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第1148話

Author: レイシ大好き
会場は一瞬、息を呑むように静まり返った。

美月の姿が完全に視界から消えたその瞬間、ようやくざわめきが広がる。

「まさか、あの二川会長って頭がそんなに悪いとはな」

「ほんとそれ。あんな賢くて聡明な娘を放って、よりによってあの病弱な子を持ち上げるなんて」

「紗雪みたいな頭脳があれば、うちの家族は何代も安泰だよ」

「でもさ、宝を持ってても価値が分からない人間もいるんだよ。まあ、他人の娘だし、仕方ないけど」

株主たちの顔色も次第に険しくなる。

互いに目を合わせ、無言のまま「美月を追及する」意志を共有した。

「本当、見る目がないな」

その囁きを耳にした緒莉の胸には、怒りが込み上げた。

――この老害どもが......何も分かってないくせに!)

紗雪がいなきゃ会社が回らないとでも?

笑わせないで。

彼女は、紗雪がいなくてもこの会社が動き続けることを証明してやるつもりだ。

緒莉は美月の後を追い、会場を後にする。

取り残された客たちは、困惑した表情で顔を見合わせた。

このパーティー、結局なんのためだったんだ?

ただ安東家との協力関係を解消したことを発表しただけ。

では、後継者の発表はどうなる?

あれが本気だったとは思えない。

二川グループほどの大企業、年ごとの利益は莫大だ。

その地位を、感情だけで手放すなんてありえるのか?

母親と喧嘩したくらいで、ここまでやる?

――そう思う者がほとんどだった。

その様子を陰から見ていた加津也は、唇の端をゆるく吊り上げた。

秘書を呼び寄せ、二人で小声のやり取りを交わす。

「今のうちに接触しますか?」

「いや、もう少し様子を見よう。紗雪がどう動くか、それを確かめてからだ」

「承知しました」

秘書が去ったあと、加津也の笑みはさらに深くなる。

まさか紗雪が、あの場で辞職を宣言するとは。

ここまで潔く言い切った以上、後で戻るのは難しい。

何百もの目が見ていたのだから。

彼はポケットから一枚の写真を取り出した。

映っているのは初芽。

その瞳に一瞬、影が落ちる。

――もうすぐだ。

国内の仕事が片付いたら......迎えに行く。

「初芽、ちゃんと待っていろよ」

――

その頃、遠く離れた海外では。

初芽はスタジオで忙しく働いていた。

会社を丸ごと海外に移したものの、未処理の案件が山積
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