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第319話

Author: レイシ大好き
それにあの全身から放たれるオーラ、とても普通の人間とは思えなかった。

そう考えると、辰琉は帰ったあとで徹底的に調べてみることにした。

緒莉も美月に「少し体調が悪い」と伝えた。

美月はその言葉を聞くと、すぐに手を振って「もう帰りなさい」と促し、会場にこれ以上留まらせようとしなかった。

すでに笑い者になってしまった以上、緒莉まで倒れたりしたら目も当てられない。

そうなれば、本当に二川家は鳴り城中の笑いものになってしまう。

緒莉もそのまま会場を後にし、美月の顔の笑みも次第に引きつっていった。

「えっと......お騒がせしてしまって、本当にすみませんでした。後半の流れは予定通り進めますので、お酒や軽食をお楽しみいただけたら嬉しいです」

そう言ってから、美月は裏手の控室に向かい、司会にステージを託した。

彼女は二川家の株価が気になって仕方なかった。

どうか今夜の件で株価に影響が出ませんように。

そう心の中で祈りつつ株式市場を確認すると、二川家の株はやはり2ポイント下落していた。

この光景を目にして、美月は安堵すべきか怒るべきか、なんとも言えない気持ちになった。

とはいえ、この程度の下落ならすぐに取り戻せる範囲だ。

大丈夫だ。

美月は深く息を吸い込み、無理やりにでも平静を装おうとした。

一方で、司会者も目の前の惨状を見て頭を抱えていた。

彼は周囲の視線に晒されながら、どうにか進行を続けるしかなかった。

会場の皆も気持ちがすっかり冷めていたが、最近の二川家の勢いは目を見張るものがある。

今日の一件だけで関係を悪くするのは得策ではないと、誰もが分かっていた。

人は誰しも利己的だ。

ゴシップはほどほどにして、利益の方が大事だ。

後半のパーティーは気まずい空気が漂っていたが、幸いにも大きなトラブルも起こらず、どうにか最後まで開催された。

この出来事以降、紗雪と辰琉のことを軽々しく話題にする者はいなくなった。

彼らが決して混じり合えない存在であることは明白で、誰かが2人を並べようとするたびに、「紗雪の見る目はそんなに悪くない」と冗談が飛ぶようになった。

パーティーのその後の出来事について、紗雪は詳しく知ろうとしなかった。

彼女にとっては、もう知る必要もないことだった。

自分の人生さえしっかり歩んでいればそれでいい。

これだけのこと
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