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第383話

Penulis: レイシ大好き
紗雪はまだ何も言えないうちに、「プープー」という通話終了の音を聞いた。

これでもう確信した。

緒莉は、わざとだったのだ。

彼女は、自分が美月を見舞いに行くことを、最初から拒んでいるのだ。

その裏で何を考えているのか、紗雪には手に取るように分かっていた。

美月がこんなことになって、自分が会社でじっとしていられるわけがない。

そんなの、絶対にあり得なかった。

ほかのことはさておき、美月が入院したのが自分のせいじゃないかとさえ思えてきた。

それなのに、こんなふうに一人でじっとしていられるなんて、到底できない。

他人がどう思おうと関係ない。

自分自身、そうしたままじゃ許せなかった。

美月は、彼女にとっては今でもとても大切な存在だった。

たとえ口論になったからといって、それを理由に彼女を見捨てるなんて、あり得ない。

そう思えば思うほど、紗雪の胸は締めつけられるように痛んだ。

もし最初から、あんな口論さえなければ......

こんな事態には、ならなかったかもしれないのに。

紗雪は目を伏せ、その手をぎゅっと握りしめた。

いま自分がすべきことはただ一つ。

美月を見つけることだ。

それ以外は、何の意味も持たない。

今は、他の誰がどうだとか、どんな話が進んでいるかなんて関係ない。

一番大事なのは、美月の体のこと。

紗雪は唇をきゅっと引き結び、心の中で「どうか無事でいて」と祈った。

そうでなければ、自分のこの罪悪感は消えない。

少し目が潤みかけた紗雪は、会社へ向かおうとした。

状況を確認するために、秘書にもう一度話を聞かなければならない。

ただ黙って待っているなんて、自分らしくないし、

なにより、事の成り行きをただ見届けるだけなんて、自分に許せるはずがなかった。

そのとき、日向が現れた。ちょうど紗雪が会社に入ろうとしているときだった。

「紗雪!」

その声に足を止め、紗雪が振り向くと、

明るい色の髪を揺らして、爽やかな笑みを浮かべた日向が駆け寄ってきた。

「なんでここに?」

思わず、彼女は声を上げた。

日向は一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに笑顔に戻った。

「さっき君に電話したろ?ちょっと心配になってさ」

紗雪はその電話のことを思い出し、

日向が細かいところまで気を配ってくれていたことに少し感心した。

「大したこ
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