、なくしたりしないように」

そう言い終えるや否や、深雪は手を差し伸べ、露骨に退席を促した。

芽衣は顔を青くしながらも、言い返す言葉が見つからず、怒りを押し殺したまま立ち去るしかなかった。

「深雪......許さないわよ!」

芽衣が去ってほどなく、深雪も荷物をまとめて松原商事を後にした。

延浩の車はすでに近くで待っており、二人は合流すると、そのまま喫茶店へと向かった。

その喫茶店は、落ち着いた趣のある場所だった。

延浩と深雪は個室に入り、ある大切な人を待っていた。

しばらくして、白髪の目立つ老紳士が、店員に案内されて入ってきた。

松原商事の古参取締役、藤田嘉男である。

延浩は立ち上がり、丁寧にお礼をした。

「江口延浩と申します。かねてよりお名前は伺っておりました」

嘉男は鋭い視線で目の前の若者を見据えた。

「わざわざ私をここへ呼んだのは、何の用かな」

延浩は微笑み、席を勧めた。

「どうぞお掛けください。本日は、ぜひご意見を伺
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