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第616話

Author: 木憐青
そのとき、社長室の扉がそっと開き、芽衣が保温容器を手にして入ってきた。

「静雄......スープを作ってきたの。今日は一日中忙しかったでしょう?少し飲んで、体を労って」

芽衣の声は柔らかく、どこか媚びるようだった。

もともと怒りに燃えていた静雄は、芽衣の姿を見て、いっそう苛立ちを募らせた。

叱りつけようとしたその瞬間、芽衣の手に視線が止まった。

指には、照明を受けて眩しく光るダイヤの指輪がはめられていた。

繊細なデザイン、まばゆい輝き。

それは間違いなく、深雪に贈るはずだった指輪だった。

静雄の怒りは一瞬で凍りつき、代わりに湧き上がったのは、衝撃と疑念、そして信じがたいという思いだった。

彼は突然、芽衣の手首を強く掴んだ。

声は氷のように冷たい。

「......この指輪、どこから手に入れた?」

思いがけない動きに芽衣は驚き、保温容器を落としそうになった。

顔を上げると、そこには険しく沈んだ静雄の表情。

一瞬、胸がざわついたが、すぐにそれは期待へと変わった。

彼女は静雄がついに自分に気づき、サプライズを用意してくれたのだと思い込んだのだ。

芽衣の頬に、恥じ
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